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翌朝、ワクワクが止まらないセルティスはいつもより早起く起きてしまった。
ガバっとベッドから起きたセルティスは洗面台で顔を洗ってそそくさと着替えた。
テルマが用意してくれた。この服、スラム街で着てたボロと全然違ってすごく動きやすいし、丈夫なんだよな~
テルマはいつも衣類部屋に色んな服を並べて置いてくれる。
その中から気に入った服を選んで入口の近くにある箱を通すと選んだ服に名前が刺繍される。
自分専用のクローゼットに入る分だけって約束があるから、入らなくなると衣類部屋に入れなくなるらしいんだけど、僕はまだスカスカだ。テオ兄さんもラジ兄さんもまだ全然スカスカだって言ってた。そもそもクローゼットが大きいんだと思うんだ。
難しくてどんな仕組みかわからないけど、自分の名前が付いた服を着るのはとても楽しいのでセルティスは毎日着替えるのが大好きだった。
「展望台楽しみだなぁ。何が見えるんだろう」
「ふわぁ~。はよー。セル早起きだねぇ」
「おはよう!ファル、いい天気だよ!楽しみだね」
ファルコンことファルは眠い目を擦りながらカイトを起こした。
「カイ、カイト、起きよーぜ」
カイトはまだ寝るぅとモゾモゾしていたが、セルの
「展望台から何が見えるのかなぁ」
の一言で
「そうだった!」
とガバっと起きた。
3人はささっと身支度をして食堂に向かった。
食堂では、ラジがもう朝ご飯の支度を手伝っていた。
「おはよっ、早いな~」
カイトが口を尖らせて
「ラジ兄さんはやーい!僕たちが1番だと思ったのにぃ」
ラジは目をパチクリとし、ニカッと笑った。
「ははっ、それはないな。なんつったってテオがいるからな。テオより早起きなのは寝ないテルマぐらいだ」
カイトは驚き、聞き返した。
「えっ?テルマ寝ないの??」
ラジはヤベッと思い、セルティスとファルコンに話を振った。
「セル、ファル、おはよ!今日は楽しみだな」
「おはよ。ラジ兄さん」
「おはよう!楽しみだなぁ~何が見えるのかなぁ~」
セルの返しにファルが突っ込んだ。
「お前さっきからそればっかりだな」
3人が朝食の支度を手伝っていると続々と子ども達が起きてきた。
みんなこころなしかいつもより少し早い起床だった。
朝食を済ませ、出かける準備万端にし、玄関のエントランスに集合した。
「ねぇねぇ、どうやって行くの?」
リリィと手を繋いだパキラートがソフィに聞いてきた。
「う~ん私も詳しくは聞いていないんだけど、ここで待っていれば馬車?が来るって…」
ソフィも首を傾げているとすぐに見慣れないポヨンポヨンした箱型の物が静かに近づいてきた。
その物はソフィ達の前で停まり、ウィーンという音とともに長方形の穴が空き、足元にはスロープが伸びてきた。
「えっ!?えっ!?」
「箱…?」
「すごーい!」
「あっ、ちょっ!まっ!」
「どうなってるのー!」
カトレアが制止する声を振り切って子どもたちは我先にとソレに乗り込んだ。
「すごーい!」「ひろーい」
「カトレア、フェザ!早く早く!」
「中もすごいよー」
先に中に入った年少組たちが感激し、躊躇している年長組のカトレアやフェザンドを呼んだ。
ソフィは呆気に取られていたが、その声でハッと我に返り、
恐る恐る乗り込んだ。
バスでは驚きの連発だった。
まずはこの今、自分が乗っている物、『バス』というらしい。
先頭に馬も御者もいないのに動いている…。
《毎度ご乗車ありがとうございます。このバスは、展望台入口行きでございます。やむを得ず急停車をかけることがございますので、お立ちになりませんよう、お願い申し上げます。》
御者も馬も見当たらないのに、走り出す前に何処からともなく声が聞こえてきた。
走行中は、ガタガタせず、静かだ。何より座り心地がとても良い。ふわふわな座面だし、これなら長時間座っていても腰が痛くならないだろうな。
詳しい原理はわからないが、こんな至れり尽くせりな物は、ソフィの住む街、いや、国にはなかった。
「楽ちんだねぇ~」
背もたれに体重をかけ、体の力を抜くと、口からポロッと素直な感想が漏れ出た。
思い返せば、風呂も部屋も寝床も全てが極楽だった。
こんな物を作り出せるテルマは一体何者なんだい…?
ソフィはますますテルマの存在が気になった。
事情を知っていそうなテオーリオあたりに聞けばいいんだろうが…。そもそも聞いて良いのか…。
考えても埒が明かないので、ふと窓の外に視線をやると、テルマの作り出した街並みはソフィの知っているものとはまるっきり違っていて身を乗り出して眺めた。
ガバっとベッドから起きたセルティスは洗面台で顔を洗ってそそくさと着替えた。
テルマが用意してくれた。この服、スラム街で着てたボロと全然違ってすごく動きやすいし、丈夫なんだよな~
テルマはいつも衣類部屋に色んな服を並べて置いてくれる。
その中から気に入った服を選んで入口の近くにある箱を通すと選んだ服に名前が刺繍される。
自分専用のクローゼットに入る分だけって約束があるから、入らなくなると衣類部屋に入れなくなるらしいんだけど、僕はまだスカスカだ。テオ兄さんもラジ兄さんもまだ全然スカスカだって言ってた。そもそもクローゼットが大きいんだと思うんだ。
難しくてどんな仕組みかわからないけど、自分の名前が付いた服を着るのはとても楽しいのでセルティスは毎日着替えるのが大好きだった。
「展望台楽しみだなぁ。何が見えるんだろう」
「ふわぁ~。はよー。セル早起きだねぇ」
「おはよう!ファル、いい天気だよ!楽しみだね」
ファルコンことファルは眠い目を擦りながらカイトを起こした。
「カイ、カイト、起きよーぜ」
カイトはまだ寝るぅとモゾモゾしていたが、セルの
「展望台から何が見えるのかなぁ」
の一言で
「そうだった!」
とガバっと起きた。
3人はささっと身支度をして食堂に向かった。
食堂では、ラジがもう朝ご飯の支度を手伝っていた。
「おはよっ、早いな~」
カイトが口を尖らせて
「ラジ兄さんはやーい!僕たちが1番だと思ったのにぃ」
ラジは目をパチクリとし、ニカッと笑った。
「ははっ、それはないな。なんつったってテオがいるからな。テオより早起きなのは寝ないテルマぐらいだ」
カイトは驚き、聞き返した。
「えっ?テルマ寝ないの??」
ラジはヤベッと思い、セルティスとファルコンに話を振った。
「セル、ファル、おはよ!今日は楽しみだな」
「おはよ。ラジ兄さん」
「おはよう!楽しみだなぁ~何が見えるのかなぁ~」
セルの返しにファルが突っ込んだ。
「お前さっきからそればっかりだな」
3人が朝食の支度を手伝っていると続々と子ども達が起きてきた。
みんなこころなしかいつもより少し早い起床だった。
朝食を済ませ、出かける準備万端にし、玄関のエントランスに集合した。
「ねぇねぇ、どうやって行くの?」
リリィと手を繋いだパキラートがソフィに聞いてきた。
「う~ん私も詳しくは聞いていないんだけど、ここで待っていれば馬車?が来るって…」
ソフィも首を傾げているとすぐに見慣れないポヨンポヨンした箱型の物が静かに近づいてきた。
その物はソフィ達の前で停まり、ウィーンという音とともに長方形の穴が空き、足元にはスロープが伸びてきた。
「えっ!?えっ!?」
「箱…?」
「すごーい!」
「あっ、ちょっ!まっ!」
「どうなってるのー!」
カトレアが制止する声を振り切って子どもたちは我先にとソレに乗り込んだ。
「すごーい!」「ひろーい」
「カトレア、フェザ!早く早く!」
「中もすごいよー」
先に中に入った年少組たちが感激し、躊躇している年長組のカトレアやフェザンドを呼んだ。
ソフィは呆気に取られていたが、その声でハッと我に返り、
恐る恐る乗り込んだ。
バスでは驚きの連発だった。
まずはこの今、自分が乗っている物、『バス』というらしい。
先頭に馬も御者もいないのに動いている…。
《毎度ご乗車ありがとうございます。このバスは、展望台入口行きでございます。やむを得ず急停車をかけることがございますので、お立ちになりませんよう、お願い申し上げます。》
御者も馬も見当たらないのに、走り出す前に何処からともなく声が聞こえてきた。
走行中は、ガタガタせず、静かだ。何より座り心地がとても良い。ふわふわな座面だし、これなら長時間座っていても腰が痛くならないだろうな。
詳しい原理はわからないが、こんな至れり尽くせりな物は、ソフィの住む街、いや、国にはなかった。
「楽ちんだねぇ~」
背もたれに体重をかけ、体の力を抜くと、口からポロッと素直な感想が漏れ出た。
思い返せば、風呂も部屋も寝床も全てが極楽だった。
こんな物を作り出せるテルマは一体何者なんだい…?
ソフィはますますテルマの存在が気になった。
事情を知っていそうなテオーリオあたりに聞けばいいんだろうが…。そもそも聞いて良いのか…。
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