忘却の魔法

平塚冴子

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仁科 加奈子と少年達

第19話

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「今日のところは帰ります。
色々な事が多過ぎて、持ち帰って整理します。
…この事を記事にしても…表沙汰にならずに潰されるのは良くわかりましたが…。
天外博士の件もあるので、引き続き調査はするつもりです。
…また、お話をお聞きするかもしれませんが、伺っても宜しいでしょうか?」

「ええ。直通の電話番号に連絡して頂ければ。
受け付けでは通してくれないので。」
「わかりました。
ありがとうございます。
それでは、失礼いたします。」
俺は一礼して鈴の手を引いた。
「御機嫌よう。」
「さようなら~。…梶さん…鈴さん。」

ガチャ。
ドアの向こうで、またスタッフにアイマスクを装着され、受け付けまで歩いた。


受け付けで、アイマスクを取り、そのまま外へ出た。
もう夕暮れに空が赤く染まっていた。
急いで、鈴と俺は金井の待つ駐車場へ走った。

車内から手を振る金井が見えた。
「金井!待たせたな!」
「遅かったですね。
心配しました。
車内も暑いので、時折日陰で休みましたよ。」
「悪ぃ。後でゆっくり話すよ。
長くなるし。」
「今日はもう遅いので、少し離れた場所ですが旅館に予約を入れておきました。
そこで一泊しましょう。」
「いつも悪いな。」
「ええ。いつもですから。」
金井にチクリと言われながら、俺と鈴は車内に乗り込んだ。
後部座席に乗った鈴がしきりに窓の外を見た。
「どうした?鈴…何か…!
金井!すぐ出せ!」
「えっ…今出しますけど。
何です?」
「いいから早く!」

俺は背筋が凍るかと思った。
施設の三階の窓から…彼は見ていた。
近藤 陸は笑みを浮かべてこちらをジッと見つめていたのだ。

金井が車を走らせながら、真っ青な俺を気遣った。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。鈴…お前…。」
後ろを振り向いて鈴の様子を見た。

「…また、会おうって…。陸が…。」
「何だよ!あいつ記憶あるんじゃないか?
くそ気持ち悪い!」
「記憶は…ない…記憶は…ね。すぅ。」
鈴は意味深な言葉を呟くと、気を失ったかのようにいきなり、眠りに入って寝息を立てた。
「…面白人間かよ、お前は!」
「かなり、脳を活動させたんでしょう。
鈴は宿でゆっくり休ませてあげましょう。
その間に、詳しい話しを聞かせて下さい。」
金井に言われ、ため息をつきながら前に向き直った。

近藤 陸は…鈴に興味を示していた。
あれは、恋愛対象としての興味か…それとも…。
これから、唯一残された情報、『18番』を調べよう。
このままじゃ不完全燃焼だ!
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