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憎しみのパズルピース

第7話

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 夜遅くまで音声の転送やら考えをまとめてたので、今朝は寝起きがいつもより辛かった。
 筋肉痛は以前ほど辛くないものの、頭を使う作業は見かけよりダメージが強い。
 
…そういえば、昨日の更衣室の録音聴くの忘れた。
 後で確認する必要ありそうだなぁ。

 食欲もさほど出ないので、牛乳だけゴクゴクと一気飲みをして、弁当を鞄に詰め込んだ。

 今日は図書室は神谷先輩が見てくれるから、宮地と早川さんの登校記録だけでいいかな。

「アレ?天気…曇ってるなぁ。」

 玄関から外に出てみると、いつもより辺りが薄暗かった。
 雨…降りそうだな。

 ん…こういう時、タクシー使っても多分有意義判定には引っかからないんだろうけど…それに慣れて、1年後辛くなるのも嫌だなぁ。

 僕はアパートの中に再び入って雨合羽と折りたたみ傘をカバンに詰めた。

 そういえば…梅雨の時期はこれが当たり前になるんだなぁ。
 ICレコーダーが濡れないようにビニール製の入れ物に入れるか。

 
 曇天の空の下を自転車で走りながら、ふと、いつもより足が軽い事に気が付いた。
 アシスト自転車だから、そもそも軽いんだけど…それ以上に軽い。

 筋肉…付いて来たのかな。
 こんなに、急に変化を感じるんだ…。
 そういえば、ブカブカだったズボンの太もも部分が、少しマシになった気がする。

 効果…出て来たかな。
 土曜日までに体力つけなきゃ。
 徹夜作業で槇さんに迷惑は掛けたくない。
 そうだ…コンビニでコーヒーでも買ってみようかな。
 滅多に飲まないけど、土曜日に必要になるかも知れないし。
 練習がてら買っていこう。
 ま…もちろん砂糖入りだけどね。
 僕はコンビニに立ち寄って、缶コーヒーを買って学校へ急いだ。

 
 学校へ着くと毎度おなじみのチェーン二重掛けをして、保健室を目指した。
 図書室観察に神谷先輩が行ってるって事は、こっちに顔を出してくれるだろう。

 僕は急ぐ事なく下駄箱から保健室まで歩いた。

 すると…耳に微かに音楽が聞こえた。
 聴き覚えのある…ピアノ演奏…。
 何だっけ…クラッシックは得意じゃないんだけど…えーとえーと。
 透き通った旋律…繊細でいて激しい…。

 えっと…。

 はっ!あの美少年!?

 誰も近くに居ないのを確認して、僕は奈落に電話をした。

ピッ!

「奈落!今、音楽室に…あの不自然な美少年が…!」

『今、向かってる!』
「…これ、なんて曲?」
『はああ?
 『ラ・カンパネラ』だ!
 フランツ・リストの曲!
 …!くそっ!
 逃げられた!誰もいねぇ!』

 あ、本当だ音が消えた…。
 僕の…せいだよね…。

「ごめん…思い出せなくて…気になって…。」
『だあああもう!仕方ねー。
 次は取っ捕まえて、正体暴いてやる!』
「…でも、芸術センス無くても、クラッシックは得意なんだね。」
『あ~~ちゃうちゃう!
 そこは、常識って事で丸暗記してるだけ。
 どこが良くって、何がいいかサッパリ分からん。』
「あはは…常識…無かった僕…。
 じゃあ、僕は保健室に行くね。」

 ちょっとだけ、芸術面で奈落に負けた感を感じながら、電話を切った。

 保健室の前まで行くと、保健室の電気が付いているのが見えた。

 えっ…まさか今度は、あのスポーツマンタイプの謎の上級生?
 どうしよう…いきなり入っても、この前みたいにごまかされちゃうかな…そっと…覗いてみようかな…。
 さっき音楽室の美少年には逃げられたばかりだし、ここは慎重に…慎重に…。

 僕は足音を極力立てないようにして、ドアの隙間から中を覗いて見た。

 今朝は曇天のせいか、保健室には煌々と明かりが点いていて、隙間から覗くと端から端まで見渡せた。

「あ…。」
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