忘却の魔法

平塚冴子

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少年達の軌跡

第11話

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「きっかけみたいな物も無かったんですか?
その…最初の動物解体とかの…?」
俺は美山先生に疑問をぶつけてみた。
「普通の子供と同じですよ。
蟻を自分が踏んで死ぬ。
けど…誰もそれを咎めない。
虫を殺しても同じ。
誰も咎めない。
なのに猫や犬になれば咎める。
彼は矛盾を常に感じていたんです。
人間世界の矛盾や歪みをね。」
「つまり…蟻を踏み潰した事の延長上に、人体解体実験が?
逆にバカだろう!ンなの!」
「思考を突き詰めると行き着く疑問ですよ。
通常なら途中で人間的な倫理に、かき消されてしまう物ですがね。
ある意味、それ程純粋という事なのかもしれませんが。
彼にとって人体解剖は自分の疑問点を解消する為の行為です。
彼は身体の何処に心があるのか調べる為にやったと。
その結果が、単なる殺人になったと…そう供述しました。
眠る、食べると同じように知りたいという欲望に忠実だっただけだとね。」

蟻と昆虫と犬、猫と人間が同じ生き物…。
確かに理屈はそうだけどよ!
俺の頭は混乱しまくっていた。

「あの…もし、僕が『加藤 星斗』だったらって仮定して考えてみてのですが…。」
「はああ?金井!何言い出してんだ?」
「仮定ですよ…。
自分を止めるには…自分が死ぬ事しかあり得ない。
それが自然で大きな生命の流れに乗る事。
自分が死んでもいずれまた、別の事件は起こり、消え…永遠に…メビウスの輪のごとく。
それそこが…彼の正しいと思う世界の様に思えてならないのです。」
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