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悩めるお金の使い方とサポーターとの関係

第4話

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 僕よりも更に小さいメガネの男子は、恐る恐る中に入って席に着いた。

「あの…いつも、ここに居るんですか?」

 彼はメガネを押し上げながら、僕に話しかけて来た。

「はぁ。まあ…います。」
「2年には…いないよね…っと1年生?」
「はい。1年A組です。」
「2年の話し…聞いてるだろ。」
「えっ…自殺未遂の女子の話しですか?」
「そう。その件でクラス中ピリピリしててさ。
 口止めとか、イジメ否定しろとか、首謀者の女子集団が騒いでてさ。
 反省するどころか、むしろ力づくの脅迫が更に加速してるんだ。」
「…?それって女子の話しだよね。…ですよね。」
 
 しまった。先輩だった。

「そうなんだけど…僕はイジメにあった女子の幼馴染みでさ…情報漏えいを疑われてる。
 多分、この分だと僕はもうイジメの対象者にされてる。
 さっきも女子の集団に囲まれて…嫌な写真を撮られたし。」
「そんな…!先輩は何もしてないのに…。」
 
 あ…でも、イジメ自体そんなものなのかも…理由付けはいくらでもできて…気に食わないからが本心の…。

「ありがとう。僕は神谷 和かみや かず。2年C組だ。
これから、ちょくちょく来ると思うけど、よろしく。」
「こ…こちらこそ!僕は有村 恵です。
 1年A組です。」
「話しの出来る生徒がいて良かった。
 今じゃ、仲の良かった生徒も僕を避け始めてるし。」
「自殺未遂した女子は大丈夫なんですか?」
「先月から極秘入院していて、来月には学校に来るらしい。
 僕なら、そうまでしたら辞めるか、転校希望出すけど…。」
「手続きとかでじゃないんですか?」
「違うみたい…登校して来るから、対応に気を付けるようにと、担任の先生に言われた。
 手術後で学校も神経質になってるからと。」
「はぁ。でも警察とか報道とかは?
 大ごとにはならないんですか?」
「父親が海外で仕事してるし、家族も本人も大ごとにはしたくないと…。
 父子家庭なんですよ。」
「そう…なんですか…。」
 
 何だろう。凄く違和感を感じた。

 とはいえ、他人のイジメよりも、先ずは自分のイジメ対策をしなきゃ。
 放課後は速攻帰って奈落と作戦会議だな。
 なんか、ちょっとソワソワしちゃうな。
 
「有坂君は何故ここに?
 やっぱりイジメ…?」
「そうですね…天性のイジメられっこみたいで。
 ワザワザ遠くの学校に通ったのに、結局こうなっちゃって。」
「君のせいじゃないだろう!
 イジメをする奴らの方が病気なんだ!
 他人を労わる気持ちが欠けてる!」
 神谷先輩は力説した。
 「そうですね。」

 僕はにこやかに、神谷先輩に返事をした。

 奈落の他に、新たな先輩との出逢いで、屋上やトイレの出来事なんて何でもなく思えた。
 

 その後、午後の授業も宮地達は遠目でコソコソ話すくらいで、僕に関わっては来なかった。
 時折、聞こえるように僕の名前を出したり、腹立つとかは言ってるようだが、面と向かってではないので無視していた。
 僕の気持ちはすでに帰宅後の奈落との作戦会議の期待に飛んでいた。

 放課後、帰宅するのに下駄箱に行くと、僕の靴が無くなっていた。
 廊下の角でクスクス笑う、宮地達に気が付いた。
 …小学生かよ。はぁ。
ため息をついて上履きのままで外に出た。
 帰りに靴を買って行こう。
 それくらいは大丈夫だよなぁ。
 必要性があるし…。
 奈落に頼むと1万円が飛ぶ。
 だったら自分で購入した方が二足は買える。

 我ながら貧乏性だと思うけど、無駄に使っていいお金じゃないのは理解してるし。
 お金の使い方って…難しいな。

 僕は考えながら、駐輪場から人気が消えるまで待ってから、自分の自転車に乗った。

 高台から軽やかに坂を下り、シューズショップのある商店街を目指した。

 シューズショップでは、どうせまたイタズラされたりするのが予想されたので、安い物を早々に選んだ。
 早く奈落と打ち合わせしたかった。
 楽しみで仕方なかったのだ。
 男2人で作戦会議…隠れ家で遊ぶ子供みたいにワクワクしていた。
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