忘却の魔法

平塚冴子

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少年達の軌跡

第10話

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「確かに…そう受け止めればそうかもしれませんが、むしろ僕には、単なる自己愛障害者または、拗らせナルシストにしか思えない。
他を認めず、理解もしないで己の存在が上の者だと思い込む。
思考的な理解はしても同感や共感はしません。
駄々っ子の延長線のようですよ。」
金井が珍しく、口調を荒げて反論した。
「…さすがスクールカウンセラー会社の副社長さんだ。
心理カウンセラーとしての腕が良さそうだ。
脱帽致しました。」
美山先生は目を丸くして金井を見た。

犯罪心理学の専門家が脱帽する…金井は本当に凄え奴なんだ。
何で俺と友達なんかやってんだろう?
マジで疑問に思ってしまった。

「で、話しを戻しますと、精神疾患との診断をしてはまずい…そう考えました。
明らかに、彼は精神を病んでいた訳ではなく、思考的な観点から犯罪を犯していたからです。
もし、精神疾患と判断すれば、彼は再び犯罪を必ず犯すと確信しました。」
「再犯の確率は異常に高かったんですね。」

金井と美山先生のやり取りに着いて行けずに、俺はただ2人を交互に見るしか出来なかった。

「私はそう診断を下しました。
怪物ですよ。本物の。」
美山先生の顔が真っ青になった。

「それは…作られた怪物ですか?」
「通常、犯罪異常者は周りの環境によって生み出される…と言うのが定説でした。
しかし…私が見た限りでは、『加藤 星斗』はそれに当てはまらない…該当しないんですよ。
生まれつきの素質…生まれつきのカリスマ性…生まれつきの残虐性…。
そうとしか、僕自身を納得させられませんでした。」
「真実を知るのは、神と本人のみ…という事ですね。」

生まれつきの…怪物…って事なのか?
あの、か細い色白の綺麗な顔をした怪物…。
過去の遺伝子の中に組み込まれた殺戮の記憶…それが『加藤 星斗』を動かしてるのか?
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