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4/昔の依頼
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昔、まだオリビアが修行を始めてまだ間もない頃
「ヴィムさーん、いますかぁ?」
玄関から明るい声がした。
オリビアは作業の手を止め、
「あ、カーラさん、こんにちは。おじーちゃんは奥にいますよ」
「あら、オリビアちゃん。ありがとう」
「いいえ。おじーちゃん、カーラさんだよー」
オリビアが呼ぶと工房の奥からヴィムが顔を出した。
「なんじゃい」
「あーいたいた。いつ来てもいないいから避けられちゃっているのかと思ったわ」
「フン」
「オリビアちゃん、ありがとうね。やっとおじいちゃん捕まえることができわ」
カーラはオリビアの頭を撫でお礼を言った。
オリビアは褒められて嬉しくて、ニコニコとした。
「いえいえ、いつもありがとうございます。あ、すみません、今、お茶を入れますね。どうぞ、こちらに座ってお待ち下さい」
「ご丁寧にどうも。オリビアちゃんまだ6歳でしょ?偉いわね。ヴィムさんはもう少し愛想がほしいとこね」
「フン」
カーラとヴィムは応接セットのイスに向かい合って座った。
そこにすぐオリビアがお茶を持ってきた。
「じゃあ、ごゆっくり。私はまだ作業が残っているので失礼しますね」
「ありがとう。頑張ってね」
はい、失礼しますと言ってオリビアは作業に戻った。
オリビアが完全に離れたことを確認してからヴィムは口を開いた。
「で、今回はなんじゃい?」
「いきなりねぇ」
「フン、お前さんの持ってくる案件は難解なものが多いからな。昔から。この前の水晶玉もそうだろ。無駄口叩いている時間が惜しい」
「まったく、まっ、でも今回も引き受けてもらえて助かるわ」
「フン。神の御業というやつでなんとでもなるんじゃないのか?」
「あぁ、あの方はそういうことに力を使わないのよ」
「カミサマは気まぐれってやつか」
「世界に影響があることはしたがらないのよね。自分がやると面白くないからって」
「カミサマにしかわからん問題なんじゃろな。で、今回はどんなだ?」
「今回は浄化に特化したものがほしいわ。そうね、常に肌見放さず着けられて見ただけでは魔道具ってわからないものがイイって。だから…そうね、ブレスレットでどう?」
と言って、カーラは仕様書をヴィムに見せた。
ヴィムは頭を抑えて、
「また、こりゃ…お前さんまた碌でもないこと考えるな」
「あの方が望んでいるんだもの。あの方の力を分け与えるんだものこれぐらいはね」
「カミサマの世界もドロドロだの」
ヴィムは呆れながら仕様書の細部を読み込んだ。
「で、カミサマはこれを何に使う気だ?」
ヴィムは仕様書から目を離さずカーラに尋ねた。
「詳しくは教えてもらってないけど、どうやらこの平穏な世界を壊そうとする勢力が現れるらしいわ。今回のはその前段階での種を無効化するものらしいわ。ま、あくまで、仕様書を呼んだ感じだとね」
「前々から思っていたんだが、お前さんカミサマに信用がないのか?いつも話してもらってない気がするが…」
「ふふ、痛いとこつくわね。あの方はすべてを教えてくれるわけではないわ。あの方が何も言わなくてもあの方の全てが分かるのなんて最長老だけよ」
「最長老…か…」
「ふふふ。わたしなんてまだまだ若造よ」
「本当は?」
ヴィムはチラッとカーラを見た。
「え?」
「お前さんは少なくとも5代前から記録が残っている。若いわけ無いだろうが。サバを読むでない」
「ちぇっ。なーんだ知ってたの?そうねぇ、中堅ってとこかしら?でも気持ちは若いんだからね!」
「ばーさんも一時そんなこと言ってたなぁ」
カーラはヴィムの意外な一言に目をパチクリさせて
「ガーン…ヴィムさんが憶えているなんてよっぽどね」
「…お前さんは俺をなんだと思っているんだ」
「ヴィムさーん、いますかぁ?」
玄関から明るい声がした。
オリビアは作業の手を止め、
「あ、カーラさん、こんにちは。おじーちゃんは奥にいますよ」
「あら、オリビアちゃん。ありがとう」
「いいえ。おじーちゃん、カーラさんだよー」
オリビアが呼ぶと工房の奥からヴィムが顔を出した。
「なんじゃい」
「あーいたいた。いつ来てもいないいから避けられちゃっているのかと思ったわ」
「フン」
「オリビアちゃん、ありがとうね。やっとおじいちゃん捕まえることができわ」
カーラはオリビアの頭を撫でお礼を言った。
オリビアは褒められて嬉しくて、ニコニコとした。
「いえいえ、いつもありがとうございます。あ、すみません、今、お茶を入れますね。どうぞ、こちらに座ってお待ち下さい」
「ご丁寧にどうも。オリビアちゃんまだ6歳でしょ?偉いわね。ヴィムさんはもう少し愛想がほしいとこね」
「フン」
カーラとヴィムは応接セットのイスに向かい合って座った。
そこにすぐオリビアがお茶を持ってきた。
「じゃあ、ごゆっくり。私はまだ作業が残っているので失礼しますね」
「ありがとう。頑張ってね」
はい、失礼しますと言ってオリビアは作業に戻った。
オリビアが完全に離れたことを確認してからヴィムは口を開いた。
「で、今回はなんじゃい?」
「いきなりねぇ」
「フン、お前さんの持ってくる案件は難解なものが多いからな。昔から。この前の水晶玉もそうだろ。無駄口叩いている時間が惜しい」
「まったく、まっ、でも今回も引き受けてもらえて助かるわ」
「フン。神の御業というやつでなんとでもなるんじゃないのか?」
「あぁ、あの方はそういうことに力を使わないのよ」
「カミサマは気まぐれってやつか」
「世界に影響があることはしたがらないのよね。自分がやると面白くないからって」
「カミサマにしかわからん問題なんじゃろな。で、今回はどんなだ?」
「今回は浄化に特化したものがほしいわ。そうね、常に肌見放さず着けられて見ただけでは魔道具ってわからないものがイイって。だから…そうね、ブレスレットでどう?」
と言って、カーラは仕様書をヴィムに見せた。
ヴィムは頭を抑えて、
「また、こりゃ…お前さんまた碌でもないこと考えるな」
「あの方が望んでいるんだもの。あの方の力を分け与えるんだものこれぐらいはね」
「カミサマの世界もドロドロだの」
ヴィムは呆れながら仕様書の細部を読み込んだ。
「で、カミサマはこれを何に使う気だ?」
ヴィムは仕様書から目を離さずカーラに尋ねた。
「詳しくは教えてもらってないけど、どうやらこの平穏な世界を壊そうとする勢力が現れるらしいわ。今回のはその前段階での種を無効化するものらしいわ。ま、あくまで、仕様書を呼んだ感じだとね」
「前々から思っていたんだが、お前さんカミサマに信用がないのか?いつも話してもらってない気がするが…」
「ふふ、痛いとこつくわね。あの方はすべてを教えてくれるわけではないわ。あの方が何も言わなくてもあの方の全てが分かるのなんて最長老だけよ」
「最長老…か…」
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「本当は?」
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「ちぇっ。なーんだ知ってたの?そうねぇ、中堅ってとこかしら?でも気持ちは若いんだからね!」
「ばーさんも一時そんなこと言ってたなぁ」
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「ガーン…ヴィムさんが憶えているなんてよっぽどね」
「…お前さんは俺をなんだと思っているんだ」
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