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笑顔に潜む、策士の罠

第20話

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 鞄をベッドの上に置いて、僕等は向かい合って、丸椅子に座った。

「さて、時間も無いし、重谷先輩の事は昼休みにまた話そう。」
「はい。そうですね。
 …あの、怪人事件については図書委員以外の生徒で、関係してるのって、宮地だけなんでしょうか?」
「えっ?」
「あ、えっと素朴な疑問なんですけど。
 宮地の件は早川さんを通してって、特別な条件だとは理解してるんですけど…。
 あんまり、アッサリ仲間に入れた感じが…違和感で。」
「先輩達以外の協力者が、他にも…?
 しかも、校内の図書委員以外…?
 どうかな…関係者が多過ぎると、秘密漏洩の危険が高まるし。」
「ですよね。
 でも、なんか引っかかってるんです。
 んー。
 怪人事件で、生徒会も、同好会の人達も予想以上に薄い反応で無関心。
 図書委員と関わりのある人達なのに、怪人事件については噂すら立ててない。」
「…そう言われてみれば。
 本の購入なんかは、生徒会の会計監査にも関わるはず…なのに、イタズラですか?ハイそのようです…って簡単に受け取り過ぎかも。
 金額が少ないからと言われれば、それまでの様な気もするけど…。」
「同好会にしても、怪人が出る図書室に、雨漏り対策とはいえ、簡単に書類を避難させるなんて。
 引っかかりがあるんですよね。」
「意外な方向に目を向けたね。
 確かに、そう考えたら、協力者が他にいないのは逆に不自然かも…。
 けど…、もし協力者がいるなら、それ相応の秘密が守られてる条件があるはず…。
 それは何だろう。
 学生同士で金銭的契約とは、到底思えないし。」
「ああ、そんなに深く考えなくても。
 あくまでも、少し引っかかる程度ですから。」
「ん…ま、今日はその件は、置いておこう。
 何せ、ボス戦だからね。
 余計な事で脳の回転を妨げたくはない。」
「ボス戦か。
 まあ、相手は会話が得意ですし、場の雰囲気が悪くなるとか、険悪にはならないとは思いますけど。」
「逆に上手く丸め込まれやしないかと、こっちはヒヤヒヤだな。」
「ですよね。
 僕なんて、最近話す機会が増えてマシにはなったといえ、基本的にコミュニケーション苦手ですし…。」
「それを言ったら、僕だって。
 有村君も僕も、保健室に通うくらいだ。
 そういう点でも、向こうが有利だよなぁ。」

 マイナス志向の2人にこの雨天の空。
 完全なる負け戦の予感が否めない。
 でも、負けても得るものがあるなら、価値はあるはず。
 この試みを無駄には、しない…。

 2人で窓の外をボーっと眺めた。
 生徒達が坂の上を傘を差しながら上ってくる。
 登校時間…気がつくと、朝のホームルームまであと少しだった。
 無言のまま、視線と表情でお互いを理解して、各自の教室へと向かって、保健室を後にした。
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