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笑顔に潜む、策士の罠
第8話
しおりを挟む中休みに、騒然となった僕の宮地への突っ込みので、宮地は昼までは僕に近寄る事は無かった。
明日の重谷先輩対策、及び藤谷さんからの返答メールを期待して、僕は足早に保健室を目指した。
「あら、有村君。」
「あ…早川さん。」
廊下の角を曲がろうとして、早川さんと鉢合わせてしまった。
相変わらずのお下げ髪で、いつもの様ににこやかな笑顔を見せてくれた。
えっと確か、今朝は宮地とは別に登校したんだよなぁ。
「どう?図書室の怪人の方は?進んでる?」
「へっ?あ、ああ。
まだ、予想もつかないよ。」
これって…探りを入れられてる⁉︎
「明日、前期図書委員の重谷先輩が、図書室のみんなに会いに来るの。
色々アドバイスしてくれて、とっても役立つ話をしてくれるの。」
「あ、うん。大野先生から聞いてる。
ついでに、僕等にも会わせてもらう予定なんだ。」
僕は嘘でごまかさなかった。
それが、最も最善の方法だと瞬時に判断したんだ。
嘘で取り繕えば、逆にこっちの空きが出来て、更に嘘をつかなきゃならなくなる。
ボロを出して失敗なんてしたくない。
なるべく、事実を上手く自然に話した。
意外にも、彼女は深く追求して来なかった。
「そうね。
怪人事件を知るには、当事者からの話しを聞くのが1番だものね。
頑張ってね。」
「あ、ありがとう。
あと…その、あんまり図書室以外で僕に話し掛けない方が…。」
宮地の目もあるし、イジメられてる僕と話してるところを、誰が何て思うか…。
「あら、どうして。
有村君が良い人なのは知ってるもの。
何も問題無いわ。
じゃあ、またね。」
「あ、また。」
早川さんは僕に手を振って去って行った。
ふう。
もっと、突っ込んで探りを入れられるかと、冷や汗ものだった。
意外とあっさり去って行った。
探りを入れる気は無かった…本当にそうだろうか?
いや、変に疑うのはよそう。
そもそも、遊び半分で始まった謎解明だ。
疑心暗鬼になって、他人を信じられなくなるなんてゴメンだ。
それに、早川さんは良い人だ。
躊躇なく、僕に廊下で話しかけてくれる。
イジメにあってる僕を知ってるのに。
そんな事気にせずに、対応してくれる。
ん…、僕等は怪人の謎を解き明かしたいだけで、誰かの正体をバラして吊るし上げたい訳じゃない。
だから、個人の尊厳を侵すような事まではしてはいけないんだ。
僕は一息ついて、気持ちを切り替えて、保健室へと進む脚に力を入れた。
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