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王子の眠る白い城

第2話

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 ち、ちょっと、待ってくれ…。
 いとも簡単に、第1発見者の情報が間違ってたって認めたけど…いいの?
 そこに、深い意味は無かったのかな?
  それとも…それくらいバラしても、どうにでも出来るという、余裕の態度の現れなのか?

 初っ端からの予想外の対応に、混乱しつつも、話しを確実に聞く為に、ICレコーダーを握る手に力を入れた。

「鍵を開けてみると、暗がりの中で本棚が倒れて、本が散乱していた。
 そして、散乱してる本が破れていた。
でも、オレは当初は自然現象だと思って、特に不思議には思わなかったんだ。
 ミステリーやホラーは読むけど、現実とリンクさせるタイプじゃないんでね。」
「し、自然現象⁉︎
 何を根拠に…。」
「聞いてない?もしくは調べてない?
 事件発覚の前日の夜に、小規模な地震が発生してるんだよ。
 元々、あの本棚はちょっと不安定な気がしてたんだ。
 だから、藤谷以外の委員はそれ程、騒がなかった。
 少しは面白がって話したけどね。
 損害の心配の方に意識が向いてたから、誰かがどうとか、イタズラとかはあまり考えてないんだよ。」

 完璧なまでの答え…。
 自分はそれ程、図書室の怪人には関心が無いという方向に、話しが自然と向かってる。
 んんんんん!駄目だ!
 重谷先輩のペースにまんまと乗せられてるじゃないか!

「でも!事件は続いてる。
 一度きりの自然現象とはまるで違うと思うんです!」

 拳に力を入れて、無意識に声に力を入れて僕は重谷先輩に突っ込んでみた。

「そのようだね。
 どこの暇人なのか、他にやる事無いのかね。
 ま、同一犯なのは確実だろうね。
 集団か個人かはわからないけど。
 初めの事件がきっかけで、思い付いたのかも知れない。」
「つまり、愉快犯説を唱えてるって事ですよね。」

 神谷先輩も勇気を出して、ゆっくりと重谷先輩を見据えるように質問をした。

「それ以外、思いつくかい?
 理由があって、やってるとしたら、その方がクレイジーだと思うけどね。
 本を破くなんて、感情に任せた破壊行為という方が、説得力あるだろ。」
「…確かに、それが、人間…生徒ならそうですが…。
 動物や得体の知れない何かなら、話しは別かと。」
「ぷっ!ぷはっ!ははは。
 凄いなあ。
 失礼だけど…それ、中二病患ってる奴の思考だね。
 発想すらしなかったよ。
 それこそ、そんなのがいたら噂や騒ぎになってなきゃ可笑しいじゃないか?」
「可能性の問題です。
 完全に無いとは言えません。」
「…なるほど、確かに真相解明が目的なら、ありとあらゆる可能性を当たるのが、セオリーだね。
 笑ったりして悪かったね。」

 これは…何だろう。
 重谷先輩の術中にハマってるのかな。
 彼は僕等の話しを否定しつつも、反面肯定もしている。
 こっちも、悪い気はしないし、むしろ、重谷先輩が親身になって、僕等の相手をしてくれてるような錯覚をしてしまいそうだ。
 それとも、本心で…重谷先輩は実は怪人と関係ないのか…いや、そんな筈は無い…。
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