想い想われ恋い焦がれ

周乃 太葉

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3.出発

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ー3ヶ月後ー

ヘレナのもとに、手紙が届いた。
商業街にいる遠縁の親戚からだった。

手紙には
“ようやく君を見つけた。大叔母の法事と、遺品で渡すものがあるから一度商業街に来るように。歓迎しよう”
とあった。

「ようやくこの時が来たのね!」

ヘレナは部屋の中で1人小躍りで喜んだ。

ヘレナは昔から都会の男で玉の輿に乗ると公言していた。
ヘレナは生まれも育ちもこの村だったが、商業街に親戚がいることを知っていた。両親の出身も商業街だった。だからヘレナは両親が商業街を出て、こんな田舎に来た理由がわからなかった。私の居場所はこんな田舎じゃない、商業街のような大都市だと、小さい頃から信じて疑わなかった。

実のところ、ヘレナの両親はその欲深い親族の男から財産を狙われ、さらに横恋慕されたので、商業街を出たのだった。だが、両親はそのことをヘレナに告げることなく事故で旅立ってしまったのだった。

真相を知らないヘレナは都会に行けると浮かれたままその遠縁の親族に了承の手紙を送ったのだった。


ー翌日ー

「イーサン、私、3日後商業街に行くことになったから駅まで荷物運んで」

「3日後?」

「列車のチケットの関係で仕方なくね。ホントなら明日にでもいきたいけど」

「へぇ」

「しばらく帰ってこないから私のこと恋しくなっちゃったらごめんね。でも、残念ね。私には都会でお金持ちの男が待っているの」

「そう」

「きっといろんな人がたくさん私に惚れちゃうからイーサンとの婚約もここまでかしら」

「うん」

「玉の輿しちゃうかも~」

「私こんなに可愛いんだもん」

「はぁ~何着ていこう」

「どんなひとが待ってるかしら」

「楽しみ~」

ヘレナはイーサンの気のない返事にも気付かず、一方的に話して帰って行った。

「嵐のようだったな…」

ヘレナが去った後、イーサンはポソッと言った。


ー3日後ー

イーサンは言われた通りヘレナの荷物を駅まで運んでいた。

「あれ?ヘレナ、今日は随分とオシャレしてるね」

「当たり前でしょう。今からどこ行くと思ってるのよ」

ヘレナは呆れたようにイーサンを見た。そして、

「あっ、そーだ。イーサン、私商業街に行ったらきっとすぐ恋人できちゃうと思うんだ。だから婚約はナシでね。ゴメンね。せっかく私と婚約できて天にも登る気持ちだったんだろうけど、現実に戻って。期待させちゃってごめんね」

「はぇ?」

ヘレナが自分に酔って見当違いなことを言うので、イーサンは、思わず変な声が出た。

「あっ、汽車が来た。じゃあね、イーサン。私と婚約できて良かったね!楽しかったよ!バイバイ!」

ヘレナはそう言うやいなや汽車に飛び乗って行ってしまった。

残されたイーサンは、

「…嵐のようだったな」

と呟いた。
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