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第2章「俺たち、どーせいするんだよ?」
気になる人 桜十葉side
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裕翔くんの唇が私の唇を何度も塞ぐ。
酸素を求めて口を開けたら、ぬるっとしたものが口の中に入ってきて、私の舌と絡まり合う。
「んっ……んぁ、はぁ……もっと」
も、もっと…!?何を言っているんだ自分!正気を保て!
「もう、やば……。桜十葉、俺したい」
し、したいっ……?今の状況でそう言うってことはやっぱりあれだよね?裕翔くんは大人だし、そう言う経験も少なくないはず。
そう思うと胸の中がキュッと苦しくなって、他の女の人が裕翔くんと……、なんて考えると何だか凄く嫌だった。
裕翔くんの手が私の制服のボタンを外していく。それは本当に一瞬で、慣れているんだなぁと思った。
はだけた制服からはもう私の下着。裕翔くんは優しく制服を脱がせて、瞳で訴えてくる。
「ねぇ、ダメ?」
「んっ……、」
答える隙なんて、与えないという程にまた深いキスが降ってくる。裕翔くんは、我慢してるのかな?でも、私は……。
「裕翔、くん……。私が高校生を卒業したら、して、いいから。今は、まだ……」
まだ自分の気持ちも分からないのに、裕翔くんとならキス以上のことをしてもいいって思った。だけど私は、そういうことをするのは高校生を卒業してからって決めているんだ。
「…うん、分かった。必ず守る」
裕翔くんは一瞬だけ残念そうな顔をしたけれど、すぐにまた優しい表情に戻った。
その日、私は家には帰れなかった。夜は一晩中裕翔くんの腕の中で眠った。こんなにも安心して眠れたのは、今まで生きてきた中で1番じゃないかと思うくらいだったんだ。
私は16歳になって初めて、人の体温の温かさを知った。
次の日の朝、裕翔くんが横で眠っていた。裕翔くんは私を抱きしめて眠っていたようだ。
ていうか!裕翔くんの肌が直に触れて凄く恥ずかしい。
「ひ、裕翔くんっ!!朝だよ!起きて」
私がそう言うと、裕翔くんは私を抱きしめる力を強くした。
「んんー、桜十葉……うるさい」
「んっ…………、はぁ」
突然のことだった。裕翔くんが私に長くて甘いキスをしてきたのだ。こんな事でわたしを黙らせようとするなんて…。
うぅ、ずるい。
昨日分かったことが1つだけある。
私は、裕翔くんのことを、もうただの他人としては見られなくなっているということ。
まだ出会って間もないのに、裕翔くんといると、何だかすごく安心するんだ。
「ねぇ~桜十葉。今日も俺と寝よ?それくらいいいでしょ」
昨日、私からお預けを食らった裕翔くんは不満そうに口を尖らせる。
「な、何言ってるの!」
裕翔くんの腕の中で眠るのは、すごく気持ちよかったし安心した。でもそれ以上に、すごくドキドキして心臓が止まりそうになったんだ。
「えぇー、ケチ。俺ね、凄く我慢してたんだよ?もうずっと生殺しだったの。いや、…でも今の状況のほうがよっぽど理性がやばいかも……」
な、生殺し…。ていうかそれ、下ネタに入るよね!?
「な、な、なな……」
「大丈ー夫?日本語喋れてないよ?今日も可愛い。絶対に俺と寝ようね」
か、可愛いって……。裕翔くんの事を他人として見れなくなった今、そんな言葉にいちいち反応しては顔が赤くなってしまう。
しかも裕翔くん、最終的には一緒に寝ることを強制的に決めちゃってるし……。でも、私だって裕翔くんと寝たい。
口では恥ずかしくて、自分からは言えないだけなんだ。
「っていうか!今日学校!遅れちゃう」
「何言ってるの?今日は土曜だし学校ないよ?だから俺とずっとここにいようよ。ほんとは桜十葉もそうしたいでしょ?」
なぜか響きに含みを持たせてそう言って、私を誘惑する君はとてもずるい。
「っていうか!今日学校じゃないの?昨日真陽くんがまた明日って……、んっ…んぁ…っ」
私の唇に裕翔裕翔くんの唇が重なった。でもそれは少し強引でとっても甘い。なんだか裕翔くん、不機嫌?
裕翔くんが抱きしめていた腕を解いて、私のお腹当たりを触った。これはやばいと思って抵抗しようとしても、私の体はビクともしない。
「んっ……ぁっ…、もうっ…」
この後、昼過ぎまで裕翔くんが満足するまで腕の中に閉じ込められてしまっていた。この野獣さんを我慢させることはほぼ無理に近いそうです……。
「んー、もう!信じられないよ!」
「だからごめんって…。可愛い桜十葉ちゃんが悪い。俺、今だって萎えてなんかいないんだから」
あの後甘く色んなところを触られた私はただいま不機嫌中。どうやら真陽くんの名前を出したのがいけなかったらしい。でも…!それでも……、
本っ当に恥ずかしいよぉ~!私はまだ高校生なんだから、もう少しくらい手加減してくれてもいいよね!?
「ねえ、桜十葉。今からデートしよ」
もう服に着替えた裕翔くんがとっても綺麗でかっこいい顔をして笑った。ずっと生殺しだったって、男の人にとってどれだけのものなのかは分からないけれど、高校生の私にとっては裕翔くんとキスをするだけで限界なんだ。
「うんっ!行きたい」
私たちはお互いに何も言うことなく恋人繋ぎで出かけた。裕翔くんは、私のことどう思っているんだろう。
私と裕翔くんは、友達でも、恋人でもない、不思議な関係。裕翔くんに優しくされる度に心臓がキュンと高鳴って、苦しくなる。
この想いは、一体何なんだろう……?
でも、その答えを出してしまったらだめな気がして、裕翔くんが離れて行ってしまう気がして、頭に浮かんだ疑問を打ち消した。
私が家に帰ったのは次の日。私は1日を裕翔くんの家で過ごした。その間、裕翔くんがすぐにああいう甘いことをしてくるのを必死で止めていた。
隣には、私の両親に挨拶に行きたいと言って私についてきた裕翔くん。なんの挨拶だろうと思ったけれど、これから私を家に泊めたりすることがあるからその挨拶だと。
お母さんのお腹は今、少しずつ膨らんできている。16年間、一人っ子だった私はずっと弟か妹が欲しいと思っていた。でもそんな我儘は言えなくて、今までずっと隠していたけれど、今はとても嬉しい。
お父さんは最近お母さんとキス止まりばかりで不服そうに頬を膨らませているけれど、我慢はちゃんとしているらしい。
お母さんを溺愛するイケメンのお父さんも世界的に有名な化粧品会社の社長さんだもんなぁ。
お母さんはお父さんのスーツ姿が大好きらしくて、髪をセットしたらもっとかっこよくなるんだと。
私の大きなお屋敷に着き、裕翔くんと一緒に門をくぐる。
「そう言えば、桜十葉ってお嬢様なんだよね?結城グループの。本当に凄いね、このお屋敷と日本庭園」
裕翔くんが隣で感嘆の声を漏らしていた。
私は一応家のインターホンを押して、ドアが開くのを待つ。何十秒かすると中からお父さんが出てきて、裕翔くんを招き入れてくれた。
「いやぁ、来てくれてありがとう。裕翔くん、立派になったなぁ」
お父さんがそう感心したように裕翔くんを褒める。
「はい。ありがとうございます」
え、待って…。裕翔くんとお父さんって知り合いだったの!?二人が仲良くリビングの方へ歩いていくから私は置いてけぼり状態だった。
私はお母さんの代わりにお茶を出して、裕翔くんの隣に座った。
「あ、そう言えばなぁ。僕と楓、妊娠記念ということで近々海外旅行に行こうと思ってるんだ。もちろん楓の体が大丈夫な時にね」
「楓さん、妊娠したんですか!それはおめでとうございます」
むむむ……。裕翔くんはお母さんとまで知り合いなのか??
「ありがとう。ところでなんだけどその旅行期間中裕翔くんの家で桜十葉を預けることは出来ないかな?そうした方が僕達も安心なんだよ」
「ええ、それはもう望んでいたことですから。なんならずっと一緒に住んでいたいぐらいですよ」
「おや、それは本当か?」
お父さん!顔、すっごいニヤけてる!!
多分今のお父さんの脳内にはお母さんとの2人きりのラブラブ生活が広がっているんだと思う。
「はい。冗談ではありません」
そう真剣な顔をしてそう答える裕翔くんを見つめていると頬が赤くなっていく。
だって、それって……なんだかプロポーズされたみたいだから……。
「それなら良かったよ!桜十葉、これからはこれを機に裕翔くんと生活しなさい。親離れする為にもね」
え、ちょっとお父さん、軽すぎじゃない───!?しかも、お、親離れだなんて……。
私、そんなにマザコンでもファザコンでもないのに…。でもお父さんが考えていることはそんな事じゃないとニヤけている顔から思う。
「はい、俺が桜十葉さんをお守りします」
裕翔くんのその言葉にキュンとする。さっきまでの事なんて忘れて今は嬉しさが心の中を支配していた。
「じゃあ桜十葉。お父さんたちは今日の夕方の便で海外旅行に行ってくるから荷物をまとめて、裕翔くんと一緒に暮らしてね」
え、ちょっと待ってよ……お父さん!
さっき、お母さんの体が大丈夫な時に旅行に行くって言ってたよね!?今すぐに裕翔くんと同居するだなんて、聞いてないよ……っ!
「じゃあ裕翔くん、桜十葉のことよろしくね。くれぐれも、桜十葉が成人するまでは健全な生活をしてね」
最後の言葉を言う時、お父さんの後ろに何だか黒いものが見えた。
「はい。承知しました」
いや、承知してないでしょ……っ!裕翔くんが、もうすでに私のことを偵察済みだと言うことを、お父さんは知らない。
「じゃあ、お父さんは楓と一緒に二人きりのラブラブ旅行に行ってくるよ」
お父さんはそう言って、ひらひらと手を振りながらリビングを出ていった。
なんて、……なんて薄情な…。
普通、1人の大事な娘を大人の男の人と一緒に暮らさせたりする!?
でも、裕翔くんと一緒に暮らせることはとても嬉しい。
「ほら、桜十葉。一緒に荷物まとめよ?」
裕翔くんが優しく微笑んで手を差し出してきたので私は複雑な気持ち半分、嬉しい気持ち半分でその手を握った。
「……うん!」
私は裕翔くんに荷造りを手伝ってもらった。元々持っているものも少なかった事もあって1時間くらいで準備を終えることが出来た。
私は今、裕翔くんの大きな豪邸の前にいる。
何度見ても慣れない家。私もお屋敷に住んではいるけれど人の家に感動したりすることは少なくない。
「ほら、家を見つめるんじゃなくて俺を見つめてよ」
不機嫌そうな声を出した裕翔くんが横からグイッと両手で私の頬を包む。
綺麗な瞳に見つめられて、心の奥まで見透かされてしまっているようだ。
「桜十葉?どうしたの?」
「あっ……、いや、……むむむ」
「そんな可愛い声で濁さないで。何、俺の顔見惚れてたとか?」
「っ……!!」
「え、何その反応。本当に?自(うぬ)惚れちゃってもいいの?」
いたずらっ子のような顔をしてそう言ってくる裕翔くんだけど、その顔は嬉しさが隠しきれていない子供のようだ。
私は真っ赤な顔をしてコクンと小さく頷いた。
私が頷いた途端、甘い香りが顔いっぱいに広がる。そして裕翔くんに抱きしめられているんだと気づくとまた全身の脈がドクンドクンと激しく脈打つ。
「あー、可愛すぎる。ねぇ、それわざとなの?いや、桜十葉の事だからわざとなんかじゃないよね……。やば、俺これからやってけんのかな……」
最後の方は裕翔くんがごにょごにょと喋るせいであまり聞き取れなかった。
「ねえ桜十葉、知ってる?同居するってことは俺たち、どーせいするんだよ?」
綺麗な顔をしてそう言われた言葉にまたも私は真っ赤になってしまった。
「桜十葉から俺の匂いするってめっちゃそそられるんだけど…」
家に入った後も裕翔くんは私を抱きしめて離そうとはしない。今は裕翔くんの部屋のソファで、裕翔くんの膝の上にちょこんと座わらせられていて動けない状況。
「桜十葉……、」
耳元で甘く囁かれた声に体がビクンと反応してしまう。
「可愛い、…桜十葉、耳弱いんだね」
そう言って裕翔くんは私の弱い所をどんどん攻めてくる。そして裕翔くんの柔らかい唇が私の耳たぶをカプっと噛む。
「ひゃぁっ……」
裕翔くんの手がその間も服の中に侵入してきていて、私はそれを必死に止める。
「だ、め……だよ」
私の精一杯の抵抗にも裕翔くんはビクともしない。もう、こうなってしまったら誰にも裕翔くんを止めることは出来ない。
甘いことをする時だけ、オオカミさんになる彼は今日も私を甘く激しく感じさせた。
だけどキス以上の甘いことは、高校を卒業してから……。
✩.*˚side end✩.*˚
酸素を求めて口を開けたら、ぬるっとしたものが口の中に入ってきて、私の舌と絡まり合う。
「んっ……んぁ、はぁ……もっと」
も、もっと…!?何を言っているんだ自分!正気を保て!
「もう、やば……。桜十葉、俺したい」
し、したいっ……?今の状況でそう言うってことはやっぱりあれだよね?裕翔くんは大人だし、そう言う経験も少なくないはず。
そう思うと胸の中がキュッと苦しくなって、他の女の人が裕翔くんと……、なんて考えると何だか凄く嫌だった。
裕翔くんの手が私の制服のボタンを外していく。それは本当に一瞬で、慣れているんだなぁと思った。
はだけた制服からはもう私の下着。裕翔くんは優しく制服を脱がせて、瞳で訴えてくる。
「ねぇ、ダメ?」
「んっ……、」
答える隙なんて、与えないという程にまた深いキスが降ってくる。裕翔くんは、我慢してるのかな?でも、私は……。
「裕翔、くん……。私が高校生を卒業したら、して、いいから。今は、まだ……」
まだ自分の気持ちも分からないのに、裕翔くんとならキス以上のことをしてもいいって思った。だけど私は、そういうことをするのは高校生を卒業してからって決めているんだ。
「…うん、分かった。必ず守る」
裕翔くんは一瞬だけ残念そうな顔をしたけれど、すぐにまた優しい表情に戻った。
その日、私は家には帰れなかった。夜は一晩中裕翔くんの腕の中で眠った。こんなにも安心して眠れたのは、今まで生きてきた中で1番じゃないかと思うくらいだったんだ。
私は16歳になって初めて、人の体温の温かさを知った。
次の日の朝、裕翔くんが横で眠っていた。裕翔くんは私を抱きしめて眠っていたようだ。
ていうか!裕翔くんの肌が直に触れて凄く恥ずかしい。
「ひ、裕翔くんっ!!朝だよ!起きて」
私がそう言うと、裕翔くんは私を抱きしめる力を強くした。
「んんー、桜十葉……うるさい」
「んっ…………、はぁ」
突然のことだった。裕翔くんが私に長くて甘いキスをしてきたのだ。こんな事でわたしを黙らせようとするなんて…。
うぅ、ずるい。
昨日分かったことが1つだけある。
私は、裕翔くんのことを、もうただの他人としては見られなくなっているということ。
まだ出会って間もないのに、裕翔くんといると、何だかすごく安心するんだ。
「ねぇ~桜十葉。今日も俺と寝よ?それくらいいいでしょ」
昨日、私からお預けを食らった裕翔くんは不満そうに口を尖らせる。
「な、何言ってるの!」
裕翔くんの腕の中で眠るのは、すごく気持ちよかったし安心した。でもそれ以上に、すごくドキドキして心臓が止まりそうになったんだ。
「えぇー、ケチ。俺ね、凄く我慢してたんだよ?もうずっと生殺しだったの。いや、…でも今の状況のほうがよっぽど理性がやばいかも……」
な、生殺し…。ていうかそれ、下ネタに入るよね!?
「な、な、なな……」
「大丈ー夫?日本語喋れてないよ?今日も可愛い。絶対に俺と寝ようね」
か、可愛いって……。裕翔くんの事を他人として見れなくなった今、そんな言葉にいちいち反応しては顔が赤くなってしまう。
しかも裕翔くん、最終的には一緒に寝ることを強制的に決めちゃってるし……。でも、私だって裕翔くんと寝たい。
口では恥ずかしくて、自分からは言えないだけなんだ。
「っていうか!今日学校!遅れちゃう」
「何言ってるの?今日は土曜だし学校ないよ?だから俺とずっとここにいようよ。ほんとは桜十葉もそうしたいでしょ?」
なぜか響きに含みを持たせてそう言って、私を誘惑する君はとてもずるい。
「っていうか!今日学校じゃないの?昨日真陽くんがまた明日って……、んっ…んぁ…っ」
私の唇に裕翔裕翔くんの唇が重なった。でもそれは少し強引でとっても甘い。なんだか裕翔くん、不機嫌?
裕翔くんが抱きしめていた腕を解いて、私のお腹当たりを触った。これはやばいと思って抵抗しようとしても、私の体はビクともしない。
「んっ……ぁっ…、もうっ…」
この後、昼過ぎまで裕翔くんが満足するまで腕の中に閉じ込められてしまっていた。この野獣さんを我慢させることはほぼ無理に近いそうです……。
「んー、もう!信じられないよ!」
「だからごめんって…。可愛い桜十葉ちゃんが悪い。俺、今だって萎えてなんかいないんだから」
あの後甘く色んなところを触られた私はただいま不機嫌中。どうやら真陽くんの名前を出したのがいけなかったらしい。でも…!それでも……、
本っ当に恥ずかしいよぉ~!私はまだ高校生なんだから、もう少しくらい手加減してくれてもいいよね!?
「ねえ、桜十葉。今からデートしよ」
もう服に着替えた裕翔くんがとっても綺麗でかっこいい顔をして笑った。ずっと生殺しだったって、男の人にとってどれだけのものなのかは分からないけれど、高校生の私にとっては裕翔くんとキスをするだけで限界なんだ。
「うんっ!行きたい」
私たちはお互いに何も言うことなく恋人繋ぎで出かけた。裕翔くんは、私のことどう思っているんだろう。
私と裕翔くんは、友達でも、恋人でもない、不思議な関係。裕翔くんに優しくされる度に心臓がキュンと高鳴って、苦しくなる。
この想いは、一体何なんだろう……?
でも、その答えを出してしまったらだめな気がして、裕翔くんが離れて行ってしまう気がして、頭に浮かんだ疑問を打ち消した。
私が家に帰ったのは次の日。私は1日を裕翔くんの家で過ごした。その間、裕翔くんがすぐにああいう甘いことをしてくるのを必死で止めていた。
隣には、私の両親に挨拶に行きたいと言って私についてきた裕翔くん。なんの挨拶だろうと思ったけれど、これから私を家に泊めたりすることがあるからその挨拶だと。
お母さんのお腹は今、少しずつ膨らんできている。16年間、一人っ子だった私はずっと弟か妹が欲しいと思っていた。でもそんな我儘は言えなくて、今までずっと隠していたけれど、今はとても嬉しい。
お父さんは最近お母さんとキス止まりばかりで不服そうに頬を膨らませているけれど、我慢はちゃんとしているらしい。
お母さんを溺愛するイケメンのお父さんも世界的に有名な化粧品会社の社長さんだもんなぁ。
お母さんはお父さんのスーツ姿が大好きらしくて、髪をセットしたらもっとかっこよくなるんだと。
私の大きなお屋敷に着き、裕翔くんと一緒に門をくぐる。
「そう言えば、桜十葉ってお嬢様なんだよね?結城グループの。本当に凄いね、このお屋敷と日本庭園」
裕翔くんが隣で感嘆の声を漏らしていた。
私は一応家のインターホンを押して、ドアが開くのを待つ。何十秒かすると中からお父さんが出てきて、裕翔くんを招き入れてくれた。
「いやぁ、来てくれてありがとう。裕翔くん、立派になったなぁ」
お父さんがそう感心したように裕翔くんを褒める。
「はい。ありがとうございます」
え、待って…。裕翔くんとお父さんって知り合いだったの!?二人が仲良くリビングの方へ歩いていくから私は置いてけぼり状態だった。
私はお母さんの代わりにお茶を出して、裕翔くんの隣に座った。
「あ、そう言えばなぁ。僕と楓、妊娠記念ということで近々海外旅行に行こうと思ってるんだ。もちろん楓の体が大丈夫な時にね」
「楓さん、妊娠したんですか!それはおめでとうございます」
むむむ……。裕翔くんはお母さんとまで知り合いなのか??
「ありがとう。ところでなんだけどその旅行期間中裕翔くんの家で桜十葉を預けることは出来ないかな?そうした方が僕達も安心なんだよ」
「ええ、それはもう望んでいたことですから。なんならずっと一緒に住んでいたいぐらいですよ」
「おや、それは本当か?」
お父さん!顔、すっごいニヤけてる!!
多分今のお父さんの脳内にはお母さんとの2人きりのラブラブ生活が広がっているんだと思う。
「はい。冗談ではありません」
そう真剣な顔をしてそう答える裕翔くんを見つめていると頬が赤くなっていく。
だって、それって……なんだかプロポーズされたみたいだから……。
「それなら良かったよ!桜十葉、これからはこれを機に裕翔くんと生活しなさい。親離れする為にもね」
え、ちょっとお父さん、軽すぎじゃない───!?しかも、お、親離れだなんて……。
私、そんなにマザコンでもファザコンでもないのに…。でもお父さんが考えていることはそんな事じゃないとニヤけている顔から思う。
「はい、俺が桜十葉さんをお守りします」
裕翔くんのその言葉にキュンとする。さっきまでの事なんて忘れて今は嬉しさが心の中を支配していた。
「じゃあ桜十葉。お父さんたちは今日の夕方の便で海外旅行に行ってくるから荷物をまとめて、裕翔くんと一緒に暮らしてね」
え、ちょっと待ってよ……お父さん!
さっき、お母さんの体が大丈夫な時に旅行に行くって言ってたよね!?今すぐに裕翔くんと同居するだなんて、聞いてないよ……っ!
「じゃあ裕翔くん、桜十葉のことよろしくね。くれぐれも、桜十葉が成人するまでは健全な生活をしてね」
最後の言葉を言う時、お父さんの後ろに何だか黒いものが見えた。
「はい。承知しました」
いや、承知してないでしょ……っ!裕翔くんが、もうすでに私のことを偵察済みだと言うことを、お父さんは知らない。
「じゃあ、お父さんは楓と一緒に二人きりのラブラブ旅行に行ってくるよ」
お父さんはそう言って、ひらひらと手を振りながらリビングを出ていった。
なんて、……なんて薄情な…。
普通、1人の大事な娘を大人の男の人と一緒に暮らさせたりする!?
でも、裕翔くんと一緒に暮らせることはとても嬉しい。
「ほら、桜十葉。一緒に荷物まとめよ?」
裕翔くんが優しく微笑んで手を差し出してきたので私は複雑な気持ち半分、嬉しい気持ち半分でその手を握った。
「……うん!」
私は裕翔くんに荷造りを手伝ってもらった。元々持っているものも少なかった事もあって1時間くらいで準備を終えることが出来た。
私は今、裕翔くんの大きな豪邸の前にいる。
何度見ても慣れない家。私もお屋敷に住んではいるけれど人の家に感動したりすることは少なくない。
「ほら、家を見つめるんじゃなくて俺を見つめてよ」
不機嫌そうな声を出した裕翔くんが横からグイッと両手で私の頬を包む。
綺麗な瞳に見つめられて、心の奥まで見透かされてしまっているようだ。
「桜十葉?どうしたの?」
「あっ……、いや、……むむむ」
「そんな可愛い声で濁さないで。何、俺の顔見惚れてたとか?」
「っ……!!」
「え、何その反応。本当に?自(うぬ)惚れちゃってもいいの?」
いたずらっ子のような顔をしてそう言ってくる裕翔くんだけど、その顔は嬉しさが隠しきれていない子供のようだ。
私は真っ赤な顔をしてコクンと小さく頷いた。
私が頷いた途端、甘い香りが顔いっぱいに広がる。そして裕翔くんに抱きしめられているんだと気づくとまた全身の脈がドクンドクンと激しく脈打つ。
「あー、可愛すぎる。ねぇ、それわざとなの?いや、桜十葉の事だからわざとなんかじゃないよね……。やば、俺これからやってけんのかな……」
最後の方は裕翔くんがごにょごにょと喋るせいであまり聞き取れなかった。
「ねえ桜十葉、知ってる?同居するってことは俺たち、どーせいするんだよ?」
綺麗な顔をしてそう言われた言葉にまたも私は真っ赤になってしまった。
「桜十葉から俺の匂いするってめっちゃそそられるんだけど…」
家に入った後も裕翔くんは私を抱きしめて離そうとはしない。今は裕翔くんの部屋のソファで、裕翔くんの膝の上にちょこんと座わらせられていて動けない状況。
「桜十葉……、」
耳元で甘く囁かれた声に体がビクンと反応してしまう。
「可愛い、…桜十葉、耳弱いんだね」
そう言って裕翔くんは私の弱い所をどんどん攻めてくる。そして裕翔くんの柔らかい唇が私の耳たぶをカプっと噛む。
「ひゃぁっ……」
裕翔くんの手がその間も服の中に侵入してきていて、私はそれを必死に止める。
「だ、め……だよ」
私の精一杯の抵抗にも裕翔くんはビクともしない。もう、こうなってしまったら誰にも裕翔くんを止めることは出来ない。
甘いことをする時だけ、オオカミさんになる彼は今日も私を甘く激しく感じさせた。
だけどキス以上の甘いことは、高校を卒業してから……。
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