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プロローグ②
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職人街、ある日のこと
「ねぇねぇ、これ、何?何の効果があるの?」
男の子が作業台の上のチョーカーを見つけ、隣で作業中の女の子に聞いた。
男の子と女の子は幼馴染だ。
男の子は子役だ。
男の子は舞台映えする見た目に加え演技が高く評価されていた。端役だが、舞台出演の経験も積み上げてきていた。でも、本人は周りが期待するほど役者に思い入れはなく、歌に自信があったから歌手のほうがいいかな?とか思っていた。
今日はレッスンが休みの日だったので、女の子に会いに工房に来ていた。
女の子は魔導具師だ。
女の子はこの祖父の工房で魔道具作りの修行をしている。祖父の作る魔導具が大好きで、両親と祖父を説得し、自分でこの道に進んだ。
女の子は若輩ながらも天才の名をほしいままにしていた。
褒められるのが嬉しくて、思いついたことをどんどん試したくて
師匠である祖父が留守にしているときは、コッソリと自分の作品を作っていた。
祖父にバレたら大目玉を食らうのは間違いないので頑張って見つからないようにしていた。
この日も熟練の職人でも難しい複雑な機構の魔導具を試作していた。
「これはね、今回の試作品。魔力をブロックする魔導具だよ」
「魔力をブロック?何それ?何に使うの?」
「どう使うかはまだ考え中だけど、魔力がコントロール出来なくて困っている人に使えればなと思って。これを装着すると、魔力がこれに吸収されて事象に現れなくなるの。この石に発現阻害の効果を埋め込んだの。」
と、女の子はチョーカーの先端にちょこんと付いている透明な石を指さした。
「え?どうゆうこと?試してみていい?」
男の子には難しく、ほとんど理解できなかった。
だが、興味が勝って試しにやってみようと女の子の返事を聞く前にチョーカーを首に装着した。
「こうするの?」
「あ!こら!まだ調整できてないのに」
女の子は男の子に怒ったけど、男の子は気にもせず、
「いいじゃん、いいじゃん。で、これからどうするの?着けたけど何も変わらないよ?失敗作?」
「そんなことないよ。君の場合は魔力発現は歌でしょ?歌ってみて」
男の子の軽口に女の子はちょっとムッとしながら少しぶっきらぼうに言った。
「歌?歌ったらここで大変なことになるよ?」
女の子の言う通り男の子の歌は魔力を帯びている。
彼が歌うと周囲に影響が出る。
彼が歌手になりたい夢がありながらもその夢に進むことを悩む一因になっているほど、魔力による影響がでてしまうのだ。
「大丈夫。大丈夫なように作ったから」
「じゃぁ、遠慮なく…」
男の子は歌を歌った。
とてもとても綺麗な歌声だった。
♪~♫~
すると、チョーカーが光り、魔力が勢いよく吸い込まれていった。
ひゅぉぉぉぉぉぉぉ
あまりの勢いに男の子を中心につむじ風が起き、チョーカーに付いている透明な石に吸い込まれていった。
「うわ!」
「危ない!!」
光と風が止み、女の子が男の子を見るとチョーカーに付いていた透明な石が男の子の頸窩に埋め込まれていた。
「え…なんで…」
「あ…」
その時帰ってきた祖父が見たのは、荒れた部屋の中で茫然自失で座り込む男の子と女の子だった。
その日から男の子の歌を聞いたものはいない
「ねぇねぇ、これ、何?何の効果があるの?」
男の子が作業台の上のチョーカーを見つけ、隣で作業中の女の子に聞いた。
男の子と女の子は幼馴染だ。
男の子は子役だ。
男の子は舞台映えする見た目に加え演技が高く評価されていた。端役だが、舞台出演の経験も積み上げてきていた。でも、本人は周りが期待するほど役者に思い入れはなく、歌に自信があったから歌手のほうがいいかな?とか思っていた。
今日はレッスンが休みの日だったので、女の子に会いに工房に来ていた。
女の子は魔導具師だ。
女の子はこの祖父の工房で魔道具作りの修行をしている。祖父の作る魔導具が大好きで、両親と祖父を説得し、自分でこの道に進んだ。
女の子は若輩ながらも天才の名をほしいままにしていた。
褒められるのが嬉しくて、思いついたことをどんどん試したくて
師匠である祖父が留守にしているときは、コッソリと自分の作品を作っていた。
祖父にバレたら大目玉を食らうのは間違いないので頑張って見つからないようにしていた。
この日も熟練の職人でも難しい複雑な機構の魔導具を試作していた。
「これはね、今回の試作品。魔力をブロックする魔導具だよ」
「魔力をブロック?何それ?何に使うの?」
「どう使うかはまだ考え中だけど、魔力がコントロール出来なくて困っている人に使えればなと思って。これを装着すると、魔力がこれに吸収されて事象に現れなくなるの。この石に発現阻害の効果を埋め込んだの。」
と、女の子はチョーカーの先端にちょこんと付いている透明な石を指さした。
「え?どうゆうこと?試してみていい?」
男の子には難しく、ほとんど理解できなかった。
だが、興味が勝って試しにやってみようと女の子の返事を聞く前にチョーカーを首に装着した。
「こうするの?」
「あ!こら!まだ調整できてないのに」
女の子は男の子に怒ったけど、男の子は気にもせず、
「いいじゃん、いいじゃん。で、これからどうするの?着けたけど何も変わらないよ?失敗作?」
「そんなことないよ。君の場合は魔力発現は歌でしょ?歌ってみて」
男の子の軽口に女の子はちょっとムッとしながら少しぶっきらぼうに言った。
「歌?歌ったらここで大変なことになるよ?」
女の子の言う通り男の子の歌は魔力を帯びている。
彼が歌うと周囲に影響が出る。
彼が歌手になりたい夢がありながらもその夢に進むことを悩む一因になっているほど、魔力による影響がでてしまうのだ。
「大丈夫。大丈夫なように作ったから」
「じゃぁ、遠慮なく…」
男の子は歌を歌った。
とてもとても綺麗な歌声だった。
♪~♫~
すると、チョーカーが光り、魔力が勢いよく吸い込まれていった。
ひゅぉぉぉぉぉぉぉ
あまりの勢いに男の子を中心につむじ風が起き、チョーカーに付いている透明な石に吸い込まれていった。
「うわ!」
「危ない!!」
光と風が止み、女の子が男の子を見るとチョーカーに付いていた透明な石が男の子の頸窩に埋め込まれていた。
「え…なんで…」
「あ…」
その時帰ってきた祖父が見たのは、荒れた部屋の中で茫然自失で座り込む男の子と女の子だった。
その日から男の子の歌を聞いたものはいない
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