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保健室同盟(仮)と前期図書委員

第39話

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「…宮地が旧校舎…。」

 図書室の怪人はもしかすると旧校舎内も含めて秘密を持ってるって事だよな…旧校舎…そのうち、捜査とは行かなくても調べてみた方がいいかも。

「あ!そうだ忘れるところだった!」

 僕はハッとして、神谷先輩と土屋先輩を見て聞いた。

「昨日、高橋先輩との話の中で神部先輩との面会をお願いしませんでしたよね、あれってやっぱり…忘れてたんじゃありませんよね。」

 2人は困惑した顔で互いを見てから、僕を見直した。
 神谷先輩は目を伏せて、呟くように語った。

「そりゃ、高橋先輩に話を聞くまでは、隙があれば…って狙ってたさ。
 けど…、あんなに惨い事故の内容を聞いたらさ、気が引けちゃうってのかな。
 遊び半分の僕等が、そこまで踏み込んでいいのかって感じてさ。」
「デリカシーないなぁ!有村君は!
 わかるでしょ!それくらい。
 悲劇の青年を悪戯に傷付ける事は、罪よ!」

 土屋先輩も拳を握りながら力説した。

「それ!それですよ!
 僕もそう思って、昨日、口に出せませんでした。
 可哀想って…でも、帰ってから考えてみたんです。
 そうやって、腫れ物に触るみたいに、可哀想扱いする方が逆に神部先輩に失礼なんじゃないかって。」
「有村君…。
 君は、神部先輩にそこまでして会いたいのか?」
「非道だわ!」
「落ち着いて下さい。
 事故は昨年の12月。
 それから、月日は流れてます。
 そして、神部先輩にはこれから先、長い未来が待ってます。
 事故に遭って、半身不随だからって、その長い時間を不幸の衣服をまといながら、一生を終えなきゃいけないなんて、それこそ非道だし、ナンセンスだ!
 
 未来は常に明るいものじゃなきゃいけないはずだ。
 どんなに苦しくても、未来に希望という名の光があれば、人は不幸なんて越えられるし、そうやって生涯を全うする生き物でしょう。
 
 つまり、こっちが気を遣う程、神部先輩は不幸じゃない。
 そうしなければ、この先、生きて行けない筈だ。
 そして、僕等もそれを認めて受け止めてあげなきゃならないんじゃないでしょうか。

 大事なのは、気を遣って接する事じゃなくて、普通に、1人の人間として接してあげる事じゃないでしょうか?

 だから…その、神部先輩にどうしても会った方がいいと思ってます。
 重谷先輩に拒否されても、無理にでも大野先生に頼み込んででも。
 それが、神部先輩に敬意を払うことに繋がると…。」

 神谷先輩は僕の言葉を聞きながら、額に人差し指をトントンと当てて、少し間を置いてから、返答をしてくれた。

「ん…確かにそうだね。
 神部先輩はリハビリをしながら、未来に向かってる。
 下手に気を遣うのは、健常者のエゴなのかもしれない。
 自分がイジメられてるって事、忘れてたよ。
 差別的な行為こそ、人を傷付ける…確かに。
 大事な事を忘れていたよ。
 有村君、神部先輩にどうやってでも会おう。
 まず、ダメ元で、金曜日に来る重谷先輩に頼んでみよう。
 それからは、あの手この手。
 ダメなら病院行って強行突破だ!」
「きゃー!マジ捜査って感じ!
 神部先輩、車椅子の美青年だし楽しみだわ!」

 土屋先輩のトンチンカンな、叫びに神谷先輩がツッコむ様に大きなため息をついた。
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