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第二十三話 命がけの脱出
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―ゴゴゴゴォォォォ!!!
「「イヤアァァァァァァ!!!!!!」」
俺たちは今、急いでダンジョンの外へと向かっている。
どうして急いでるかって?
そりゃあ……
―ゴゴゴゴォォォォ!!!
ダンジョンが崩れているからである。
足を止めた瞬間に死ぬということは、言わずもがなわかる。
「崩れるのめっちゃ早いじゃん! 急がないと!」
「獣狼牙を倒す方がまだ楽だぞ!」
ダンジョンは次々に崩れていき、俺たちを押しつぶそうとしていると錯覚するほどの早さで迫ってきている。
そして、今の俺はかなりヤバい問題を一つ抱えている。
「はぁ、はぁ、みんな、走るの早くないか?」
ステータスの能力最大値が上がって、みんなとの差は少ないはずなのに、俺だけ一人置いていかれているのだ。
しかも、疲れるのがとてつもなく早い。
「進、もっと急いで! 潰されるよ!」
「はぁ、はぁ、わかってるよ! これでも、全力なんだって。みんなと能力値は変わらないはずなのに……」
「何言ってるのよ。さっき覚醒したじゃない」
「あ……」
俺は、とんでもないことをしてしまったと後悔した。
確かに最大能力値は上がった。
しかし、覚醒してしまったので、今のレベルは『1』であり、能力値も全て『1』だ。
それはもちろん、みんなと同じスピードで走れるはずがない。
「やっべー! どうしよう! このまま潰れて死ぬの! 嫌だよぉぉぉ!!!」
俺は、パニックになり、騒ぐことしかできなくなった。
仕方がないよ、レベル1の俺が走っても追いつかれてしまうのだから。
「全く、仕方がないな!」
―ザッ、
「ゆ、優羽⁉」
「大人しく摑まってて」
「は、はい……」
俺は、恥ずかしいことに、好きな子にお姫様抱っこをされている。
能力値の高い優羽は、俺のことを軽々と持ち上げては、俺が走るよりも速いスピードで走っている。
俺は、照れながらお姫様抱っこをされていると……
―ボインッボインッ
「す、すげぇ……」
俺は、目の前で揺れる二つの大切な果実に目が釘付けになった。
これまでも、体育の授業などで見る機会はあったが、目の前で見るものは別格だ。
そして、不思議と落ち着いてきた。
「眼福だ……」
「おい、外に出た後、覚えとけよ」
「あ、終わった……」
俺が果実を見ていたことは、優羽にバレていたようだ。
死刑宣言された俺は自我を取り戻し、安らかな笑みを浮かべることしかできなかった。
「もうすぐで出口だ!」
「コロスコロスコロスコロスコロスコロス……」
出口の光が見えてきた。
優羽は可愛い顔を鬼の形相に変えて殺意をとうとう口にも出している。
これは、いつものようにはいかないだろうな。
「父さん、母さん、もうすぐでそちらに行くと思います」
ダンジョンから出る前に、俺は天にいる二人に挨拶をしておいた。
―キュゥゥゥゥ!
「何とか助かりましたね」
「ゆ、優羽様、アリガトウゴザイマシタ」
「どういたしまして。とてもいやらしい顔をしてましたね。何を見ていたのですか?」
今度の優羽は、天使のような優しい笑みで穏やかな口調で話している。
この話し方が一番怖いんだよ。
「そ、それは……」
「君たち、無事だったか!」
「あ、はい。大丈夫ですけど」
「た、助かった……」
突然、何者かに声を掛けられて、優羽はいつもの表情に戻り、俺はお姫様抱っこから解放された。
この人たちには、感謝してもしきれない。
「あ、あなたたちは……」
「悠斗、知ってるのか?」
「ハンターなら、誰もが知ってますよ! Sランクハンターですよ!」
「「え、Sランク⁉」」
―ビシッ!
俺と優羽は、話しかけている人がSランクハンターと知ると、速攻で姿勢を正して気を付けの姿勢を取った。
そうして、今までにしたことのないような素晴らしい挨拶をした。
どうやら、俺たちの思考は停止してしまったようだ。
「俺は、新人の見習いハンターです!」
「私も同じく見習いハンターです!」
「「よろしくお願いします!」」
「そんなに硬くなる必要はないぞ」
「「お気遣い、ありがとうございます!」」
「…………」
俺たちの異質すぎる態度にSランクハンターさんは困惑し、黙り込んでしまった。
―シュゥゥゥ
すると、出てきたゲートが閉じる音が背後からした。
「ゲートが消えていく⁉ もしかして、ダンジョンを攻略したのか⁉」
「はい。いろいろありまして……」
悠斗がこのダンジョンで起きたことを、丁寧に説明してくれた。
「この二人が狼牙を何十匹も倒した⁉ しかも、この子に関しては獣狼牙を倒したのか⁉」
Sランクハンターの新宮 誠司(あらみや せいじ)は、真面目でリアクションが薄い印象を受けたのだが、話を聞いてとても大きいリアクションを取った。
「はい! 俺が獣狼牙を倒しました!」
「私は狼牙をなん数十体倒しました!」
俺たちは、敬礼をしながら大きな声で答えた。
「二人、協会に一緒に来てくれ」
「「了解です!」」
「お、おお。ありがたい」
俺たちは、二つ返事をした。
なぜか、新宮さんの方がオドオドしている。
そして、俺たちは思考を再び働かせる。
「あれ、協会って一番偉いとこじゃ……」
「本当だ! まって、やばいじゃん!」
「それでは行こうか」
「「あ、は、はい」」
気が付いた時にはもう遅く、新宮さんたちは、早い足取りで協会へと向かって行く。
俺たちも慌てながら付いていく。
「やばっ、髭が生えてるよ」
「あ、さっきのスキル使ったら?」
「まさか、こんなとこで使えるとはな……」
俺はここ数日、忙しかったので髭がそれていなかった。
協会に行くので、無礼な姿を見せる訳にはいかない。
そんな時に、ついさっき覚醒して得たスキルを思い出した。
無能スキルだと思っていたのに、意外と早く使いどころがあった。
「スキル 【除毛】」
―ツルンッ!
「「イヤアァァァァァァ!!!!!!」」
俺たちは今、急いでダンジョンの外へと向かっている。
どうして急いでるかって?
そりゃあ……
―ゴゴゴゴォォォォ!!!
ダンジョンが崩れているからである。
足を止めた瞬間に死ぬということは、言わずもがなわかる。
「崩れるのめっちゃ早いじゃん! 急がないと!」
「獣狼牙を倒す方がまだ楽だぞ!」
ダンジョンは次々に崩れていき、俺たちを押しつぶそうとしていると錯覚するほどの早さで迫ってきている。
そして、今の俺はかなりヤバい問題を一つ抱えている。
「はぁ、はぁ、みんな、走るの早くないか?」
ステータスの能力最大値が上がって、みんなとの差は少ないはずなのに、俺だけ一人置いていかれているのだ。
しかも、疲れるのがとてつもなく早い。
「進、もっと急いで! 潰されるよ!」
「はぁ、はぁ、わかってるよ! これでも、全力なんだって。みんなと能力値は変わらないはずなのに……」
「何言ってるのよ。さっき覚醒したじゃない」
「あ……」
俺は、とんでもないことをしてしまったと後悔した。
確かに最大能力値は上がった。
しかし、覚醒してしまったので、今のレベルは『1』であり、能力値も全て『1』だ。
それはもちろん、みんなと同じスピードで走れるはずがない。
「やっべー! どうしよう! このまま潰れて死ぬの! 嫌だよぉぉぉ!!!」
俺は、パニックになり、騒ぐことしかできなくなった。
仕方がないよ、レベル1の俺が走っても追いつかれてしまうのだから。
「全く、仕方がないな!」
―ザッ、
「ゆ、優羽⁉」
「大人しく摑まってて」
「は、はい……」
俺は、恥ずかしいことに、好きな子にお姫様抱っこをされている。
能力値の高い優羽は、俺のことを軽々と持ち上げては、俺が走るよりも速いスピードで走っている。
俺は、照れながらお姫様抱っこをされていると……
―ボインッボインッ
「す、すげぇ……」
俺は、目の前で揺れる二つの大切な果実に目が釘付けになった。
これまでも、体育の授業などで見る機会はあったが、目の前で見るものは別格だ。
そして、不思議と落ち着いてきた。
「眼福だ……」
「おい、外に出た後、覚えとけよ」
「あ、終わった……」
俺が果実を見ていたことは、優羽にバレていたようだ。
死刑宣言された俺は自我を取り戻し、安らかな笑みを浮かべることしかできなかった。
「もうすぐで出口だ!」
「コロスコロスコロスコロスコロスコロス……」
出口の光が見えてきた。
優羽は可愛い顔を鬼の形相に変えて殺意をとうとう口にも出している。
これは、いつものようにはいかないだろうな。
「父さん、母さん、もうすぐでそちらに行くと思います」
ダンジョンから出る前に、俺は天にいる二人に挨拶をしておいた。
―キュゥゥゥゥ!
「何とか助かりましたね」
「ゆ、優羽様、アリガトウゴザイマシタ」
「どういたしまして。とてもいやらしい顔をしてましたね。何を見ていたのですか?」
今度の優羽は、天使のような優しい笑みで穏やかな口調で話している。
この話し方が一番怖いんだよ。
「そ、それは……」
「君たち、無事だったか!」
「あ、はい。大丈夫ですけど」
「た、助かった……」
突然、何者かに声を掛けられて、優羽はいつもの表情に戻り、俺はお姫様抱っこから解放された。
この人たちには、感謝してもしきれない。
「あ、あなたたちは……」
「悠斗、知ってるのか?」
「ハンターなら、誰もが知ってますよ! Sランクハンターですよ!」
「「え、Sランク⁉」」
―ビシッ!
俺と優羽は、話しかけている人がSランクハンターと知ると、速攻で姿勢を正して気を付けの姿勢を取った。
そうして、今までにしたことのないような素晴らしい挨拶をした。
どうやら、俺たちの思考は停止してしまったようだ。
「俺は、新人の見習いハンターです!」
「私も同じく見習いハンターです!」
「「よろしくお願いします!」」
「そんなに硬くなる必要はないぞ」
「「お気遣い、ありがとうございます!」」
「…………」
俺たちの異質すぎる態度にSランクハンターさんは困惑し、黙り込んでしまった。
―シュゥゥゥ
すると、出てきたゲートが閉じる音が背後からした。
「ゲートが消えていく⁉ もしかして、ダンジョンを攻略したのか⁉」
「はい。いろいろありまして……」
悠斗がこのダンジョンで起きたことを、丁寧に説明してくれた。
「この二人が狼牙を何十匹も倒した⁉ しかも、この子に関しては獣狼牙を倒したのか⁉」
Sランクハンターの新宮 誠司(あらみや せいじ)は、真面目でリアクションが薄い印象を受けたのだが、話を聞いてとても大きいリアクションを取った。
「はい! 俺が獣狼牙を倒しました!」
「私は狼牙をなん数十体倒しました!」
俺たちは、敬礼をしながら大きな声で答えた。
「二人、協会に一緒に来てくれ」
「「了解です!」」
「お、おお。ありがたい」
俺たちは、二つ返事をした。
なぜか、新宮さんの方がオドオドしている。
そして、俺たちは思考を再び働かせる。
「あれ、協会って一番偉いとこじゃ……」
「本当だ! まって、やばいじゃん!」
「それでは行こうか」
「「あ、は、はい」」
気が付いた時にはもう遅く、新宮さんたちは、早い足取りで協会へと向かって行く。
俺たちも慌てながら付いていく。
「やばっ、髭が生えてるよ」
「あ、さっきのスキル使ったら?」
「まさか、こんなとこで使えるとはな……」
俺はここ数日、忙しかったので髭がそれていなかった。
協会に行くので、無礼な姿を見せる訳にはいかない。
そんな時に、ついさっき覚醒して得たスキルを思い出した。
無能スキルだと思っていたのに、意外と早く使いどころがあった。
「スキル 【除毛】」
―ツルンッ!
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