忘却の魔法

ナンバーズ

第19話

「梶！あ～ん！」
鈴が食いかけのガトーショコラを俺に向けてきた。
「食いかけかよ！ったく。」
俺は一口かじった。
甘い～！
「美味しい…美味しい…。」
口の周りを泥棒ヒゲのように汚くして、笑う鈴に
こっちも笑顔になった。
「ほら！汚ぇよ！」
俺はウェットテッシュで鈴の口周りをゴシゴシ拭いた。

「こっちも、少し調べてみましたよ。
天外博士が記憶研究の為に脳の発達が著しい、子供に着目してデータ収集に力を入れいたのは、約20年程前からです。
緻密なデータを取るために、幼児研究に長けている者をスタッフとして集めたみたいです。」
「その中に相楽教授が入っていたのか…。
そして、真鍋先生…。」
「おそらく、このデータ収集の中で何らかの条件でピックアップされたのが『ナンバーズ』と推測されますね。」
「条件ね…。天才とか？違うな…。」
「とにかく、この中に『18番』がいるかもしれませんね。
画像検索をかけさせましょう。
何人かは情報を得られるでしょうし、研究内容も被験者の口から聞けますからね。」
「金井～～！本当にお前がいないとダメだよ俺は～！」
「あ、そういうノリは却下で。
マニアですが、女性オンリーなので。」
「ノリ悪いな！ったく！」
マニア認めるなよ！そのイケメン面で！

「梶…お風呂入った…。」

隣で俺の匂いをクンクン嗅ぎながら鈴が呟いた。
「ぶっ！なっ！何言って…！」
「あ～なるほど、それで。
ゆっくりしてくれば良かったのに。」
「にこやかに言うな！ヤッてねーよ！
未遂だからな！未遂！」
「いやいや、30歳の男ですから別に非難なんてしませんよ。
むしろ健全な精神状態です。」
「だから！違うってんだよ！」
どんなに否定しても、金井はニヤニヤ笑い続けた。
あ～ヤッときゃ良かったかな…。
俺は少しだけ後悔した。