底辺ハンターのリベンジダンジョン!~モンスターに全てを奪われたので、雑魚の俺が最強の役職『覚醒者』を駆使して復讐しようと思います~

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第十一話 不気味な王子様

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 ―ドガァァン!

「グハッ、」

 俺は、優羽ゆうに頭を叩かれ、そのまま地面に叩きつけられた。

「イテテテ」
「ごめん! あっ……」

 ―バタン

「どうしたんだ⁉ 大丈夫か?」
「うん。さっきので身体に負荷がかかり過ぎたみたい」

 優羽ゆうは、魔法を使った疲れでその場に倒れたようだ。

 ―ダッ、ダッ、ダッ

「何の音?」
「スライムじゃない。もしかして、スライム以外のモンスターがいるのか⁉」
「私たちはもう動けない! どうしよう!」
「まずいぞ……」

 立つことすら難しい二人の元に、謎の足音が近づいてくる。

 ―ギィー!

「あ、あれは!」

 俺たちの前に姿を現したのは、緑の小さな身体で、木の防具や武器を持った魔族のモンスターだ。

「「ゴブリン!」」
「どうしてここに⁉」

『ゴブリン』は、魔族であるのにも関わらず、スライムの次に弱いとされているモンスターだ。
 しかし、今の状況では、勝つための道が見えない。
 俺は、なぜスライムしかいないこのダンジョンにゴブリンがいるのか、理解ができなかった。

「……⁉ もしかして……」

 俺は、さらに最悪のことを知ってしまった。

 ―ダッ、ダッ、ダッ
 ―ダッ、ダッ、ダッ
 ―ダッ、ダッ、ダッ

「ゴブリンも、一体じゃねぇ!」
「嘘でしょ……」
「ここで、死ぬのか?」

 ゴブリンは、スライムとは違って、確実にダメージを与えてくる。
 いくら弱いとは言っても、複数体を相手にするとなると死を覚悟する。

 ―「「「ギィー!!!」」」

 ゴブリンが束になって、俺たちを襲いにかかる。
 そのゴブリンたちは、不気味な笑みを浮かべていた。

 ―ザッ!

「ししん⁉」

 俺は、意地で立ち上がり、優羽ゆうの前に立つ。

優羽ゆうだけは、絶対に守る!」

 優羽ゆうを守らなければならないと思うと、何処からか力が湧いてきたのだ。

 ―「「「ギィー!」」」

 ゴブリンが近づいてくる。

優羽ゆうが生きていれば、それでいい……」

 俺は、覚悟を決め、精一杯の力で目を瞑る。
 そして、優羽ゆうの無事を祈る。

しん!!!」

 ―シャキン!

 ―ペチャ

「なんか、液体が飛んできたぞ?」

 剣が何かを切る音と共に、俺の顔に液体が飛んできた。
 何が起きたのかを確認するために、ゆっくりと目を開ける。

 ―ギギ、ギュアァ……

「し、死んでる?」

 そこには、首を切断され、身体だけになっているゴブリンがいた。
 そして、目の前には、緑の血が付いた剣を持った愛人あいとが立っていた。

愛人あいと、ありがとう」
「……」
「……愛人あいと?」

 俺が何を言っても返事がない。
 そして、愛人あいとは何もせずにその場に立ち尽くしている。
 その顔は、笑っているように見える。
 すると、その顔に見合った笑い声が聞こえてきた。。

「ハ、ハハ、ハハハハ! 切るって楽しぃなぁ!」
「あ、愛人あいと君⁉」

 ―「「「ギィー!」」」

「全員、切ってやるよぉ!」

 ―シャキン! シャキン!

 ―ギギ、ギュアァ………
 ―ギュアァ!
 ―ギュアァ!

「す、すげぇ………」

 愛人あいとは、笑いながら次々にゴブリンを倒していく。
 その姿は、まるで殺人鬼のようだった。
 そして、

「これで最後だぁー!」

 ―ギィー!

 ―シャキン!

 ―ギュア、ギギ……

「一人で全部倒しやがった……」
「す、凄いわ……」
「ハハハ! 最高だぁ!」

 俺たちは、しばらくの間、愛人あいとを見ていた。
 変わり果てた愛人あいとに対して、何と声を掛けたらいいのかが分からないのだ。

「はっ、取り乱してしまっていた。二人とも大丈夫かい?」

 しばらくすると、いつもの様子に戻った。
 俺は、元に戻った愛人あいとを見て、安心する。
 正直、このまま戻らなかったらどうしようかと思っていた。

「ああ、大丈夫だ」
「私も。それで、このダンジョンはまだ先があるの?」
「いいや、これで全部だ。早く出よう」

 このダンジョンは、何か異変が起こり、ゴブリンが出てきたのだろう。
 終わった事なので、もう気にしないことにした。
 愛人あいとの豹変ことだが、戦いになると性格が変わってしまうらしい。
 これを見たら、女子たちはどんな反応をするだろうか。
 そうして俺たちは、入り口の元の世界に戻るためのゲートに着いた。

「それじゃあ戻ろうか」
「「うん」」

 ―キュゥゥゥゥ!

 目の前が光り、視界が真っ白になる。

 ―ドガァァン!!!

「キャー!」
「逃げろー!」

 元の世界に戻ったはずだが、何か騒がしい。
 ゆっくりと目を開けると、目の前には月と共に恐ろしい景色が広がっていた。

 ―ギィー!
 ―グワァー!

「な、なんでモンスターがこの世界に……」
「何が起こったんだ⁉」

 そこには、モンスターが人間を襲っている様子が見られた。
 何が起こっているのか、思考が追いつかない。

「あいつだ。あいつが指揮している」
「なんだと⁉」

 上空に一つの大きなゲートがあり、そこからモンスターが出てきている。
 その前で指揮を執っているモンスターがいた。

「ん? この青年、違和感を感じる……」

 指揮を執っているとされるモンスターが、俺を見ながら不思議そうな顔をしている。

「面白い。こいつは生かしておこう」
「な、何を言ってんだよ!」
「フフフ。近い将来が楽しみだ」

 そいつは一人で話しながら笑っていた。

しん、家は大丈夫なの⁉」
「まずいぞ! 早く行くぞ!」

 優羽ゆうに言われ、モンスターのことを考えるのを止めて、家族のことを考える。

愛人あいと、これからよろしくな!」
「ああ、次に会うことがあればね……」

 俺は、愛人あいとに挨拶をすると優羽ゆうと共に家へと急ぐ。
 愛人あいとが返事をしたようだが、もう既にかなりの距離があったので聞こえなかった。

「みんな、大丈夫だよね?」
「大丈夫、俺が助ける!」

「頼む! みんな、無事でいてくれ!」

 そう願いながら、俺たちは全力で走っていく。
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