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保健室同盟(仮)と前期図書委員

第13話

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「動物図鑑なんて、何かの研究?
 小学生とかならわかるけど、今興味があるなんて。」
「あ、いや…ペット飼った事無いんで、知識に疎いから…。」

 本棚の間をゆっくり歩きながら、小声で早川さんが問いかけてきた。
 神谷先輩の作戦のおかげで、すんなり話しが出来る。

「ふぅん。
 じゃあ、小動物系がいいのかしら?
 ペットに出来そうな大きさの動物系の。」
「あ、はい。
 お願いします。
 その…犬とか猫とかペットにどうやったら、懐かれるのか知りたくって。」
「動物好きなのね。
 ペットは実際には飼ってないの?」
「うちはアパートなんで。
 でも!夢はあります。
 白いモフモフしたのをいつかは飼ってみたいんです。」
「白い…モフモフ…?」

 一瞬、早川さんの表情が硬くなったのを僕は横目で確認した。
 疑いの眼差しを僕に向けてる。

「その…白い生き物って、縁起がいいんですよね。
 大昔は神様の使いとされていて。
 モフモフは…その、抱っこして…癒されたいって…なんか幸せな気分になりそうでしょう?
 って…違うのかな…。」

 僕はため息混じりに、早川さんの表情を見た。
 早川さんは何かを思い出してるかのように目蓋を浅く閉じた。

「幸せ…そうね、きっと動物の方も幸せなんじゃないかしら。
 頼れる人の胸に抱かれるのは、安心感と幸福感の両方を得られるもの。
 …一度でも味わっちゃうと…それを追い求めてしまうんだわ…。」
「早川…さん…?」

 今のは…ヒント…?
 意味深な言葉だ…。
 一度でも…味わう…誰が、誰にそんな気持ちを…?
 
「あ、これはどうかしら?
 フォトブックと色んなペットの説明が一緒になってる感じ。
 文庫本サイズだから、電車内でも読めそうよ。」
「本当だ。
 写真もすごく可愛い。
 実際にペットとして飼われてるんだね。
 これ、借ります。
 また、1週間後に返却ですけど。」
「ふふふ。
 1週間と言わず、本を読むならいつでもどうぞ。
 本達も、読まれなきゃ可哀想。
 孤独ほど、辛いものはないと思うから…。
 …有村君…保っちゃんは、孤独なのかしら?」
「へ?…宮地が…いや、宮地君が孤独…?」

 早川さんにはそう、見えてるって事だよな。
 けど…僕が見る限りでは、田中や安村もいるし、クラスの女子とも普通に話せてる。
 孤独というには程遠い気がするんだけど…。

「ごめんなさい、変な事言って。
 でも…保っちゃんは弱音吐いた事ないから。
 逆に、本当は誰かに弱音を吐きたいんじゃないかなって、たまに思うの。
 私が…男だったら…男同士だったらって…少しだけ悔しい気がして。」
「早川さん…優しいんだね。
 幼馴染だからなのかな…それとも…。」
「そんなんじゃないわ。
 恩返ししたいと思うって当たり前の事じゃない?
 私は彼の優しさに何度となく助けられて来たから。
 そして、今の彼が本当の彼の姿じゃないって知ってるから…どうにかして助けたいの。」

 早川さんはそう言って、右のお下げ髪を摘んでユラユラと揺らした。

「ヒーロー…なんだね。
 早川さんにとっての。」
「そんな、カッコいいものじゃないけど。
 けど…、私が助けて欲しい時にはいつも、手を差し出してくれる。
 今だって…。」
「え?今…?」
「あ、ううん。何でもないわ。
 じゃあ、この本貸し出しするわね。」

 あからさまに、お茶を濁す言い方をして、早川さんは本を持って受付に向かった。
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