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2.まるで従者
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ヘレナは小柄で可愛らしい外見だったが、それを台無しにする程のワガママっぷりで有名だった。
「イーサン、何やってんのよ。今日は買い物行くから付き合ってって言ってあったでしょ?」
「おはよう。ヘレナ。あれ?昨日一人で行くって…」
「何いってんのよ。私が一人で買い物なんてありえない。荷物どうするのよ」
「えー」
「早くしてよー。このケーキの新作食べたいんだから」
と、ヘレナは雑誌を見せてきた。
「俺、今日は…」
「なぁに?早く行くよ。今日絶対食べたいんだから」
「はぁ~。わかったわかった」
聞く耳を持たないヘレナにイーサンは予定を諦めた。
そして、ヘレナに急かされながら街での買い物に荷物持ちとして付き添った。
雑誌に載っていたケーキ屋は新作が出たばっかりで行列が出来ていた。
「並ぶのヤだ。イーサン並んでて」
「はいはい」
他の店を回って時間を潰したヘレナがあと一組というところで戻ってきた。
そして、ヘレナの目の前で目当てのケーキが
売り切れた。
「えーありえない!なんでー。やだやだぁ。絶対食べたいのに!イーサンのバカ!」
「えぇ俺?」
「イーサンが根回ししなかったからでしょ」
「いやいやいや…」
「もういい!」
ヘレナは怒って店を出ていってしまった。
その時、店の奥から顔見知りのパティシエのピーターがイーサンに来い来いとジェスチャーをしてこっそりと呼び寄せた。
「ほれ、コレ」
「え?いいのか?」
「ちょっと形が悪いんだけど、味は同じだよ」
「悪いな」
「お前が不憫すぎるからな…」
「そーかぁ?」
ピーターはイーサンの肩にポンと手を置いて、首を振り
「俺はあのワガママ、一回で無理だった」
と告げた。
その後、ヘレナは、イーサンが譲ってもらったという目当てのケーキを食べ、機嫌を直した。
そして、服屋に着くと、
「私、じっくりみたいからどっかで待ってて」
「はいはい」
追い出されたイーサンは大人しく荷物と一緒に店の外に置いてあるベンチで待つことにした。
すると、通りかかっ親戚のおばちゃんが話しかけてきた。
「おや?イーサン、また我儘娘に付き合っているのかい?」
「女王様の機嫌を損ねると面倒だからね」
「あんたもとんだ災難に巻き込まれて大変だねぇ。適当にあしらえばいいのに、あんたが丁寧にあの娘に付き合っている理由がわからんよ」
「まぁ、退屈しないからね」
「今どきはそんな感じなのかね?私のときは、そんなんに構っている時間なんかなくて、恋をする、いや、恋に落ちたら燃え上がるように…」
長い話が始まりそうな予感にイーサンはヤバっって顔をしてあたりをキョロキョロ見回した。
「あっ!お、おばちゃん、あっちで呼んでるのおじちゃんじゃない?」
おばちゃんは「ん?」とイーサンが指差す方を見た。
「おやまぁ、お父さん待たせているの忘れていたよ」
「ほら、早く行ったほうがいいんじゃない?」
「まったく。仕方ないね。続きはまた今度だね。じゃあね、イーサン」
おばちゃんは無事に去っていった。
イーサンはおばちゃんに手を振りながら
「危なかった…」
と呟いた。その時ふいに声がした。
「何が危ないのよ?」
「うわっ!」
いつの間にかイーサンの背後にヘレナがいた。
「も、もう終わったの?」
「えぇ。はい」
ヘレナは当たり前のように買ったものをイーサンに渡した。
「お腹すいた。どっか食べに行こ」
…さっきケーキ食べたよな?
イーサンは無駄口を叩かず、
「わかったよ」
と一言だけ言った。
その日の夕飯はヘレナ好みの最近オープンしたオシャレな店に連れて行かれた。
立派なコース料理だったが、食事中はヘレナの自慢話を聞いて、ヨイショしてと、忙しなくてイーサンは全然食べた気がしなかった。が、財布はすっからかんになった。
「はぁ…明日から節約だな…」
「イーサン、何やってんのよ。今日は買い物行くから付き合ってって言ってあったでしょ?」
「おはよう。ヘレナ。あれ?昨日一人で行くって…」
「何いってんのよ。私が一人で買い物なんてありえない。荷物どうするのよ」
「えー」
「早くしてよー。このケーキの新作食べたいんだから」
と、ヘレナは雑誌を見せてきた。
「俺、今日は…」
「なぁに?早く行くよ。今日絶対食べたいんだから」
「はぁ~。わかったわかった」
聞く耳を持たないヘレナにイーサンは予定を諦めた。
そして、ヘレナに急かされながら街での買い物に荷物持ちとして付き添った。
雑誌に載っていたケーキ屋は新作が出たばっかりで行列が出来ていた。
「並ぶのヤだ。イーサン並んでて」
「はいはい」
他の店を回って時間を潰したヘレナがあと一組というところで戻ってきた。
そして、ヘレナの目の前で目当てのケーキが
売り切れた。
「えーありえない!なんでー。やだやだぁ。絶対食べたいのに!イーサンのバカ!」
「えぇ俺?」
「イーサンが根回ししなかったからでしょ」
「いやいやいや…」
「もういい!」
ヘレナは怒って店を出ていってしまった。
その時、店の奥から顔見知りのパティシエのピーターがイーサンに来い来いとジェスチャーをしてこっそりと呼び寄せた。
「ほれ、コレ」
「え?いいのか?」
「ちょっと形が悪いんだけど、味は同じだよ」
「悪いな」
「お前が不憫すぎるからな…」
「そーかぁ?」
ピーターはイーサンの肩にポンと手を置いて、首を振り
「俺はあのワガママ、一回で無理だった」
と告げた。
その後、ヘレナは、イーサンが譲ってもらったという目当てのケーキを食べ、機嫌を直した。
そして、服屋に着くと、
「私、じっくりみたいからどっかで待ってて」
「はいはい」
追い出されたイーサンは大人しく荷物と一緒に店の外に置いてあるベンチで待つことにした。
すると、通りかかっ親戚のおばちゃんが話しかけてきた。
「おや?イーサン、また我儘娘に付き合っているのかい?」
「女王様の機嫌を損ねると面倒だからね」
「あんたもとんだ災難に巻き込まれて大変だねぇ。適当にあしらえばいいのに、あんたが丁寧にあの娘に付き合っている理由がわからんよ」
「まぁ、退屈しないからね」
「今どきはそんな感じなのかね?私のときは、そんなんに構っている時間なんかなくて、恋をする、いや、恋に落ちたら燃え上がるように…」
長い話が始まりそうな予感にイーサンはヤバっって顔をしてあたりをキョロキョロ見回した。
「あっ!お、おばちゃん、あっちで呼んでるのおじちゃんじゃない?」
おばちゃんは「ん?」とイーサンが指差す方を見た。
「おやまぁ、お父さん待たせているの忘れていたよ」
「ほら、早く行ったほうがいいんじゃない?」
「まったく。仕方ないね。続きはまた今度だね。じゃあね、イーサン」
おばちゃんは無事に去っていった。
イーサンはおばちゃんに手を振りながら
「危なかった…」
と呟いた。その時ふいに声がした。
「何が危ないのよ?」
「うわっ!」
いつの間にかイーサンの背後にヘレナがいた。
「も、もう終わったの?」
「えぇ。はい」
ヘレナは当たり前のように買ったものをイーサンに渡した。
「お腹すいた。どっか食べに行こ」
…さっきケーキ食べたよな?
イーサンは無駄口を叩かず、
「わかったよ」
と一言だけ言った。
その日の夕飯はヘレナ好みの最近オープンしたオシャレな店に連れて行かれた。
立派なコース料理だったが、食事中はヘレナの自慢話を聞いて、ヨイショしてと、忙しなくてイーサンは全然食べた気がしなかった。が、財布はすっからかんになった。
「はぁ…明日から節約だな…」
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