底辺ハンターのリベンジダンジョン!~モンスターに全てを奪われたので、雑魚の俺が最強の役職『覚醒者』を駆使して復讐しようと思います~

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第五十二話 一つになる

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「まだ立ち上がるのか。面白い、続けるぞ」

『や、やばい……このままだと、身体が壊れてしまう』

 ―おい

『っ⁉ この声は⁉』

 頭の中から、俺の声が聞こえてきた。

「喰らえ! 魔術!」


 ◆


「おいおい、身体がボロボロじゃないか。酷すぎて、もう出てきてしまった」

 俺の中のもう一つの俺が、姿を現した。

「すまねぇ、なかなかヤバい状況だ。身体が言うことを聞かない」
「次の攻撃を受けてしまったら、本当に動けなくなるだろうね」
「そうだな」
「それで、どうする?」
「どうするって?」

 俺は、人間の俺が投げかけてきた質問の意図が分からなかった。
 人間の俺は、真剣な表情で驚きのことを提案してきた。

「僕たち、一緒にならないか?」
「い、一緒になる?」
「そうだ、僕は考えたんだ。僕ときみが、分離しているから、十分に力を発揮できないんだと」
「そうか、その可能性は十分にあるな」

 人間の俺の考えは、かなり妥当なものであった。
 愛人あいとは、まだ、完全に力を出し切れていないのは感じていた。
 その原因が、俺たちが分離していることにあるのかもしれない。

「だから、僕たちが一人になることで、アランに対抗する力を得ることができる」
「でも、どうやってするんだ?」
「それは、一緒に表に出るんだよ」

 俺たちが一つになる方法は、二人が同時に表に出ることだ。
 しかし、表に出ることのできるのは、一人分だけだ。
 だが、今は挑戦してみるしかない。

「よし、やろう」
「それじゃあ、行こう!」
「おう!」

 そうして、俺たちは、表に出る為の光が差す方へと向かって行った。

「俺たちが一緒になったら、どれだけ強いんだろう?」
「それは、世界一に決まっているよ!」
「だな!」

 この時、俺は人間の俺と心が通じ合っているような感覚があった。
 こいつとなら、合わさっても上手くやっていけると思った。

「二人の力で、アランをぶっ倒すぞ!」
「うん! やってやろう!」

 ―シュゥゥゥ

 そうして、俺たちは、共に光の中へと吸い込まれていった。


 ◆


「喰らえ! 魔術!」
「魔術 【魔拳バーズ!!!】」

 ―ドォォォン!!!

「フッ」
「魔術 【魔拳バーズ】」

 ―ドガァァァン!!!

「なんだと⁉ 俺の攻撃が相打ちになるだと⁉」

 僕は、魔術を使い、アランの攻撃から身を守った。
 身体は、今までにないほど絶好調だ。

「これくらいで相打ちか、余裕だな」
「なっ⁉ ま、魔族の身体をコントロールしているだと⁉」
「コントロール? それは違うな。だって、これは、僕の身体だ!」

 人間の時の様に、しっかりと意識を保っている。
 そして、魔族の力によって、傷は癒え、元通りに回復している。
 感情は、二つが混ざっているというよりかは、むしろ、一つになったように感じる。

「まあいい、それでも、お前は私には勝てない!」
「それじゃあ、一発勝負をしようか」
「いいだろう、返り討ちにしてやるよ」
「「いくぞ!」」

 ―ビュゥゥゥン!!!

「魔術 秘儀 【魔龍ブラックドラゴン!!!】」

 ―ガァァァ!!!

 アランが、魔術を使うと、もの凄い魔力の籠った龍が現れ、僕の方へ向かってくる。
 僕も、全力の攻撃をする。

「魔剣術 奥義 【魔獅子レーヴェ!!!】」

 ―グワァァァ!!!

 剣に魔力を込め、剣術を使い、最大限の力を発揮した『魔獅子レーヴェ』を放った。
 獅子は、勢いよく龍へと立ち向かっていく。

 ―ドゴゴゴゴゴ!!!

 獅子と龍が激しくぶつかり合い、攻め合いを始める。
 しかし、攻め合いは、すぐに終わりを告げた。

 ―グワァァァ!!!

「なに⁉ 全く歯が立たないだと⁉」

 僕の獅子が一気に力を増し、龍を押し切る。

「いっけぇぇぇ!!!」

 ―グワァァァ!!!

「ハハッ、愛人あいと、俺の負けだ。これでようやく死ねる……」
「っ⁉ アラン、まさか……」

 アランの発言に変なところがあり、僕は、あることを察した。

「そうだ、俺は、魔王に操られていたんだ。殺してくれて、ありがとう……」
「待ってくれ!」

 ―グワァァァ!!!

 ―ドガァァァァァァン!!!

 そうして、アランは獅子に飲み込まれていった。
 アランの姿はなく、完全に消え去った。
 僕は、アランの最後の言葉が頭から離れなかった。

愛人あいと! やったな!」
「ああ、ありがとう」
愛人あいとくん、凄かったよ!」
「ありがとう。でも、一つ聞いてほしいことがあるんだ」
「なんだ?」
「それは……」

 僕は、アランのことをしんたちに話しておかなければいけないと思い、最後の言葉を伝えた。


 ―――

「マジかよ、そんなことがあったのか……」

 俺は、愛人あいとからアランのことを聞き、言葉を失った。
 それと共に、アラン、いや、『新宮あらみやさん』を救えなかったことに後悔の気持ちが大きくなる。

「くそっ! あいつ、絶対に許せねぇ!」

 そして、俺の魔王に対する怒りが大きくなった。

「落ち着いて、今は先に進むことを考えましょう」
「そうだね、僕も悔しいけど、それはあいつに一気にぶつけよう」
「わかった、それじゃあ、進もう」

 ―ガチャン!

 そうして、俺たちは、二つ目の扉を開けた。
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