幸福は君の為に

周乃 太葉

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20/偶然の再会

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イーサンが席を立ち、居なくなったことを確認したジュリが気になっていたことをオリビアに聞いてきた。

「ねぇねぇ、オリビアちゃん。あなた昔何か事故とかあった?」

「え?」

「ん~医者の勘なんだけど、オリビアちゃんから感じる魔力が歪なんだよね…。治療とかした?」

ジュリがオリビアの魔力を探るようにジーッとオリビアの全身を診た。

「い、いえ。確かに見習い時代に事故にあいましたけど、それから今まで健康や仕事には問題なかったですし、特には…」

「そうなんだね~。うーん…ちょっと手を出して」

そう言って、ジュリはオリビアの手を握って魔力を流した。

「あ、あぁ、なるほど…これは複雑な…あ、だから…」

ジュリは何やら独り言をブツブツ呟いた。そして、

「ありがとう。うん、複雑だけど、命や健康に問題なさそうね。症状知りたい?」

「ん~別に大丈夫かな。健康に問題ないなら。今までなんともなかったし…正直怖いかな」

オリビアはドキッとしたが、実は事故のときの記憶が曖昧なので、思い出す必要性を感じなかった。

「ふふ、そうだよね。でも、悪いことじゃないから安心して。もし、知りたいならカーラさんだっけ?その人が答えられると思う。うん。私より詳しく答えられるんじゃないかな?」

「え?なんでカーラさん???」

「それは…」

意外な人物の名前が上がってオリビアが訝しんだ。ジュリがオリビアの質問に答えようとした時、ジュリの声を遮って背後から驚きの声を上げた人物がいた。

「え!えっ!?オリビア!?なんで…ここに…??」

帽子とサングラスをしている怪しい男がそこにいた。
オリビアはいきなりのことと、その男に心当たりがなくて軽くパニックになった。

「え?え?…誰?」

「あ、いや、あ、まぁ、そう…だよな…」

声をかけてきた男はオリビアの様子から驚きの表情から一瞬でしょぼくれた表情になった。

「あー…えーっと、俺、パトリス」

「え?」

オリビアは聞き覚えのある予想外の名前に眉を顰めた。

「いや、本当」

「は?」

オリビアは不快な表情を変えず、さらに怪しんだ。
すると男が困った表情をして喉に手を当てて何か閃いた。

「昔と随分見た目変わっちゃったからわからないか…。あ、そうだ」

パトリスは喉を見せた。
一見しただけではわからないように隠してあるが、よく見ると頸窩けいかに透明な石が埋め込まれている。

オリビアは限界まで目を見開いた。
それは、過去、忘れもしない事故の痕跡だった。

「え?それ…、本当にパトリスなの?」

怪しい男、パトリスがパァッと表情を明るくしてニコニコした。

「そうだよ。思い出してくれた?」

オリビアはもう会うことのないと思っていた人物の登場に内心冷や汗をかいた。

「う、うん…」

パトリスがオリビアにさらに言い寄るのをイーサンののんびりした声が遮った。

「あれ~?知り合いだったの?」

「イーサン、こちらどなた?」

じっとパトリスとオリビアの様子を見ていたジュリがパトリスと知り合いのような素振りを見せるイーサンに尋ねた。
イーサンはパトリスの肩を組み、ジュリとオリビアに紹介した。

「あぁ、この店を紹介してくれたパトリスくんだよ。今度の舞台の主演してくれるの」

「えぇ!?あなたがオ…」

ジュリが驚き、ガタッと椅子から立ち上がり大声で叫びそうになる前にイーサンが手で口を塞いて首を振った。

「ジュリ、だめだよ」

「あ…ごめん」

イーサンに口を押さえられたままジュリは椅子に座り直し、謝った。

「あ、大丈夫です。イーサンさんとさっきばったり会って…あ、あの!なんでオリビアがここに?」

「オリビアちゃんは俺の大切な人だからね」

!!!

パトリスはものすごく驚いた顔をしてイーサンの方を振り向いた。

「ぷぷっ、ごめんごめん。そういう意味じゃない。ぷぷぷ」

「イーサン、からかったらダメよ。ゴホン、はじめまして、私はジュリ。そこのイーサンの婚約者よ」

「あ、はじめまして。パトリスです。イーサンさんにはお世話になってます」

「で、結局君はオリビアちゃんの何?」

「お…」

パトリスが言うより先にオリビアが答えた。

「昔の知り合いです。子供の頃、一時良く遊んでいたんですけど、その後彼は引っ越してしまったのでそれ以来会っていません。パトリス、お久しぶりです」

「あ‥あぁ…久しぶり。オリビア」

オリビアのキッパリとした返答にパトリスは肩を落とした。

ジュリはそんなパトリスとオリビアを見比べ、ニヤッとした。

「なるほどね…」

と、その時、

「パトリス?あー、ここにいたの?」

パトリスを呼ぶ女性の声がした。

「もう、勝手にどっか行っちゃわないでよ」

パトリスを探しにディアナが現れた。

「あ、いや、ディアナ、タイミング悪…」

「はぁ?あら、パトリスのお知り合いですか?」

イーサンはニコッと微笑み、

「僕はパトリス君と友達なんだ。こちらは僕の婚約者、隣にいるのは、僕らの大切な友人だよ」

「はじめまして。私はパトリスの親友の妹です」

ジュリが予想と違ったって顔をして思わず口をついた。

「え?彼女じゃないの?」

「ジュリ」

イーサンがジュリを窘め、ジュリがまた凹んだ。

「あ…またやっちゃった…不躾でごめんなさい」

ディアナはまるで気にしない素振りで笑い飛ばした。

「いえいえ~。パトリスは私の理想とは違うんでありえないです。今日は兄のストーカー問題の作戦会議で集まっただけなんで」

ディアナがそう言うと、パトリスがハッとオリビアの腕を掴んだ。

「そうだよ。オリビア、違うから!」

オリビアは腕を掴まれ、おどろいたが、ピンと来ていない様子で

「パトリス?そんなに慌ててどうしたの?何が違うの?人待たせたらダメだよ。もう戻った方がいいんじゃない?」

オリビアがなんともつれないからパトリスはガックリした。

「あ、う…うん…オリビア、また会えるかな?」

「それはわからないよ。でもまた何年後かにバッタリ会うかもね」

「そ…そんな先…」

「ん?だって、今回だって子供の時以来じゃない。ふふ」

「あ、でも、久しぶりに再会出来たんだから今度はゆっくり会いたいな」

「ん~。そう?私は特に話とかないけど…」

何を言っても躱すオリビアにパトリスは奥の手を使った。

「俺、今度ユーリと会うんだけど、そのときオリビアも一緒にどうかな?」

「ユーリ?連絡取り合っているんだね。うん、ユーリと一緒ならいいかな」

「え…本当?」

「うん、パトリスとは久しぶりすぎて緊張しちゃうけど、ユーリとは毎日一緒にいるし、緊張解れるかなって」

「う‥うん。すぐに連絡するから!」

パトリスはオリビアの手をギュッと握って名残惜しそうに席に戻っていった。
その横でイーサンとジュリがヒソヒソと話している。

「彼、隠す気無しでダダ漏れね…」

「相当拗らせているからね…。まさかこないだの話の幼馴染がオリビアちゃんだったなんて。なんて偶然。それにしてもオリビアちゃん脈なさすぎなきもするけど…」

「あぁ、それね、実は…」
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