上 下
234 / 280
保健室同盟(仮)と前期図書委員

第47話

しおりを挟む

 ギリギリで教室に入ろうと、頭から突っ込んだはずだった。
 …なのに、運が悪かった。

 ドカッ!

「うぉあ!何だよ!ジャマだ!」
「あっ!ご、ごめんなさい!…!」

 あ…!また宮地!

「げっ!有村!てめぇは!いつもいつも、目障りな事…!」
「うわっ!」

 宮地は勢いよく右手の拳を振り上げた。
 僕は反射的に、目を瞑って額の上で両手をクロスして身をすくめた。

 ……?
 ……?あれ?
 何も起きない…。

「こぉら!有村!入り口で何つっ立ってるんだ!
 さっさと席につけ!」

 背後から来た数学の先生に、頭を小突かれた。

「は、はいすいません!」

 あれ…宮地は…?

 宮地は先に自分の席に着いていた。
 
 てっきり、殴られると思ったけど、先生が来たからなのかな…。
 ま、何はともあれ助かった。

 僕は頭を撫でながら、コソコソと自分の席に戻った。

 授業中、斜め後ろの宮地をチラ見してみると、完全に熟睡モードに入っていた。
 頭を少し斜めにして腕を組んで、うつらうつらしている。

「プッ…。」

 さっき、保健室で土屋先輩が描いた、てるてる坊主を思い出した。
 まんざら、似てなくはないじゃないか。
 頭の下げ具合といい…目蓋にマジックで目を描いたら、意外とそっくりかも。

 けど、早川さんの用事でギリギリに戻って来たのかな…?
 速攻で熟睡モードなんて、力仕事でもして来たのかな…。
 怪人に直結してる事なんだろうか?

 あの宮地が、それについては全くと言っていいほど、口を滑らせていない。
 普段はチャラくて、口が軽いのに。
 親友であるはずの、田中や安村にさえ話してる様子は無い。
 しかも、熱心に取り組んでる様子も伺える。
 何なんだ?怪人の何を手伝ってるんだ?

 宮地が普通の奴なら、彼から口を割らせた方が、怪人の正体に早く近づけるところだけど、さすがにそれは無理。
 返り討ちにされるのが目に見えてる。
 かと言って、早川さんも口が固くて、秘密を漏らすなんてあり得ない。

 開いた窓から吹く暖かい風が、カーテンをたなびかせながら、僕の頬を撫でた。

 ふあああ。
 宮地の寝顔をチラ見してたら、こっちまで眠くなって来た。
 あくびとか、くしゃみとかが移るってのはよく聞くけど、眠気も移るのかなぁ。
 もう、目蓋がかなり重い!
 昼休みに気合を入れて過ぎたのかな。
 ダメだ…これは、限界点を突破しちゃう!

 僕は不覚にも、睡魔の魔法に負けてしまい、そのまま机の上に顔を伏せて、寝落ちしてしまった。
 あとで考えると、宮地と睡眠空間を共有していた状況に、なんだか複雑な心境だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】貴方の子供を産ませてください♡〜妖の王の継承者は正妻志望で学園1の銀髪美少女と共に最強スキル「異能狩り」で成り上がり復讐する〜

ひらたけなめこ
キャラ文芸
【完結しました】【キャラ文芸大賞応援ありがとうございましたm(_ _)m】  妖の王の血を引く坂田琥太郎は、高校入学時に一人の美少女と出会う。彼女もまた、人ならざる者だった。一家惨殺された過去を持つ琥太郎は、妖刀童子切安綱を手に、怨敵の土御門翠流とその式神、七鬼衆に復讐を誓う。数奇な運命を辿る琥太郎のもとに集ったのは、学園で出会う陰陽師や妖達だった。 現代あやかし陰陽譚、開幕! キャラ文芸大賞参加します!皆様、何卒応援宜しくお願いいたしますm(_ _)m投票、お気に入りが励みになります。 著者Twitter https://twitter.com/@hiratakenameko7

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

吉祥寺あやかし甘露絵巻 白蛇さまと恋するショコラ

灰ノ木朱風
キャラ文芸
 平安の大陰陽師・芦屋道満の子孫、玲奈(れな)は新進気鋭のパティシエール。東京・吉祥寺の一角にある古民家で“カフェ9-Letters(ナインレターズ)”のオーナーとして日々奮闘中だが、やってくるのは一癖も二癖もあるあやかしばかり。  ある雨の日の夜、玲奈が保護した迷子の白蛇が、翌朝目覚めると黒髪の美青年(全裸)になっていた!?  態度だけはやたらと偉そうな白蛇のあやかしは、玲奈のスイーツの味に惚れ込んで屋敷に居着いてしまう。その上玲奈に「魂を寄越せ」とあの手この手で迫ってくるように。  しかし玲奈の幼なじみであり、安倍晴明の子孫である陰陽師・七弦(なつる)がそれを許さない。  愚直にスイーツを作り続ける玲奈の周囲で、謎の白蛇 VS 現代の陰陽師の恋のバトルが(勝手に)幕を開ける――!

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

琵琶のほとりのクリスティ

石田ノドカ
キャラ文芸
 舞台は滋賀県、近江八幡市。水路の町。  そこへ引っ越して来た大学生の妹尾雫は、ふと立ち寄った喫茶店で、ふんわり穏やかな若店主・来栖汐里と出会う。  まったり穏やかな雰囲気ながら、彼女のあだ名はクリスティ。なんでも昔、常連から『クリスの喫茶店やからクリスティやな』とダジャレを言われたことがきっかけなのだそうだが……どうやら、その名前に負けず劣らず、物事を見抜く力と観察眼、知識量には定評があるのだとか。  そんな雫は、ある出来事をきっかけに、その喫茶店『淡海』でアルバイトとして雇われることになる。  緊張や不安、様々な感情を覚えていた雫だったが、ふんわりぽかぽか、穏やかに優しく流れる時間、心地良い雰囲気に触れる内、やりがいや楽しさを見出してゆく。  ……しかしてここは、クリスの喫茶店。  日々持ち込まれる難題に直面する雫の日常は、ただ穏やかなばかりのものではなく……?  それでもやはり、クリスティ。  ふんわり優しく、包み込むように謎を解きます。  時に楽しく、時に寂しく。  時に笑って、時に泣いて。  そんな、何でもない日々の一ページ。  どうぞ気軽にお立ち寄りくださいな。

逢魔ヶ刻のストライン

和法はじめ
キャラ文芸
女装巫女に使役され、心の闇を食うバケモノの少女。 彼女はある日、己が使役者の少年に恋をしている事を知った。 そんな彼女の、終わりと始まりの物語。 ※他サイト様にも投稿しております。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...