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『加藤 星斗』と『近藤 陸』
第1話
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8月の猛暑の中、俺は金井に連れられて鈴と巨大ショッピングモールに来ていた。
「ンなの、俺のTシャツに短パンとかでいいんじゃねーの?」
俺は明からさまに、不機嫌な物言いをした。
呆れた顔で前を歩いていた金井が振り返った。
「何を言ってるんですか?
鈴だって女の子です。
ちゃんと夏仕様の洋服を用意しないと。
いつ迄も、ウチのスタッフのお下がりばかりじゃ可哀想でしょう。」
…確かに、ワンサイズ大きな、ひと昔前に流行ったノースリーブのワンピースを着て歩く鈴は、大きな子供だ。
結局、相楽教授が居なくなって1ヶ月以上経ってしまい、数少ない鈴の洋服も新たに購入する為に金井とショッピングに来たのだ。
「俺、いるかー?」
そもそも、いらねーんじやないか?
女の買い物なんてウザくて今まで、付き合うのを避けて来たってのに。
「梶はボディガードして下さい。
僕と鈴はデートしますんで。」
「でえとぉ…3人デート…。」
鈴はショッピングモールを見回しながら目をグルグル回していた。
「はあ。」
ボディガードね。
確かに、気を付けないと…『加藤 星斗』いや…『近藤 陸』が何処からか鈴を狙ってるかもしれない。
北海道から帰宅した後、俺のマンションの電話に非表示の無言電話が何軒か入っていたし、尾行されてる気配を感じる日もあった。
神経が過敏になってるだけと言えばそれまでなんだが…。
仁科 加奈子の目的は『18番』と俺の監視だろうけど…『近藤 陸』の目的は鈴の方だ。
鈴を女として見てるならまだ可愛げあるが…アレは違う。
獲物を狙うハンターの眼だ。
精神鑑定医の美山先生は再犯の恐れが高いと言った。
しかも環境でそうなった物とは思えないとも…。
だとしたら記憶を幾ら消したとしても、彼の中には『加藤 星斗』が今も息づいてるかもしれない…。
「ンなの、俺のTシャツに短パンとかでいいんじゃねーの?」
俺は明からさまに、不機嫌な物言いをした。
呆れた顔で前を歩いていた金井が振り返った。
「何を言ってるんですか?
鈴だって女の子です。
ちゃんと夏仕様の洋服を用意しないと。
いつ迄も、ウチのスタッフのお下がりばかりじゃ可哀想でしょう。」
…確かに、ワンサイズ大きな、ひと昔前に流行ったノースリーブのワンピースを着て歩く鈴は、大きな子供だ。
結局、相楽教授が居なくなって1ヶ月以上経ってしまい、数少ない鈴の洋服も新たに購入する為に金井とショッピングに来たのだ。
「俺、いるかー?」
そもそも、いらねーんじやないか?
女の買い物なんてウザくて今まで、付き合うのを避けて来たってのに。
「梶はボディガードして下さい。
僕と鈴はデートしますんで。」
「でえとぉ…3人デート…。」
鈴はショッピングモールを見回しながら目をグルグル回していた。
「はあ。」
ボディガードね。
確かに、気を付けないと…『加藤 星斗』いや…『近藤 陸』が何処からか鈴を狙ってるかもしれない。
北海道から帰宅した後、俺のマンションの電話に非表示の無言電話が何軒か入っていたし、尾行されてる気配を感じる日もあった。
神経が過敏になってるだけと言えばそれまでなんだが…。
仁科 加奈子の目的は『18番』と俺の監視だろうけど…『近藤 陸』の目的は鈴の方だ。
鈴を女として見てるならまだ可愛げあるが…アレは違う。
獲物を狙うハンターの眼だ。
精神鑑定医の美山先生は再犯の恐れが高いと言った。
しかも環境でそうなった物とは思えないとも…。
だとしたら記憶を幾ら消したとしても、彼の中には『加藤 星斗』が今も息づいてるかもしれない…。
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