11 / 26
9/少女との出会い
しおりを挟む
中央都市にて
タタタタタ…
ヤバっ見つかった。
パトリスは久々の休日だった。
パトリスは最近中央都市で活躍し始めた役者だった。
オトビス・アングラードと名乗り舞台に出ていた。
まだまだ新人だったが、先日出た舞台の役が当たり、人気が急上昇しており、色々な役をもらえるようになりはじめたところだった。
なので、パトリスは忙しい日々を送っていたが、基本的にワーカーホリックなので、休みはなくても気にしないタイプだった。だが、今日は舞台関係者全員に休みが必要だ!という主宰の思いつきで急遽決まった休みだった。
急だったので、いつも付き合ってもらっているテオの予定が合わず、パトリスは家でゴロゴロしていた。だが、昼になり、家に食べるものがなかったので、仕方なく買い物に出たのだった。
レストランで食べても良かったのだが、久しぶりに自分で作ってみようかと思い、パトリスは生鮮食料品店に行こうと思った。
パトリスが生鮮食料品店の入口付近に着いたとき、さて、何を買おうかと考えながら歩いていた。
すると、うっかり人にぶつかってしまった。
「あ、すみません。お怪我はありませんか?」
「え、あ、はい、だいじょ…う……!!?」
ぶつかった女性はパトリスの顔を見ると目を見開いて「あ…あ…」と驚きの声を漏らした。
あ、やば…
パトリスは一瞬で正体がバレたことに気付き、「失礼」と生鮮食料品店から立ち去った。
其の様子を訝しげに見ていた別の客が、
「きゃー!!!オトビス!?オトビス・アングラードよ~~~~!!」
「うそー!」
「どこどこ!?」
「なんでこんなとこに??」
「ちょっとまって!握手して~」
「サイン欲しい~」
「触りたい!!」
と次々騒ぎ始め、逃げたパトリスを追いかけてきた。
パトリスは背後をチラっと見て、追いかけてくる集団の殺気に慄いた。
ヤバい…アレは…捕まったらヤバい…
久々に貞操の危険を感じる…
本気でダッシュし、路地を右に左に曲がり、どうにか追いかけてくる集団を撒いた。
はぁはぁ…はぁはぁ…ふぅ~
パトリスが壁に寄りかかり、息を整えていると、
ガコンッ
何かが落ちる音がした。
その音にギクッと驚いたパトリスが恐る恐る振り向くと、少女がいた。
「あの…大丈夫ですか?これ、飲みますか?」
少女は落とした荷物を拾い、パトリスに水を差し出した。パトリスは受け取るのを躊躇った。
「あの、まだ、開けていないので、安心してください」
パトリスは少女が震えていることに気付き、少女に他意はないと察した。
「あ、ありがとう。もらうね」
と言って、水を受け取り、ゴクゴクと一気に飲んだ。
少女がビクビクと怯えながらパトリスに尋ねた。
「あの、どうしたんですか?」
「ん?いや、ちょっとおいかけっこをね」
「そう…なんですか。あの、まだ大通りには出ないほうがいいと思います」
パトリスはピクッと眉を上げ、笑顔を取り繕った。
「ん?あ、そう…さっきの見てた?」
「いえ…私、いつも路地の入り口の店でこれ売っているので…」
パトリスの目が笑っていないのでさらに怯えながら
少女は荷物の中から本を取り出した。
「あぁ、君は角の本屋さんのとこの子かぁ。俺もよくお世話になっているよ」
パトリスは行きつけ店の子だとわかり、警戒を解いた。すると、少女は不思議そうに目をパチパチさせてパトリスを見た。
「本、読まれるんですか?」
「読む読む。昔から読書好きなんだ。演じる上で参考にもなるし」
「演じる…。役者さんですか?」
「そう、舞台メインだけど、たまに新聞や雑誌にも載るよ」
「そう…なんですね」
少女は不思議そうに本とパトリスを見比べた。
パトリスは少女の新鮮な反応にいいこと閃いたと手をポンと叩いた。
「あ!そうだ、君、今ひま?時間ある?」
「え?」
「大通りが落ち着くまで、俺の練習に付き合ってよ」
「え、あ…」
「よし、決まり!」
パトリスは少女の返事も聞かず、手を引っ張って奥まった場所にあって秘密基地みたいな小さな公園に行って、今度出演する舞台の話を少女に聞かせた。
パトリスが少女に一人演劇で見せた話は最近少女が読み始めた話題の冒険譚だった。
『少年がカミサマに呼ばれ、国をどんどん開拓していく話』
少女は、少女の年では本を読むとまだちょっと難しく感じる物語がこんなに面白く愉快な話だったのかと少女は目をキラキラさせ、心を踊らせ、夢中になって見入っていた。
パトリスと少女はその日、日が暮れるまで劇を続けた。
別れ際パトリスは少女にまたいつかこの続きをすると約束をし別れた。
その日、少女は一日夢心地だった。
タタタタタ…
ヤバっ見つかった。
パトリスは久々の休日だった。
パトリスは最近中央都市で活躍し始めた役者だった。
オトビス・アングラードと名乗り舞台に出ていた。
まだまだ新人だったが、先日出た舞台の役が当たり、人気が急上昇しており、色々な役をもらえるようになりはじめたところだった。
なので、パトリスは忙しい日々を送っていたが、基本的にワーカーホリックなので、休みはなくても気にしないタイプだった。だが、今日は舞台関係者全員に休みが必要だ!という主宰の思いつきで急遽決まった休みだった。
急だったので、いつも付き合ってもらっているテオの予定が合わず、パトリスは家でゴロゴロしていた。だが、昼になり、家に食べるものがなかったので、仕方なく買い物に出たのだった。
レストランで食べても良かったのだが、久しぶりに自分で作ってみようかと思い、パトリスは生鮮食料品店に行こうと思った。
パトリスが生鮮食料品店の入口付近に着いたとき、さて、何を買おうかと考えながら歩いていた。
すると、うっかり人にぶつかってしまった。
「あ、すみません。お怪我はありませんか?」
「え、あ、はい、だいじょ…う……!!?」
ぶつかった女性はパトリスの顔を見ると目を見開いて「あ…あ…」と驚きの声を漏らした。
あ、やば…
パトリスは一瞬で正体がバレたことに気付き、「失礼」と生鮮食料品店から立ち去った。
其の様子を訝しげに見ていた別の客が、
「きゃー!!!オトビス!?オトビス・アングラードよ~~~~!!」
「うそー!」
「どこどこ!?」
「なんでこんなとこに??」
「ちょっとまって!握手して~」
「サイン欲しい~」
「触りたい!!」
と次々騒ぎ始め、逃げたパトリスを追いかけてきた。
パトリスは背後をチラっと見て、追いかけてくる集団の殺気に慄いた。
ヤバい…アレは…捕まったらヤバい…
久々に貞操の危険を感じる…
本気でダッシュし、路地を右に左に曲がり、どうにか追いかけてくる集団を撒いた。
はぁはぁ…はぁはぁ…ふぅ~
パトリスが壁に寄りかかり、息を整えていると、
ガコンッ
何かが落ちる音がした。
その音にギクッと驚いたパトリスが恐る恐る振り向くと、少女がいた。
「あの…大丈夫ですか?これ、飲みますか?」
少女は落とした荷物を拾い、パトリスに水を差し出した。パトリスは受け取るのを躊躇った。
「あの、まだ、開けていないので、安心してください」
パトリスは少女が震えていることに気付き、少女に他意はないと察した。
「あ、ありがとう。もらうね」
と言って、水を受け取り、ゴクゴクと一気に飲んだ。
少女がビクビクと怯えながらパトリスに尋ねた。
「あの、どうしたんですか?」
「ん?いや、ちょっとおいかけっこをね」
「そう…なんですか。あの、まだ大通りには出ないほうがいいと思います」
パトリスはピクッと眉を上げ、笑顔を取り繕った。
「ん?あ、そう…さっきの見てた?」
「いえ…私、いつも路地の入り口の店でこれ売っているので…」
パトリスの目が笑っていないのでさらに怯えながら
少女は荷物の中から本を取り出した。
「あぁ、君は角の本屋さんのとこの子かぁ。俺もよくお世話になっているよ」
パトリスは行きつけ店の子だとわかり、警戒を解いた。すると、少女は不思議そうに目をパチパチさせてパトリスを見た。
「本、読まれるんですか?」
「読む読む。昔から読書好きなんだ。演じる上で参考にもなるし」
「演じる…。役者さんですか?」
「そう、舞台メインだけど、たまに新聞や雑誌にも載るよ」
「そう…なんですね」
少女は不思議そうに本とパトリスを見比べた。
パトリスは少女の新鮮な反応にいいこと閃いたと手をポンと叩いた。
「あ!そうだ、君、今ひま?時間ある?」
「え?」
「大通りが落ち着くまで、俺の練習に付き合ってよ」
「え、あ…」
「よし、決まり!」
パトリスは少女の返事も聞かず、手を引っ張って奥まった場所にあって秘密基地みたいな小さな公園に行って、今度出演する舞台の話を少女に聞かせた。
パトリスが少女に一人演劇で見せた話は最近少女が読み始めた話題の冒険譚だった。
『少年がカミサマに呼ばれ、国をどんどん開拓していく話』
少女は、少女の年では本を読むとまだちょっと難しく感じる物語がこんなに面白く愉快な話だったのかと少女は目をキラキラさせ、心を踊らせ、夢中になって見入っていた。
パトリスと少女はその日、日が暮れるまで劇を続けた。
別れ際パトリスは少女にまたいつかこの続きをすると約束をし別れた。
その日、少女は一日夢心地だった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
Shadow★Man~変態イケメン御曹司に溺愛(ストーカー)されました~
美保馨
恋愛
ある日突然、澪は金持ちの美男子・藤堂千鶴に見染められる。しかしこの男は変態で異常なストーカーであった。澪はド変態イケメン金持ち千鶴に翻弄される日々を送る。『誰か平凡な日々を私に返して頂戴!』
★変態美男子の『千鶴』と
バイオレンスな『澪』が送る
愛と笑いの物語!
ドタバタラブ?コメディー
ギャグ50%シリアス50%の比率
でお送り致します。
※他社サイトで2007年に執筆開始いたしました。
※感想をくださったら、飛び跳ねて喜び感涙いたします。
※2007年当時に執筆した作品かつ著者が10代の頃に執筆した物のため、黒歴史感満載です。
改行等の修正は施しましたが、内容自体に手を加えていません。
2007年12月16日 執筆開始
2015年12月9日 復活(後にすぐまた休止)
2022年6月28日 アルファポリス様にて転用
※実は別名義で「雪村 里帆」としてドギツイ裏有の小説をアルファポリス様で執筆しております。
現在の私の活動はこちらでご覧ください(閲覧注意ですw)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる