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8/親友の妹
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中央都市にて
テオの妹、ディアナが来る日が来た。
夜、テオは仕事終わりにディアナと待ち合わせをしていた。
「ディアナ、迷わず来られたか?」
「お兄ちゃん、子供扱いしないでよ。私もう20才よ」
ディアナはテオをジロッと睨んだ。
「ははっ、そうだったな。すまんすまん。ほら、行くぞ」
待ちあわせをしてるいつもの店にテオとディアナが着いたら、パトリスはもう先に到着して席に着いていた。
「パトリス、待たせたな」
「やあ、テオ。いや、俺もさっき来たとこだよ」
「今日はありがとうな。こっちが妹のディアナ」
テオが座りつつ、後ろにいたディアナを紹介した。
「はじめまして。ディアナ・エンリケです。兄のテオがいつもお世話になってます」
「俺はパトリス・カロン。君のお兄さんの友達だよ。よろしくね」
パトリスとディアナが握手をして挨拶をすると、テオがお腹をすかせたと席を立った。
「じゃぁ、俺はなんか頼んでくる。なんでもいいだろ?」
「うん、任せるよ」
そう言って、テオはカウンターの方にいった。
その間ディアナはじーっとパトリスを見つめていた。
そして、感嘆の声が漏れた。
「はぁ~。兄から話は聞いていましたけど、パトリスさん、本当に王子様みたいですね」
「そう?」
「えぇ、さすが人気絶頂の俳優さんは違いますね」
「あれ?わかっちゃった?」
「そりゃ。わからないほうがおかしいですって。兄は何も言いませんでしたけど…」
ディアナはチラッとカウンターの方を見た。
パトリスはそんなディアナの様子からテオが本当に何も言っていないことを察した。
「そっかー」
「パトリスさん、それよりも、多分、兄から頼まれごとされましたよね?諦めるように私を説得させる…とかなんとか…」
パトリスはピクッとしたが、ふっと力を抜いた。
「なんだ、バレバレだ」
ディアナはけろりと臆面もなくネタバラシをした。
「ふふふ。うちの両親、声が大きいんです。だからナイショ話って大体筒抜けなんです」
「あらら」
「まぁ、兄もバレていることわかってますよ。わかってて頼んだんです。兄は私を説得できませんから。ふふっ」
「まったく、あいつは…。じゃぁ、話が早いね。どう?説得されてくれる?」
「ふふっ、どうしましょう?」
パトリスとディアナがお互い開き直って、芝居のように大袈裟に話し始めた。
「あぁ、ディアナ。テオが困ってたよ?かわいい妹が旅に出るなんて、心配だって。可哀想なほど一気にやつれてたよ」
「いーえ、兄は日頃一人のびのびと生活しているだから、たまに困ればいいんです。心配症なのもたまにうっとおしいし。でも、まぁ、パトリスさんの顔を立てて旅に出るのは諦めてもいいですよ。”白馬の王子様”は諦められませんが」
デアナがウインクして茶番を終わらせた。
パトリスはディアナの意図を汲んで通常の話し方に戻した。
「君、いい子だね」
「ふふっ、他所様にこれ以上迷惑かけるわけにはいかないですし。でも、そうですね。褒められついでにご褒美もお願いしてもいいですか?」
「ん~ご褒美かぁ…あ、そうだ、今度の舞台のチケットはどう?招待するよ。“テオと一緒”って限定が付くけど」
ディアナは驚きと喜びが入り混じった歓喜の声を上げた。
「えぇ!本当ですか??『太陽と月』ですよね?チケット取れないって有名ですよね?うわ~!兄とで全然大丈夫です!うれしい!」
ディアナは喜びすぎて涙が出てきた。
パトリスはディアナにそっとハンカチを差し出した。
「そうらしいね。俺の分の関係者チケットが余っているからもらってくれると助かるよ」
パトリスからハンカチを受け取り、涙を拭いたディアナが不思議そうに首を傾げた。
「そうなんですか?パトリスさんほどの人気俳優さんなら声をかければ殺到しそうですけどね?」
「いやいや、それがそうでもないんだよ…。俺友達少ないもん」
パトリスは遠い目をした。
「えー!?意外です」
「俺、基本的に仕事ばっかりしているし、たまの休みはテオと会っているから…」
「兄に控えるように言いましょうか?」
「テオが遊んでくれないと俺ぼっちだよ」
「それは…ご愁傷様です…。恋人は…無理ですよね。この人気じゃ…」
「まぁ、元から作るつもりはないけどね」
「そうですか?他にも理由がありそうですが…」
ディアナがスーパースターに憐れみの目をむけたその時、テオが両手に軽食とドリンクを持って戻ってきた。
パトリスはテオをじっと見つめた。
「ん?どうした?」
「テオ、君の妹は聡明だね」
パトリスの意外な評価にテオは驚いてディアナを見た。
「は?ディアナ、お前なんか言ったのか?」
「まだ何も?」
「ほんとか?」
「黙秘」
「な、な…」
ディアナにやり込められて二の句が継げなくなっているテオ兄妹の会話に割り込むように、パトリスは先程のディアナとの話し合いの結果を告げた。
「彼女は話が早くて助かるよ。テオ、旅に出ないって約束してくれたよ」
テオの意識がディアナからパトリスに向いた。
「もう!?早くない?どんな魔法使ったんだよ?」
「何も?普通に話しただけだよ」
「うそだろぉ…」
テオがヘナヘナと力を抜き背もたれに寄り掛かってディアナをちらりと見た。信じられないものを見る目でディアナを見てくるのでディアナは思わずぶつぶつ文句を言った。
「まったく、パトリスさんに泣きつくなんて。兄ならもっと威厳を持って妹を説得してみなさいよ」
「いやいや、お前、俺の言うこと聞かないじゃん…」
「それはお兄ちゃんの日頃の行いのせいよ」
「日頃の…?いやいや…お前に言うこと聞かせられるのはあの娘ぐらいだぞ?アイツだって勝てないじゃないか」
テオがディアナの幼馴染たちを思い浮かべ反論した。
話が堂々巡りになりそうなので、パトリスは割り込んだ。
「ま、ま、せっかくテオが持ってきてくれたんだ。冷める前に食べようよ」
「そうね。この出会いに乾杯」
ディアナはテオとの話を中断し、グラスを軽く持ち上げた。
「「乾杯」」
テオとパトリスはディアナのグラスに自分のグラスをカチンと合わせた。
3人はテオが持ってきた食事を食べ、その日は遅くまで楽しい時間を過ごした。
テオの妹、ディアナが来る日が来た。
夜、テオは仕事終わりにディアナと待ち合わせをしていた。
「ディアナ、迷わず来られたか?」
「お兄ちゃん、子供扱いしないでよ。私もう20才よ」
ディアナはテオをジロッと睨んだ。
「ははっ、そうだったな。すまんすまん。ほら、行くぞ」
待ちあわせをしてるいつもの店にテオとディアナが着いたら、パトリスはもう先に到着して席に着いていた。
「パトリス、待たせたな」
「やあ、テオ。いや、俺もさっき来たとこだよ」
「今日はありがとうな。こっちが妹のディアナ」
テオが座りつつ、後ろにいたディアナを紹介した。
「はじめまして。ディアナ・エンリケです。兄のテオがいつもお世話になってます」
「俺はパトリス・カロン。君のお兄さんの友達だよ。よろしくね」
パトリスとディアナが握手をして挨拶をすると、テオがお腹をすかせたと席を立った。
「じゃぁ、俺はなんか頼んでくる。なんでもいいだろ?」
「うん、任せるよ」
そう言って、テオはカウンターの方にいった。
その間ディアナはじーっとパトリスを見つめていた。
そして、感嘆の声が漏れた。
「はぁ~。兄から話は聞いていましたけど、パトリスさん、本当に王子様みたいですね」
「そう?」
「えぇ、さすが人気絶頂の俳優さんは違いますね」
「あれ?わかっちゃった?」
「そりゃ。わからないほうがおかしいですって。兄は何も言いませんでしたけど…」
ディアナはチラッとカウンターの方を見た。
パトリスはそんなディアナの様子からテオが本当に何も言っていないことを察した。
「そっかー」
「パトリスさん、それよりも、多分、兄から頼まれごとされましたよね?諦めるように私を説得させる…とかなんとか…」
パトリスはピクッとしたが、ふっと力を抜いた。
「なんだ、バレバレだ」
ディアナはけろりと臆面もなくネタバラシをした。
「ふふふ。うちの両親、声が大きいんです。だからナイショ話って大体筒抜けなんです」
「あらら」
「まぁ、兄もバレていることわかってますよ。わかってて頼んだんです。兄は私を説得できませんから。ふふっ」
「まったく、あいつは…。じゃぁ、話が早いね。どう?説得されてくれる?」
「ふふっ、どうしましょう?」
パトリスとディアナがお互い開き直って、芝居のように大袈裟に話し始めた。
「あぁ、ディアナ。テオが困ってたよ?かわいい妹が旅に出るなんて、心配だって。可哀想なほど一気にやつれてたよ」
「いーえ、兄は日頃一人のびのびと生活しているだから、たまに困ればいいんです。心配症なのもたまにうっとおしいし。でも、まぁ、パトリスさんの顔を立てて旅に出るのは諦めてもいいですよ。”白馬の王子様”は諦められませんが」
デアナがウインクして茶番を終わらせた。
パトリスはディアナの意図を汲んで通常の話し方に戻した。
「君、いい子だね」
「ふふっ、他所様にこれ以上迷惑かけるわけにはいかないですし。でも、そうですね。褒められついでにご褒美もお願いしてもいいですか?」
「ん~ご褒美かぁ…あ、そうだ、今度の舞台のチケットはどう?招待するよ。“テオと一緒”って限定が付くけど」
ディアナは驚きと喜びが入り混じった歓喜の声を上げた。
「えぇ!本当ですか??『太陽と月』ですよね?チケット取れないって有名ですよね?うわ~!兄とで全然大丈夫です!うれしい!」
ディアナは喜びすぎて涙が出てきた。
パトリスはディアナにそっとハンカチを差し出した。
「そうらしいね。俺の分の関係者チケットが余っているからもらってくれると助かるよ」
パトリスからハンカチを受け取り、涙を拭いたディアナが不思議そうに首を傾げた。
「そうなんですか?パトリスさんほどの人気俳優さんなら声をかければ殺到しそうですけどね?」
「いやいや、それがそうでもないんだよ…。俺友達少ないもん」
パトリスは遠い目をした。
「えー!?意外です」
「俺、基本的に仕事ばっかりしているし、たまの休みはテオと会っているから…」
「兄に控えるように言いましょうか?」
「テオが遊んでくれないと俺ぼっちだよ」
「それは…ご愁傷様です…。恋人は…無理ですよね。この人気じゃ…」
「まぁ、元から作るつもりはないけどね」
「そうですか?他にも理由がありそうですが…」
ディアナがスーパースターに憐れみの目をむけたその時、テオが両手に軽食とドリンクを持って戻ってきた。
パトリスはテオをじっと見つめた。
「ん?どうした?」
「テオ、君の妹は聡明だね」
パトリスの意外な評価にテオは驚いてディアナを見た。
「は?ディアナ、お前なんか言ったのか?」
「まだ何も?」
「ほんとか?」
「黙秘」
「な、な…」
ディアナにやり込められて二の句が継げなくなっているテオ兄妹の会話に割り込むように、パトリスは先程のディアナとの話し合いの結果を告げた。
「彼女は話が早くて助かるよ。テオ、旅に出ないって約束してくれたよ」
テオの意識がディアナからパトリスに向いた。
「もう!?早くない?どんな魔法使ったんだよ?」
「何も?普通に話しただけだよ」
「うそだろぉ…」
テオがヘナヘナと力を抜き背もたれに寄り掛かってディアナをちらりと見た。信じられないものを見る目でディアナを見てくるのでディアナは思わずぶつぶつ文句を言った。
「まったく、パトリスさんに泣きつくなんて。兄ならもっと威厳を持って妹を説得してみなさいよ」
「いやいや、お前、俺の言うこと聞かないじゃん…」
「それはお兄ちゃんの日頃の行いのせいよ」
「日頃の…?いやいや…お前に言うこと聞かせられるのはあの娘ぐらいだぞ?アイツだって勝てないじゃないか」
テオがディアナの幼馴染たちを思い浮かべ反論した。
話が堂々巡りになりそうなので、パトリスは割り込んだ。
「ま、ま、せっかくテオが持ってきてくれたんだ。冷める前に食べようよ」
「そうね。この出会いに乾杯」
ディアナはテオとの話を中断し、グラスを軽く持ち上げた。
「「乾杯」」
テオとパトリスはディアナのグラスに自分のグラスをカチンと合わせた。
3人はテオが持ってきた食事を食べ、その日は遅くまで楽しい時間を過ごした。
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