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第三十五話 絶望

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 ―ドガァァン!

「もの凄い威力だ。これは、結構強そうなモンスターがいそうだな」
「そうね。急がないと他の人たちが危ないかもね」
「そうだな。飛ばすぞ!」
「ちょ、」

 ―ビュウゥゥン!!!

「待ってくださいよー!!!」

 俺たち三人は、全速力で奥へと向かって行った。
 昌磨しょうまの声が少しづつ小さくなって言っているが、まあ付いて来てるだろう。
 少しすると、飛んでいる大きなモンスターの影が見えた。

「あそこだな!」
「私に任せて!」
「氷魔法 【吹雪ブリザード!】」

 ―ビュウゥゥン!

 ―キィィィ!!!

 優羽ゆうが【吹雪ブリザード】を使うと、モンスターの周りを冷たい風と雪で取り囲んだ。
 モンスターは、苦しそうに叫び声を上げながらもがいていた。

「今のうちにみんなを安全なところに!」
「あなたは⁉」
「あとで説明するから、今は下がっててくれ」
「は、はい」

 そうして、昌磨しょうまが言っていた三人を安全な場所へと避難させた。

 ―キィィ!

 ―バンッ!

「弾いたのか⁉」
「まあ、威力を抑えたから、仕方がないわ」

 モンスターは、力強く羽を広げると、【吹雪ブリザード!】を消し去った。

 ―ビリッ、ビリビリッ

「あれは、『獣迅雷鳥ブラックバード』よ!」

獣迅雷鳥ブラックバード』、それはケモノ族の『迅雷鳥イーグレット』の進化系のモンスターだ。
 その強さは、獣狼牙ボルガートをも簡単に越している。

「おい! あいつの足を見ろ!」
「あの子が連れ去られた子ね。それにしても厄介なところにいるわね」
「そうだな。人質に取られてるみたいだ」

 獣迅雷鳥ブラックバードの足には、連れ去られた女の子が掴まれていた。
 無理に攻撃を仕掛ければ、あの子にまで被害が及んでしまう可能性があるので、慎重に戦わなければならない。

「先にあの子を助けましょう」
「どうやって助ける? 上空じゃあ上手く動けないぞ」
「魔法で足場を作るから、しんはあいつの気を引いて。その間に私が瞬間移動テレポートで上から攻撃するから」
「なるほど、任せろ!」
「それじゃあ、行くよ!」

 女の子を助けるまでは、全力を出すことができないので、先に救出することにした。
 そうして、作戦も決まったので、俺は優羽ゆうの合図で動き出した。

「俺も一応、使っておくか」
「強化スキル 【能力上限解放リミットオーバー!】」
「土魔法 【噴砂サンドアップ!】」

 ―ブワァァァ

「お、これは凄いな!」

 噴砂サンドアップによって、俺の足元に常に砂の床ができており、空中を陸のように自由に動き回ることができる。
 そうして、俺は獣迅雷鳥ブラックバードの正面に行き、気を引かせる。

「こっちだぞー! ベロベロバー! あっかんベー!」
「はぁ、何やってんのよ。そんなので気を引けるわけ……」

 ―ギィィィィィィ!!!

「できるのかよ。しかも、めっちゃ怒ってるよ」

 ―ビュウゥゥン!!!

「まあいい、この間に私が」

 獣迅雷鳥ブラックバードは、俺の挑発に完全に乗ってきた。
 そして、もの凄い速さで飛んでくる。

「うわぁぁぁ……あれ? 神宮寺じんぐうじさんの方が早いじゃん」

 意外にも、獣迅雷鳥ブラックバードはそれほど早くなく、余裕で動きが見えた。
 神宮寺じんぐうじさんって、やっぱり凄かったんだと実感した。

「これなら、俺だけで良さそうだな。やってみるか!」

 ―ギィィィィィ!!!

「スキル 【斬撃ざんげき!】」

 ―シャキンッ!

 ―ギュワァァァ!!!

しん、足を切ったの⁉ あのバカ、私も上空にいるってのに!」

 俺の攻撃は、上手く決まり、両足を綺麗に切り落とすことに成功した。
 これで女の子を助けることができそうだ……って、優羽ゆうはなんで上にいるんだ?
 女の子、落ちてるけど。

「きゃぁぁぁぁ!!!」
「うわっ、やべっ!」

 ―ビュウゥゥン

 俺は、全力で砂の足場を踏み込み、女の子の元へと急いだ。

 ―サッ

「ふぅ、間に合った。大丈夫ですか?」
「あ、はい。ありがとうございます。うぅ、怖かったですぅ!」

 ―ギュ

 あ、最高だ。

 女の子は、中学生くらいに見える程の幼い顔立ちで、とてもかわいい。
 しかし、ハンターということは、実際は俺と同じかそれ以上の年齢だ。
 まあ、可愛い子にギュッとされるのに、嬉しいことには変わりはない。

「地面に着いたよ。もう大丈夫だから。みんなと待ってて」

 避難させた三人と同じ場所に連れて行き、安全を確保する。
 そうして、俺は地面に降りてきた優羽ゆうの元へ行く。

「かわいかったなぁ。あはは、あははははぁぁ」

 ―ドンッ!

「グハッ、きゅ、急に何するんだよ!」
「作戦を守らなかったのと、きもい顔をしてたから」
「なんだよそれ!」

 俺は、優羽ゆうにお腹を強く殴られた。
 そして、なぜか優羽ゆうは機嫌が凄く悪かった。

「まあ、足を切ったから、あいつはもう何もできないだろ」
「そうね」

 ―ギュ、ギュワァァァァァ!!!

 獣迅雷鳥ブラックバードは、急に羽を動かしながら、雄叫びを上げだした。
 すると、想定外のことが起きた。

 ―ニュキッ!

「あ、足が生えた⁉」
「もしかして、こいつ、『』なのか……」

 俺は、新宮あらみやさんに、こんな話を聞いたことがあった。


 ~~~~~~

「稀に、ケモノ族と魔族の混合種がいるんだ」
「それって、中途半端で弱くなるんじゃないですか?」
「いいや、それがその逆なんだ」
「逆ですか? ってことは、ケモノ族と魔族を足した力ってことですか?」
「いいや、その力は、掛け算になる。上級魔族レベルの力を持つ」
「そんなの、勝てるはずがないじゃないですか?」
「ああ、そうだ。だから、万が一、混合種に出会って戦うことになったら……」

「死を覚悟しろ」
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