103 / 280
スパイ活動と保健室同盟(仮)
第5話
しおりを挟む
今日は図書室閉館で、これ以上の情報は得られないと思い、加納先生に別れを告げて保健室から出た。
僕は駐輪場で、カゴのグチャグチャになった自転車に鍵を刺した。
下手に買い換えたり、カゴを直してもきっとすぐにやられる。
カゴを鞄が入る程度だけ広げて、曲がったままにする事にした。
今のところ、彼等にとってはこんなくだらない事が勲章の一部、戦歴の跡になる。
たとえ犯罪の証拠になり得るとしても。
優越感を優先してる彼等には、冷静に状況を分析するなんて事しないんだろう。
「ハンドルも少しだけ曲がってるけど、スピード出さなきゃ運転に支障はないだろう。」
僕はゆっくりと自転車を駐輪場の外へ出して、自分の自転車を見つめた。
大変だったな…ご苦労様。
自転車にそう、心で呟いてから乗って帰宅した。
時折、運転しにくさを感じたけど、逆にコイツも頑張ってくれてると思うと、自転車に更なる愛着が湧いてきた。
赤い顔して頑張ってるみたいだ。
全然ボコボコでカッコ良くないけど…僕にピッタリ。
根性あるぞ!
意外にも運転時にハンドル操作にテクニックを使ったりして、いつもは使わない筋肉を使うようで帰宅した頃には汗だくになっていた。
「ふう。
これでランニングもしたら、いい筋肉がつくかな?」
僕は自転車を駐輪場へと置いた。
今日は母さんが休みで家にいる。
奈落とのランニングは玄関前で待ち合わせなきゃならない。
僕はアパートに入る前に、奈落にメッセージを送信した。
『これから、ランニングする。
支度したらすぐに出るから、玄関前で待っていて。
走る前に聞きたい事もあるし。』
送信。
ピロリロリーン。
速攻で返って来た。
『OK。
こっちは準備万端!
ついでにアップしながらそっちに向かう。』
僕は母さんの待つアパートのドアを急いで開けた。
「ただいま。」
「あら、お帰りなさい。
丁度いいところに返って来てくれたわ。」
目の前の母さんは、いつも着ているシャツにジーパンスタイルではなく、紺色のシンプルなスーツを着ていた。
「明日、仕事の面接でしょう?
せっかくの2日連休はこの際面接対策にと思って、ふんぱつしちゃった。
デパートでスーツを久しぶりに買ったの…どう?おかしくない?」
「おかしくないよ!
清楚で上品な感じだ。
明日、頑張ってね。」
「ありがとう。
頑張って行ってくるわね。」
母さんの気合が、僕にも伝わって来た。
活気ある家…なんて明るくて、素敵なんだ。
僕にはちゃんと居場所があるんだ。
僕も母さんに負けてられないぞ!
「母さん!今からちょっと、走ってくるね。
体力つけなきゃね。」
僕はバタバタと大急ぎで、ランニングの準備をした。
ドタバタしながらも、鞄を机の上に置き、ジャージに着替えて玄関を飛び出した。
ガチャ。
「よう!行くか?」
ドアを開けた途端、上下黒のジャージで髪を束ねて準備運動する奈落が目に飛び込んで来た。
「ごめん、少し待たせたかな?」
「いや、全然大丈夫。」
「あの、僕が朝と放課後保健室に行ったの知ってるよね。」
「ん?ああ、遠目で見てた。」
「じゃあ、中にいた生徒を見た?
覚えてる?」
「んん?
上級生っぽいのと同級生っぽいヤツだろ。」
「…おかしくなかった?」
「何で?
何かされたのか?
普通の生徒じゃないのか?」
「あ、いや…何と言うか…。」
「何だよ!ハッキリ言え!ハッキリ!」
奈落はちょっとイライラしながら言った。
「えっと、ハッキリ言えるほど確証が無いんだけど…。
あの2人、足音を一切立てないで歩くんだ。」
「…!?」
僕のセリフを聞いた途端、奈落が見た事がない困惑した表情を見せた。
そして、そのまま黙り込んでしまった。
「あの、変な事言ったならごめん!」
「いや…。
情報調査員かとも思ったけど、樹のところの調査員が来る話しは聞いていない。
他の…被験者の依頼…?
まさか…な。
こんな、被験者同士が近いなんて…。
あり得ない…。
しかも2人とも見た事ないヤツだった。
ウチの関係者じゃないのか…?」
奈落はブツブツとつぶやきながら、目を細めた。
僕は駐輪場で、カゴのグチャグチャになった自転車に鍵を刺した。
下手に買い換えたり、カゴを直してもきっとすぐにやられる。
カゴを鞄が入る程度だけ広げて、曲がったままにする事にした。
今のところ、彼等にとってはこんなくだらない事が勲章の一部、戦歴の跡になる。
たとえ犯罪の証拠になり得るとしても。
優越感を優先してる彼等には、冷静に状況を分析するなんて事しないんだろう。
「ハンドルも少しだけ曲がってるけど、スピード出さなきゃ運転に支障はないだろう。」
僕はゆっくりと自転車を駐輪場の外へ出して、自分の自転車を見つめた。
大変だったな…ご苦労様。
自転車にそう、心で呟いてから乗って帰宅した。
時折、運転しにくさを感じたけど、逆にコイツも頑張ってくれてると思うと、自転車に更なる愛着が湧いてきた。
赤い顔して頑張ってるみたいだ。
全然ボコボコでカッコ良くないけど…僕にピッタリ。
根性あるぞ!
意外にも運転時にハンドル操作にテクニックを使ったりして、いつもは使わない筋肉を使うようで帰宅した頃には汗だくになっていた。
「ふう。
これでランニングもしたら、いい筋肉がつくかな?」
僕は自転車を駐輪場へと置いた。
今日は母さんが休みで家にいる。
奈落とのランニングは玄関前で待ち合わせなきゃならない。
僕はアパートに入る前に、奈落にメッセージを送信した。
『これから、ランニングする。
支度したらすぐに出るから、玄関前で待っていて。
走る前に聞きたい事もあるし。』
送信。
ピロリロリーン。
速攻で返って来た。
『OK。
こっちは準備万端!
ついでにアップしながらそっちに向かう。』
僕は母さんの待つアパートのドアを急いで開けた。
「ただいま。」
「あら、お帰りなさい。
丁度いいところに返って来てくれたわ。」
目の前の母さんは、いつも着ているシャツにジーパンスタイルではなく、紺色のシンプルなスーツを着ていた。
「明日、仕事の面接でしょう?
せっかくの2日連休はこの際面接対策にと思って、ふんぱつしちゃった。
デパートでスーツを久しぶりに買ったの…どう?おかしくない?」
「おかしくないよ!
清楚で上品な感じだ。
明日、頑張ってね。」
「ありがとう。
頑張って行ってくるわね。」
母さんの気合が、僕にも伝わって来た。
活気ある家…なんて明るくて、素敵なんだ。
僕にはちゃんと居場所があるんだ。
僕も母さんに負けてられないぞ!
「母さん!今からちょっと、走ってくるね。
体力つけなきゃね。」
僕はバタバタと大急ぎで、ランニングの準備をした。
ドタバタしながらも、鞄を机の上に置き、ジャージに着替えて玄関を飛び出した。
ガチャ。
「よう!行くか?」
ドアを開けた途端、上下黒のジャージで髪を束ねて準備運動する奈落が目に飛び込んで来た。
「ごめん、少し待たせたかな?」
「いや、全然大丈夫。」
「あの、僕が朝と放課後保健室に行ったの知ってるよね。」
「ん?ああ、遠目で見てた。」
「じゃあ、中にいた生徒を見た?
覚えてる?」
「んん?
上級生っぽいのと同級生っぽいヤツだろ。」
「…おかしくなかった?」
「何で?
何かされたのか?
普通の生徒じゃないのか?」
「あ、いや…何と言うか…。」
「何だよ!ハッキリ言え!ハッキリ!」
奈落はちょっとイライラしながら言った。
「えっと、ハッキリ言えるほど確証が無いんだけど…。
あの2人、足音を一切立てないで歩くんだ。」
「…!?」
僕のセリフを聞いた途端、奈落が見た事がない困惑した表情を見せた。
そして、そのまま黙り込んでしまった。
「あの、変な事言ったならごめん!」
「いや…。
情報調査員かとも思ったけど、樹のところの調査員が来る話しは聞いていない。
他の…被験者の依頼…?
まさか…な。
こんな、被験者同士が近いなんて…。
あり得ない…。
しかも2人とも見た事ないヤツだった。
ウチの関係者じゃないのか…?」
奈落はブツブツとつぶやきながら、目を細めた。
0
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】【ノリと勢いのネタシリーズ④】目が覚めたらトイレットペーパーになっていた
ルナ
キャラ文芸
カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ
NGワードと言わないで!~ゼロから始めるゲームせいさく+現実世界は人工知能と共に&肉欲塗れの複合世界に祝福を!~
もるひね
キャラ文芸
人類支配を企むAIが俺のスマホに突如出現!
それだけでも日常は崩壊するというのに、メイド少女や毒舌お姉さんやらと関わりを持ってしまい目まぐるしい毎日だ。
果てには怪しいゲーム製作会社にバイトとして勧誘されてしまう。だが正社員に昇格できるらしいし、社会復帰頑張るか。
ゲームを開発する中で俺は美少女AIに恋を……するわけないだろ、こんなちんちくりんに!
『新しくタイトルを考えました!【ケイオスサーガクロニクル】ってのはどうでしょう!?』
「NG」
『うわあああああん!』
※「小説家になろう」様に投稿したものです。Shirobako的なものを書きたかったんです。
ブラックベリーの霊能学
猫宮乾
キャラ文芸
新南津市には、古くから名門とされる霊能力者の一族がいる。それが、玲瓏院一族で、その次男である大学生の僕(紬)は、「さすがは名だたる天才だ。除霊も完璧」と言われている、というお話。※周囲には天才霊能力者と誤解されている大学生の日常。
本日は性転ナリ。
ある
キャラ文芸
如月瑠衣(きさらぎ るい)は、ごく普通の男子高校生として代わり映えの無いつまらない毎日を送っていた。
しかし、ある日を境に、それが自分に与えられた"嘘で作られた、幸せで平穏な日々"だったのだと思い知らされる事となる。
幼馴染の"高梨莉結(たかなし りゆ)に手を借りつつも、"元に戻る事の出来るその日"まで、女としての生活を送る事となった瑠衣だが、それは想像以上に難しいものだった……。
そして瑠衣自身、そして周りの人々に次々と起こる様々な問題。
瑠衣は、葛藤しながらも自分を信じてそれらに立ち向かっていくのであった。
これは"性転"してしまった瑠衣が、周りの人々との出会いによって"本当の自分"を見つけていくストーリー。
興味を持って頂けたら是非一話だけでも読んで下さい。つまらないと思った方は、良ければその理由などもコメントして頂けたら、出来る限りの改善をしていきたいと思います。
未熟者が書いた素人小説ですが、創造をカタチにしていく勉強の真っ最中なので、是非温かい目で見守ってください。
古い話から常時改稿していますが、途中から読み進めるのが嫌になるような文体になるかもしれません。
それは、この「本日は性転ナリ。」が、携帯小説を始めてから、初めて完結まで続けられた作品なので、未改稿部分はルールや小説執筆の常識等も知らないままに思い付く事を書き殴ったからです。笑
今でも"改稿"と言える程の事は出来ていないかも知れませんが、以前と比べて確実に読み易く直せていると思いますので、是非改稿後の方も読んでいただけると幸いです。
この小説を執筆するにあたって、読者の方々に大変励まされております。この物語が続いているのはその方々が居るからです。
本当にありがとうございます。
[本編完結]彼氏がハーレムで困ってます
はな
BL
佐藤雪には恋人がいる。だが、その恋人はどうやら周りに女の子がたくさんいるハーレム状態らしい…どうにか、自分だけを見てくれるように頑張る雪。
果たして恋人とはどうなるのか?
主人公 佐藤雪…高校2年生
攻め1 西山慎二…高校2年生
攻め2 七瀬亮…高校2年生
攻め3 西山健斗…中学2年生
初めて書いた作品です!誤字脱字も沢山あるので教えてくれると助かります!
紹嘉後宮百花譚 鬼神と天女の花の庭
響 蒼華
キャラ文芸
始まりの皇帝が四人の天仙の助力を得て開いたとされる、その威光は遍く大陸を照らすと言われる紹嘉帝国。
当代の皇帝は血も涙もない、冷酷非情な『鬼神』と畏怖されていた。
ある時、辺境の小国である瑞の王女が後宮に妃嬪として迎えられた。
しかし、麗しき天女と称される王女に突きつけられたのは、寵愛は期待するなという拒絶の言葉。
人々が騒めく中、王女は心の中でこう思っていた――ああ、よかった、と……。
鬼神と恐れられた皇帝と、天女と讃えられた妃嬪が、花の庭で紡ぐ物語。
後宮妃は木犀の下で眠りたい
佐倉海斗
キャラ文芸
玄香月は異母姉、玄翠蘭の死をきっかけに後宮に入ることになった。それは、玄翠蘭の死の真相を探る為ではなく、何者かに狙われている皇帝を守る為の護衛任務だった。ーーそのはずだったのだが、玄香月はなぜか皇帝に溺愛され、愛とはなにかを知ることになる。
誰が玄翠蘭を殺したのか。
なぜ、玄翠蘭は死を選んだのか。
死の真相を暴かれた時、玄香月はなにを選ぶのか。
謎に満ちた後宮は毒の花のように美しく、苛烈な場所だった。そこで玄香月は自分がするべきことを見つけていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる