幸福は君の為に

周乃 太葉

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24/頼れるものは幼馴染

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「まっ、うまくいこうがいくまいがどっちにしろそろそろハッキリさせたほうがいいだろうしな」

と、ユーリはパトリスの応援をすることにし、オリビアに依頼を届けた。

あいつもいいヤツではあるんだろうけど、ユーリは付き合いの長い幼馴染の幸せを願うことにした。

オリビアは依頼を届けたとき、僅かながら動揺したようだった。オリビアは何事もなかったかのように依頼を請け負ったが、打ち合わせは難色を示した。

「ユーリが代わりに依頼内容聞いてくる…って無理よね…」

「そりゃぁな。魔導具のことは俺じゃわからんよ」

オリビアは答えがわかっていて聞いたので、ガッカリした様子はなかったが、ユーリにならばせめて同席してほしいと懇願した。

「まぁ…それなら」

ユーリはガッカリした顔のパトリスを思い浮かべたが、目の前の必死な形相のオリビアを見捨てることはできなかった。

「それにしても、なんでそんなにあいつのこと嫌がるんだ?なにかされた?」

ユーリは不自然なほどパトリスを避けるオリビアに疑問を投げかけた。

オリビアは気まずそうに目を逸らし、ボソボソと言い訳を始めた。

「ん~。実はね…あの人、パトリス?のこと、あんまり覚えていないんだよね…。いや、わかってるよ?事故起こしたとき一緒にいたんだって。だから昔はそのくらい仲良かったんだろうなぁって。でも…ほら、私、事故の後遺症で記憶ブツブツ途切れてるじゃない?だから…首の石見るまで全然わからなくて…

なのに、あっちはものすごく覚えていてさ。それになんか有名人だし。正直、グイグイ来られて怖いんだよ。あんなキラキラされても困るんだよ。ねぇ、ユーリ、なんとなく言わんとしてることわかるでしょ?」

オリビアは涙目になりながらユーリの服を掴んでガグガクと揺らした。

(あぁ…そういえばそうか)

ユーリはオリビアの症状を診ているので後遺症のことよく知っている。パトリス側からみていてそのことが頭から抜け落ちていた。

昔、オリビアはパトリスと一緒のときに試作品の魔導具て事故を起こした。
パトリスは頸窩けいかに埋め込まれた魔石に魔力の一部が吸い取られ、歌を歌うことが出来なくなった。
そして、オリビアは記憶と感情の一部が吸い取られた。そのせいでオリビアはパトリスの記憶が曖昧なのだ。

オリビアが恋愛できないのもそのせいだとユーリは思っている。オリビアは感情の起伏が少ない。良くいえばいつも穏やかだ。オリビアが激しい感情を露わにしたところをみたことがない。きっとそれは石に封印されたのだろう。でなければヴィムじーさんとやっていけないだろう…

と、ユーリがぼんやりと思案に耽っていると、オリビアが心配そうに覗き込んできた。

「ユーリ?やっぱり無理そう?」

「いや、大丈夫。打ち合わせのときは俺も一緒に行くよ。パトリスのほうが忙しいからあいつに合わせちゃっていいか?」

オリビアはパァッと顔が明るくなり、安心したようにうんとユーリに任せてきた。

ユーリはオリビアの家を後にし、パトリスにどう説明するか考えを巡らせた。
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