『有意義』なお金の使い方！～ある日、高1の僕は突然金持ちになっちゃった!?～

笑顔に潜む、策士の罠

第5話

 旧校舎か…同好会の人達はそれぞれの教室の鍵を持ってるけど、他の空き教室は職員室保管だよな。
 
 もしかして、格別厳重に管理されていないのかな…。
 簡単に持ち出し可能とか…。
 けど、そういうのを直接先生に聞いても、否定されるかもしれない。
 裏ルート的に先輩から受け継いだり、合鍵を作ってたりするのかも知れない。
 こういうのは、部活動とか同好会の人達が有利か…。
 
 っと！まずい！ホームルームに遅れる！
 
僕は思考を切り替えて、一目散に教室へ駆け出した。
 階段を2.3段飛ばしで駆け下り、廊下を小走りした。

 昨日と今日、続けては、担任に睨まれる！

 必死で教室へと飛び込み、自分の席に飛び付いた。

「ぐはあぁ。」

 机の上に突っ伏して、一呼吸した。
 身体中の汗が一気に吹き出したかの様な、気分だ。
 
 パチン！

 右耳の後ろに、何かが飛んで来た。
 机の上を見ると、輪ゴムだった。

 後ろをゆっくりと振り向くと、輪ゴムを指に掛けて、僕を狙う宮地の姿が目に入った。

 パチン！

「痛っつ！」

 宮地は振り返った僕の右眼に、輪ゴムを当てた。

 ニヤリと少し前までの宮地らしい、意地悪な笑みを浮かべてるのかと思いきや、その表情は少し違った。
 何か…怒ってる…？
 マジギレ？
 
 すると、何やらノートに走り書きをして、僕に見せた。
 担任に見つからない様な角度で…しかも鬼の様に睨んで。

『朝から何してたんだ！
 まさか、図書室とかじゃねーよな！』

 うっ。
 バカだなぁ。
 そんな書き方したら、自分が図書室に絡んでますって自白してる様なもんだろ。
 そこは、少しでも濁せよ。

 相手をせずに、僕はまた前を向いた。
 仲良しじゃあるまいし、なんで返答しなきゃならないんだ。

 パチン！パチン！

 このぉ！

 宮地の奴は2回連続で、輪ゴムを後頭部に当てて来た。
 今度は振り向かず、チラ見程度で宮地を見た。
 
 うわぁ！中指立ててるよ！
 こりゃ、この後…捕まるかな…。

 僕は机の横に掛けた鞄の中に手を入れて、ICレコーダーをそっと、ポケットに移し替えた。

 「こら！宮地！何やっとる！
 ふざけるな！」

 担任に見つかり、奴は怒られた。
 しかし、反省の色を見せなかった為に、ホームルーム後、先生に引っ張られて行った。

 ほっ。

 僕はひとときの安らぎに、胸を撫で下ろした。
 けど…次の中休みは、来そうだぞ。
 心の準備をしとかなきゃ。

 さて、さっき気になった旧校舎の合鍵の件。
 奈落に調べてもらえないだろうか？
 校内の事だから、すぐに結果が出そうだし。

 僕は急いで、奈落へメッセージを送った。

 『おはよう。
 旧校舎の鍵の管理体制を知りたいんだ。
 もし、手に入れられる方法とかあれば、後々で使えるかも知れないから。』

 送信。