忘却の魔法

平塚冴子

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『加藤 星斗』と『近藤 陸』

第8話

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「あくまで、僕個人の見解です。
…『近藤 陸』いや『加藤 星斗』は仁科 加奈子を操れる位置に存在しているのではないかと。」
「どうやって?あの女を手玉に取るんだよ!まだ10代の少年だぞ!」
「そこはまだ、わかりませんが。
あくまで、僕の見解ですし。」
「にしても…『加藤 星斗』だった時の記憶はほとんど無いんだぜ。
それなのに、そんなこと…。」

「梶?君は人間は平等だと本気で思ってるかい?」
「へっ?何だよ唐突に。
そりゃ産まれたての赤ちゃんは皆んな平等だろう。」
「そんな訳ないじゃ無いですか!
いいですか、産まれたての赤ちゃんでも、既に親の地位は様々だし、障害を持って産まれる赤ちゃんもいます。
そして、すぐに亡くなってしまう赤ちゃんも。
つまり、平等では無いんですよ。
運が良い、悪い。個性がある、無い。
様々な落差があって然るべきなんです。」
「あ、まぁ確かにそうか。
けど…それが奴と何の関係が…?」
「彼は…生まれながらにして『加藤 星斗』であるという事です。
それ以下でもそれ以上でも無く。」

「えーと、ちょっと待て。
混乱して来た。
すまんが、俺のように一般人並みの脳にも理解できる説明をしてくれないかな?」
俺は頭を抱えて、金井に頼んだ。

「簡単な事です。
どんなに『加藤 星斗』の記憶を何度消したとしても、その身体がある限り…『近藤 陸』は『加藤 星斗』なんですよ。
本質は何1つ変わっちゃいない。」
「それってのは…『忘却魔法』の欠陥って事か?」
「そこまでは断定出来ません。
しかし…『忘却魔法』の通用しない規格外の人間も存在するという事ですよ。」
「かああ~~。」

思わず、口をあんぐりと開けてしまった。
確かに凄い見解だ…内容もさる事ながら、この金井の洞察力と言ったら…同じ人間には思えない。
…いや…金井だから『加藤 星斗』がわかるのか?
次元が違う…正にその通りだ。
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