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ハードで楽しい深夜のお仕事

第24話

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「有村君、おにぎり美味そうだよ。
 食べよう。」
「あ、はい。
 いただきます。」
「ちゃちゃっと食べて仕事再開するぞ!
 もう、ヤケクソだ!」

 ヤケクソって…そんなにお風呂みんなで入るの楽しみにしてたのかなぁ。
 目的は何だよ…もう。

 僕はちょっと顔を赤らめながら、奈落のおにぎりを口に含んだ。

「こ、これ!?昆布だし?」
「お?当ったりぃ~!
 それは昆布だしの粉末を少しふりかけて風味付けしてんの。
 それだけでも、いつもより高級な味わいだろ。
 牛肉の缶詰も残ってたから、それを中に入れてる。
 肉の旨味もご飯に染みてるたずだ。」
 「お!こっちは蟹ツナマヨ!
 って、お歳暮の残り缶詰ばっかだなぁ。」
「いいだろ!早くて美味いがモットーの奈落亭だ!」
「全然豪華だよ!凄く美味しい!」
「だろ。夜食の分も作ってあるからな。」

 得意げに満面の笑みを浮かべる奈落を、更に褒めてご機嫌にさせてあげた。
 すぐにお風呂の件は忘れてくれたみたいだ。

「あ、言い忘れてた。
 後で、ジキルとハイドが来る。
 照明の打ち合わせもあるし。
 半年後にはここに事務所を移すからその件でも話さないと。」
「えっ!?半年後!?
 槇さんここ移動するんですか?」

 おにぎりを早々に食べ終わって一息ついた時、槇さんがおもむろに口を開いた。

「いやいや、違うよ。
 イベント企画制作会社の事務所とウチの事務所がここを半々で使うんだ。
 向こうがこっちに来るんだよ。
 こっちの方が移動手段が多くて便利だからね。
 家賃も半分になるし、広すぎると思わなかった?ここ。」
「確かに…従業員数っいっても片手で収まるのに、このタワーマンションの最上階の広さは広いですね。」
「そう。
 ゆくゆくはイベント企画制作会社の中に、芸能部署を置く計画なんでね。
 ここを共同で使うのは勝手がいいんだ。
 今やってる洋服の輸入販売の担当は来年度から移動が決まってるんだ。
  だから、今から芸能部署設立に向けての下準備も必要なんだ。」
「槇ちゃんはいいなぁ。
 俺なんて上からの命令でしかまだ動けない下っ端だぜ。
 上層部は新規事業とか人事とかに口出し出来るからいいよな。」
「奈落。
 その分責任が増すって事だよ。
 お前はもう少し勉強しないと、爽だって推薦したくても出来ないぞ。」
「推薦…必要なんですから?
 親族内で!?」
「そう。そこはシビアにね。
 実力ないものが経営権任されても困るし、先が見通し立たないのは困るだろ。
 ある程度の信頼性と保証は必要なんだ。
 逆に言えば信頼されてる分、責任は大きくなる。
 ジキルとハイドにしても2人一緒が条件で今回上層部に上がってる。
 個々ではまだ降格もあり得るんで、大変なんだ。
 実績をここら辺で上げておかないとね。」
「個々でってなぁ、アイツらは2人で1つ完全なる一卵性変態双子兄弟。
 この先も2人一緒だろ。」
「奈落~、人生何があるかわからないだろう。
 色んな事を多方面に想定して行かないと。
 にしても、変態は言い過ぎだ。」
「いや…いくら話しても話しが噛み合わないし、盛り上がらない。
 アイツらの2人の空間は変態だよ。
 有村も見ればわかるって。
 双子だからって、ベタベタし過ぎ!
 ありえねーキモい~!」
「あ、いや…神楽さんと奈落の仲の悪さも、普通じゃなかったと思うけど…。」

 つまりは奈落達とは真逆の関係なのか。
 さて、どんな双子なんだろう。
 冷酷執事みたいな風貌のジキルさんとハイドさん冷酷なのに仲良し?…なんだかワクワクした来た!
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