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9/少女との出会い
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中央都市にて
タタタタタ…
ヤバっ見つかった。
パトリスは久々の休日だった。
パトリスは最近中央都市で活躍し始めた役者だった。
オトビス・アングラードと名乗り舞台に出ていた。
まだまだ新人だったが、先日出た舞台の役が当たり、人気が急上昇しており、色々な役をもらえるようになりはじめたところだった。
なので、パトリスは忙しい日々を送っていたが、基本的にワーカーホリックなので、休みはなくても気にしないタイプだった。だが、今日は舞台関係者全員に休みが必要だ!という主宰の思いつきで急遽決まった休みだった。
急だったので、いつも付き合ってもらっているテオの予定が合わず、パトリスは家でゴロゴロしていた。だが、昼になり、家に食べるものがなかったので、仕方なく買い物に出たのだった。
レストランで食べても良かったのだが、久しぶりに自分で作ってみようかと思い、パトリスは生鮮食料品店に行こうと思った。
パトリスが生鮮食料品店の入口付近に着いたとき、さて、何を買おうかと考えながら歩いていた。
すると、うっかり人にぶつかってしまった。
「あ、すみません。お怪我はありませんか?」
「え、あ、はい、だいじょ…う……!!?」
ぶつかった女性はパトリスの顔を見ると目を見開いて「あ…あ…」と驚きの声を漏らした。
あ、やば…
パトリスは一瞬で正体がバレたことに気付き、「失礼」と生鮮食料品店から立ち去った。
其の様子を訝しげに見ていた別の客が、
「きゃー!!!オトビス!?オトビス・アングラードよ~~~~!!」
「うそー!」
「どこどこ!?」
「なんでこんなとこに??」
「ちょっとまって!握手して~」
「サイン欲しい~」
「触りたい!!」
と次々騒ぎ始め、逃げたパトリスを追いかけてきた。
パトリスは背後をチラっと見て、追いかけてくる集団の殺気に慄いた。
ヤバい…アレは…捕まったらヤバい…
久々に貞操の危険を感じる…
本気でダッシュし、路地を右に左に曲がり、どうにか追いかけてくる集団を撒いた。
はぁはぁ…はぁはぁ…ふぅ~
パトリスが壁に寄りかかり、息を整えていると、
ガコンッ
何かが落ちる音がした。
その音にギクッと驚いたパトリスが恐る恐る振り向くと、少女がいた。
「あの…大丈夫ですか?これ、飲みますか?」
少女は落とした荷物を拾い、パトリスに水を差し出した。パトリスは受け取るのを躊躇った。
「あの、まだ、開けていないので、安心してください」
パトリスは少女が震えていることに気付き、少女に他意はないと察した。
「あ、ありがとう。もらうね」
と言って、水を受け取り、ゴクゴクと一気に飲んだ。
少女がビクビクと怯えながらパトリスに尋ねた。
「あの、どうしたんですか?」
「ん?いや、ちょっとおいかけっこをね」
「そう…なんですか。あの、まだ大通りには出ないほうがいいと思います」
パトリスはピクッと眉を上げ、笑顔を取り繕った。
「ん?あ、そう…さっきの見てた?」
「いえ…私、いつも路地の入り口の店でこれ売っているので…」
パトリスの目が笑っていないのでさらに怯えながら
少女は荷物の中から本を取り出した。
「あぁ、君は角の本屋さんのとこの子かぁ。俺もよくお世話になっているよ」
パトリスは行きつけ店の子だとわかり、警戒を解いた。すると、少女は不思議そうに目をパチパチさせてパトリスを見た。
「本、読まれるんですか?」
「読む読む。昔から読書好きなんだ。演じる上で参考にもなるし」
「演じる…。役者さんですか?」
「そう、舞台メインだけど、たまに新聞や雑誌にも載るよ」
「そう…なんですね」
少女は不思議そうに本とパトリスを見比べた。
パトリスは少女の新鮮な反応にいいこと閃いたと手をポンと叩いた。
「あ!そうだ、君、今ひま?時間ある?」
「え?」
「大通りが落ち着くまで、俺の練習に付き合ってよ」
「え、あ…」
「よし、決まり!」
パトリスは少女の返事も聞かず、手を引っ張って奥まった場所にあって秘密基地みたいな小さな公園に行って、今度出演する舞台の話を少女に聞かせた。
パトリスが少女に一人演劇で見せた話は最近少女が読み始めた話題の冒険譚だった。
『少年がカミサマに呼ばれ、国をどんどん開拓していく話』
少女は、少女の年では本を読むとまだちょっと難しく感じる物語がこんなに面白く愉快な話だったのかと少女は目をキラキラさせ、心を踊らせ、夢中になって見入っていた。
パトリスと少女はその日、日が暮れるまで劇を続けた。
別れ際パトリスは少女にまたいつかこの続きをすると約束をし別れた。
その日、少女は一日夢心地だった。
タタタタタ…
ヤバっ見つかった。
パトリスは久々の休日だった。
パトリスは最近中央都市で活躍し始めた役者だった。
オトビス・アングラードと名乗り舞台に出ていた。
まだまだ新人だったが、先日出た舞台の役が当たり、人気が急上昇しており、色々な役をもらえるようになりはじめたところだった。
なので、パトリスは忙しい日々を送っていたが、基本的にワーカーホリックなので、休みはなくても気にしないタイプだった。だが、今日は舞台関係者全員に休みが必要だ!という主宰の思いつきで急遽決まった休みだった。
急だったので、いつも付き合ってもらっているテオの予定が合わず、パトリスは家でゴロゴロしていた。だが、昼になり、家に食べるものがなかったので、仕方なく買い物に出たのだった。
レストランで食べても良かったのだが、久しぶりに自分で作ってみようかと思い、パトリスは生鮮食料品店に行こうと思った。
パトリスが生鮮食料品店の入口付近に着いたとき、さて、何を買おうかと考えながら歩いていた。
すると、うっかり人にぶつかってしまった。
「あ、すみません。お怪我はありませんか?」
「え、あ、はい、だいじょ…う……!!?」
ぶつかった女性はパトリスの顔を見ると目を見開いて「あ…あ…」と驚きの声を漏らした。
あ、やば…
パトリスは一瞬で正体がバレたことに気付き、「失礼」と生鮮食料品店から立ち去った。
其の様子を訝しげに見ていた別の客が、
「きゃー!!!オトビス!?オトビス・アングラードよ~~~~!!」
「うそー!」
「どこどこ!?」
「なんでこんなとこに??」
「ちょっとまって!握手して~」
「サイン欲しい~」
「触りたい!!」
と次々騒ぎ始め、逃げたパトリスを追いかけてきた。
パトリスは背後をチラっと見て、追いかけてくる集団の殺気に慄いた。
ヤバい…アレは…捕まったらヤバい…
久々に貞操の危険を感じる…
本気でダッシュし、路地を右に左に曲がり、どうにか追いかけてくる集団を撒いた。
はぁはぁ…はぁはぁ…ふぅ~
パトリスが壁に寄りかかり、息を整えていると、
ガコンッ
何かが落ちる音がした。
その音にギクッと驚いたパトリスが恐る恐る振り向くと、少女がいた。
「あの…大丈夫ですか?これ、飲みますか?」
少女は落とした荷物を拾い、パトリスに水を差し出した。パトリスは受け取るのを躊躇った。
「あの、まだ、開けていないので、安心してください」
パトリスは少女が震えていることに気付き、少女に他意はないと察した。
「あ、ありがとう。もらうね」
と言って、水を受け取り、ゴクゴクと一気に飲んだ。
少女がビクビクと怯えながらパトリスに尋ねた。
「あの、どうしたんですか?」
「ん?いや、ちょっとおいかけっこをね」
「そう…なんですか。あの、まだ大通りには出ないほうがいいと思います」
パトリスはピクッと眉を上げ、笑顔を取り繕った。
「ん?あ、そう…さっきの見てた?」
「いえ…私、いつも路地の入り口の店でこれ売っているので…」
パトリスの目が笑っていないのでさらに怯えながら
少女は荷物の中から本を取り出した。
「あぁ、君は角の本屋さんのとこの子かぁ。俺もよくお世話になっているよ」
パトリスは行きつけ店の子だとわかり、警戒を解いた。すると、少女は不思議そうに目をパチパチさせてパトリスを見た。
「本、読まれるんですか?」
「読む読む。昔から読書好きなんだ。演じる上で参考にもなるし」
「演じる…。役者さんですか?」
「そう、舞台メインだけど、たまに新聞や雑誌にも載るよ」
「そう…なんですね」
少女は不思議そうに本とパトリスを見比べた。
パトリスは少女の新鮮な反応にいいこと閃いたと手をポンと叩いた。
「あ!そうだ、君、今ひま?時間ある?」
「え?」
「大通りが落ち着くまで、俺の練習に付き合ってよ」
「え、あ…」
「よし、決まり!」
パトリスは少女の返事も聞かず、手を引っ張って奥まった場所にあって秘密基地みたいな小さな公園に行って、今度出演する舞台の話を少女に聞かせた。
パトリスが少女に一人演劇で見せた話は最近少女が読み始めた話題の冒険譚だった。
『少年がカミサマに呼ばれ、国をどんどん開拓していく話』
少女は、少女の年では本を読むとまだちょっと難しく感じる物語がこんなに面白く愉快な話だったのかと少女は目をキラキラさせ、心を踊らせ、夢中になって見入っていた。
パトリスと少女はその日、日が暮れるまで劇を続けた。
別れ際パトリスは少女にまたいつかこの続きをすると約束をし別れた。
その日、少女は一日夢心地だった。
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