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14/未来診断
しおりを挟む『太陽と月』の舞台の本番が近づいて来たある日
今日もまた稽古場でパトリスはレベッカと談笑していた。
「それでさ、俺の友だちが最近ストーカーにあっているってんだって言うんだよ」
「あら…それは大変ね」
「ところがさ、商店街を通るときだけらしいんだよ」
「何が?」
「視線?気配?を感じるのが。まあ、途中で撒いちゃうからなのかもしれないけど、商店街に行かない日はそういうの感じたことないんだって」
レベッカが首を傾げて、不思議そうな顔をした。
「あら、じゃぁ、商店街の誰かってことかしら?」
「俺はそうだと思うんだけど、友だちはそのストーカーは俺の熱狂的なファンだと思っているんだよね」
「んん?どうしてそうなるの?」
レベッカは意外な方向へ話が飛んだから目をパチクリさせた。
「友だち曰く、俺と会っているのをどっかから情報を入手して、俺へたどり着くために友だちを付け狙っているっていうんだよね。おもしろいよね」
「そう…残念なお友達ね。少し話を聞いただけの私でもそのお友だちが狙われてるってわかるのに。あ、私がそのお友だちのこと視てあげようか?」
「え?」
「あら?前に共演した時に話したでしょ?私、予知ができるって」
「あぁ、そんなこと話したなぁ」
パトリスは思い出した。レベッカは予知、(厳密には違うらしいが…)その人の少し先の未来の方向性が視えるらしいのだ。以前共演したときにこっそり教えてもらったのだ。
「面白そうだから視てあげる。君を見ればそのお友達のことも視えるから」
「そうなの?」
レベッカはパトリスの方を向いて座り直し、手を出した。
「はい、じゃあ、手をだして」
パトリスはレベッカに手を差し出した。
レベッカはパトリスの手を握り、目をじっと視た。
パトリスもレベッカの目を見つめ返し、ほんの数十秒
「わかったわ。ありがとう」
「え?もう?」
「ふふふ、結果だけど、君のお友達、やっぱり残念だわ。彼が感じている視線は彼に向けられているもので合ってるわよ。でも、お友だちもあながち見当違いってわけでもなかったわ。パトリス、貴方の熱狂的ファンが貴方のこと狙っているのも事実よ。要は、ストーカーは2人いるわ」
「なるほど…。って、俺もヤバいの?」
「そうね。お友だちのほうはまだかわいい片思いだから手を打てるけど、貴方の熱狂的ファンの方はヤバいわ。私にすら嫉妬の炎をメラメラと燃やしているわ」
レベッカはいつぞやに演じた火の精霊の真似をした。
それを見たパトリスはうへぇとげんなりした。
「でも、大丈夫。幸運の女神が近々現れるわ。貴方にとってとても大事な人。でも、その代償として貴方の秘めた想いは暴かれると出ているわ。ご愁傷さまね」
「えぇぇぇぇ…」
パトリスはさらに釈然としない気持ちになった。
「まぁ。当たるも八卦当たらぬも八卦ってね。どうなるかは結局あなた次第よ」
パトリスの顔を見てレベッカは苦笑した。
「さあ、そろそろ出番よ。いきましょう」
「はぁ…」
「はぁじゃない!返事はハキハキ元気よく」
「はい…!」
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