51 / 56
51.
しおりを挟む
「なんだここは…?」
地下牢から出たキースが地上へと向っている途中、石造りの神殿にある召喚の部屋と同じ造りをした大広間に行き当たった。
扉は開け放たれていて、キースは恐る恐る中に入っていった。
「似ている…?」
キースが部屋を見渡し、警戒しつつも部屋の中に進んでいった。
中央までやって来たとき、足元で魔法陣が光った。
「っしまった…!!くそっ」
キースはその場から立ち去ろうとしたが、足が地面に縫い留められた様に動くことができなかった。
隠れていた神官と兵士がぞろぞろと現れ、さらに捕縛の魔法を重ねて掛けてきた。
さらに有力な貴族達も離れた観覧する場所に続々と入ってきた。
くっ…どこから……
「数日前からネズミか入り込んでいると報告があったが…。飛んで火に入る夏の虫と古の言葉にあったな。探す手間と運ぶ手間が省けた」
突然低い声が響き渡った。
キースはハッと声がしたほうを見た。
一段高くなっている玉座の後ろにある扉から王とその背後に控えている高位神官と宰相が入ってきた。
「ふん、汚いな。で?これを使えば再度召喚の儀が執り行えるのは間違いないんだろうな?」
王は高位神官に問うた。
「はい、そこにいるものは受容、それが抱えられているのは供給ですので、問題ないかと」
王はニヤリと笑い、眼下の神官に向かい手を上げた。
「うむ、では始めよ」
それを合図にキース達を取り囲む神官が杖を掲げ、詠唱を始めた。
「くっ…こ、これは」
キースを縛り付けている魔法陣に重なるように新たな魔法陣が描かれた。
キースは捕縛魔法で身動きが取れない中、腕の中の少年を守り、精霊を呼んだ。
「せ、精霊よ…て、てをか…してく…れ」
「キース、キースどこ?!」
「ぼくたち…キースがみえない!」
「この、魔法陣が…じゃましてるの!」
精霊達の混乱した声がキースに届く
キースは力の限り片手を伸ばし、魔法陣から指先を数ミリはみ出させた。
「みえた!キース、そこにいる」
「たすける!」
「キース!」
精霊達は正常な判断を失い、キースの許容範囲を遥かに超えた、己の限界まて力をキースに与えようとした。
「ぐわっっっ…」
キースは体が圧し潰されそうなほどの力を受け、何とか指先を動かして力を操った。
バキッバキッと神官達の杖が次々に破壊されていった。
「くそっ!どうなっておるんじゃ!おい、大神官!本当に出来るんだろうな!?」
王様の背後に控えていた宰相が声を荒げた。観覧の貴族たちもざわざわとし始めた。
宰相や貴族には精霊はみえないから突然杖が折れていったようにしか見えなかった。
大神官と呼ばれた高位神官は慌てて錫杖を掲げ、詠唱を始めた。
すると、取り囲む神官たちがグッと苦しそうな声を出し、青筋や汗を出した。
キース達の下の魔法陣が強く光を放った。
大神官はニヤリと笑い、
「これで大丈夫なはずです。神官共の力を強化しましたから」
「それでは神官たちが使い物にならなくなるんじゃないのか?」
宰相が大神官に尋ねると大神官は首を振り
「問題ありません。所詮使い捨て。また補充すればいいのです」
「おい、そんなことより前みたいなバケモノなんか召喚するなよ」
王様が片眉を上げ、大神官に注文をつけた。
「お任せください。今回は私が独自に編み出した強化魔法によってより世界の裂け目を作れますから。先の大神官の脆弱な召喚とは違います」
「そうか。楽しみにしておるぞ」
そう言うと王様は下卑た笑いをした。
部屋に淡い光が一気に放たれた。
そしてすぐにキース達を取り囲む魔法陣を中心にして光が収束し、渦となり、最高潮に輝いたその瞬間
ふっ…と突然、光が宙に霧散し、神官も兵士もバタバタと一斉に倒れた。
「成功か!!!?」
「な、な、な、何が起きたんだ」
「どうしたんだ!おいっ!」
王は椅子の肘掛けを掴み前のめりになり、
宰相は玉座の影に身を隠し、
大神官が一歩前に足を踏み出した
その時、部屋にします凛とした声が響いた。
"させないよ"
声とともに、霧散した光が部屋の天井近くで再収束した。
光の中からテルマが現れた。
地下牢から出たキースが地上へと向っている途中、石造りの神殿にある召喚の部屋と同じ造りをした大広間に行き当たった。
扉は開け放たれていて、キースは恐る恐る中に入っていった。
「似ている…?」
キースが部屋を見渡し、警戒しつつも部屋の中に進んでいった。
中央までやって来たとき、足元で魔法陣が光った。
「っしまった…!!くそっ」
キースはその場から立ち去ろうとしたが、足が地面に縫い留められた様に動くことができなかった。
隠れていた神官と兵士がぞろぞろと現れ、さらに捕縛の魔法を重ねて掛けてきた。
さらに有力な貴族達も離れた観覧する場所に続々と入ってきた。
くっ…どこから……
「数日前からネズミか入り込んでいると報告があったが…。飛んで火に入る夏の虫と古の言葉にあったな。探す手間と運ぶ手間が省けた」
突然低い声が響き渡った。
キースはハッと声がしたほうを見た。
一段高くなっている玉座の後ろにある扉から王とその背後に控えている高位神官と宰相が入ってきた。
「ふん、汚いな。で?これを使えば再度召喚の儀が執り行えるのは間違いないんだろうな?」
王は高位神官に問うた。
「はい、そこにいるものは受容、それが抱えられているのは供給ですので、問題ないかと」
王はニヤリと笑い、眼下の神官に向かい手を上げた。
「うむ、では始めよ」
それを合図にキース達を取り囲む神官が杖を掲げ、詠唱を始めた。
「くっ…こ、これは」
キースを縛り付けている魔法陣に重なるように新たな魔法陣が描かれた。
キースは捕縛魔法で身動きが取れない中、腕の中の少年を守り、精霊を呼んだ。
「せ、精霊よ…て、てをか…してく…れ」
「キース、キースどこ?!」
「ぼくたち…キースがみえない!」
「この、魔法陣が…じゃましてるの!」
精霊達の混乱した声がキースに届く
キースは力の限り片手を伸ばし、魔法陣から指先を数ミリはみ出させた。
「みえた!キース、そこにいる」
「たすける!」
「キース!」
精霊達は正常な判断を失い、キースの許容範囲を遥かに超えた、己の限界まて力をキースに与えようとした。
「ぐわっっっ…」
キースは体が圧し潰されそうなほどの力を受け、何とか指先を動かして力を操った。
バキッバキッと神官達の杖が次々に破壊されていった。
「くそっ!どうなっておるんじゃ!おい、大神官!本当に出来るんだろうな!?」
王様の背後に控えていた宰相が声を荒げた。観覧の貴族たちもざわざわとし始めた。
宰相や貴族には精霊はみえないから突然杖が折れていったようにしか見えなかった。
大神官と呼ばれた高位神官は慌てて錫杖を掲げ、詠唱を始めた。
すると、取り囲む神官たちがグッと苦しそうな声を出し、青筋や汗を出した。
キース達の下の魔法陣が強く光を放った。
大神官はニヤリと笑い、
「これで大丈夫なはずです。神官共の力を強化しましたから」
「それでは神官たちが使い物にならなくなるんじゃないのか?」
宰相が大神官に尋ねると大神官は首を振り
「問題ありません。所詮使い捨て。また補充すればいいのです」
「おい、そんなことより前みたいなバケモノなんか召喚するなよ」
王様が片眉を上げ、大神官に注文をつけた。
「お任せください。今回は私が独自に編み出した強化魔法によってより世界の裂け目を作れますから。先の大神官の脆弱な召喚とは違います」
「そうか。楽しみにしておるぞ」
そう言うと王様は下卑た笑いをした。
部屋に淡い光が一気に放たれた。
そしてすぐにキース達を取り囲む魔法陣を中心にして光が収束し、渦となり、最高潮に輝いたその瞬間
ふっ…と突然、光が宙に霧散し、神官も兵士もバタバタと一斉に倒れた。
「成功か!!!?」
「な、な、な、何が起きたんだ」
「どうしたんだ!おいっ!」
王は椅子の肘掛けを掴み前のめりになり、
宰相は玉座の影に身を隠し、
大神官が一歩前に足を踏み出した
その時、部屋にします凛とした声が響いた。
"させないよ"
声とともに、霧散した光が部屋の天井近くで再収束した。
光の中からテルマが現れた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。

半神の守護者
ぴっさま
ファンタジー
ロッドは何の力も無い少年だったが、異世界の創造神の血縁者だった。
超能力を手に入れたロッドは前世のペット、忠実な従者をお供に世界の守護者として邪神に立ち向かう。
〜概要〜
臨時パーティーにオークの群れの中に取り残されたロッドは、不思議な生き物に助けられこの世界の神と出会う。
実は神の遠い血縁者でこの世界の守護を頼まれたロッドは承諾し、通常では得られない超能力を得る。
そして魂の絆で結ばれたユニークモンスターのペット、従者のホムンクルスの少女を供にした旅が始まる。
■注記
本作品のメインはファンタジー世界においての超能力の行使になります。
他サイトにも投稿中

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる