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「なんだここは…?」
地下牢から出たキースが地上へと向っている途中、石造りの神殿にある召喚の部屋と同じ造りをした大広間に行き当たった。
扉は開け放たれていて、キースは恐る恐る中に入っていった。
「似ている…?」
キースが部屋を見渡し、警戒しつつも部屋の中に進んでいった。
中央までやって来たとき、足元で魔法陣が光った。
「っしまった…!!くそっ」
キースはその場から立ち去ろうとしたが、足が地面に縫い留められた様に動くことができなかった。
隠れていた神官と兵士がぞろぞろと現れ、さらに捕縛の魔法を重ねて掛けてきた。
さらに有力な貴族達も離れた観覧する場所に続々と入ってきた。
くっ…どこから……
「数日前からネズミか入り込んでいると報告があったが…。飛んで火に入る夏の虫と古の言葉にあったな。探す手間と運ぶ手間が省けた」
突然低い声が響き渡った。
キースはハッと声がしたほうを見た。
一段高くなっている玉座の後ろにある扉から王とその背後に控えている高位神官と宰相が入ってきた。
「ふん、汚いな。で?これを使えば再度召喚の儀が執り行えるのは間違いないんだろうな?」
王は高位神官に問うた。
「はい、そこにいるものは受容、それが抱えられているのは供給ですので、問題ないかと」
王はニヤリと笑い、眼下の神官に向かい手を上げた。
「うむ、では始めよ」
それを合図にキース達を取り囲む神官が杖を掲げ、詠唱を始めた。
「くっ…こ、これは」
キースを縛り付けている魔法陣に重なるように新たな魔法陣が描かれた。
キースは捕縛魔法で身動きが取れない中、腕の中の少年を守り、精霊を呼んだ。
「せ、精霊よ…て、てをか…してく…れ」
「キース、キースどこ?!」
「ぼくたち…キースがみえない!」
「この、魔法陣が…じゃましてるの!」
精霊達の混乱した声がキースに届く
キースは力の限り片手を伸ばし、魔法陣から指先を数ミリはみ出させた。
「みえた!キース、そこにいる」
「たすける!」
「キース!」
精霊達は正常な判断を失い、キースの許容範囲を遥かに超えた、己の限界まて力をキースに与えようとした。
「ぐわっっっ…」
キースは体が圧し潰されそうなほどの力を受け、何とか指先を動かして力を操った。
バキッバキッと神官達の杖が次々に破壊されていった。
「くそっ!どうなっておるんじゃ!おい、大神官!本当に出来るんだろうな!?」
王様の背後に控えていた宰相が声を荒げた。観覧の貴族たちもざわざわとし始めた。
宰相や貴族には精霊はみえないから突然杖が折れていったようにしか見えなかった。
大神官と呼ばれた高位神官は慌てて錫杖を掲げ、詠唱を始めた。
すると、取り囲む神官たちがグッと苦しそうな声を出し、青筋や汗を出した。
キース達の下の魔法陣が強く光を放った。
大神官はニヤリと笑い、
「これで大丈夫なはずです。神官共の力を強化しましたから」
「それでは神官たちが使い物にならなくなるんじゃないのか?」
宰相が大神官に尋ねると大神官は首を振り
「問題ありません。所詮使い捨て。また補充すればいいのです」
「おい、そんなことより前みたいなバケモノなんか召喚するなよ」
王様が片眉を上げ、大神官に注文をつけた。
「お任せください。今回は私が独自に編み出した強化魔法によってより世界の裂け目を作れますから。先の大神官の脆弱な召喚とは違います」
「そうか。楽しみにしておるぞ」
そう言うと王様は下卑た笑いをした。
部屋に淡い光が一気に放たれた。
そしてすぐにキース達を取り囲む魔法陣を中心にして光が収束し、渦となり、最高潮に輝いたその瞬間
ふっ…と突然、光が宙に霧散し、神官も兵士もバタバタと一斉に倒れた。
「成功か!!!?」
「な、な、な、何が起きたんだ」
「どうしたんだ!おいっ!」
王は椅子の肘掛けを掴み前のめりになり、
宰相は玉座の影に身を隠し、
大神官が一歩前に足を踏み出した
その時、部屋にします凛とした声が響いた。
"させないよ"
声とともに、霧散した光が部屋の天井近くで再収束した。
光の中からテルマが現れた。
地下牢から出たキースが地上へと向っている途中、石造りの神殿にある召喚の部屋と同じ造りをした大広間に行き当たった。
扉は開け放たれていて、キースは恐る恐る中に入っていった。
「似ている…?」
キースが部屋を見渡し、警戒しつつも部屋の中に進んでいった。
中央までやって来たとき、足元で魔法陣が光った。
「っしまった…!!くそっ」
キースはその場から立ち去ろうとしたが、足が地面に縫い留められた様に動くことができなかった。
隠れていた神官と兵士がぞろぞろと現れ、さらに捕縛の魔法を重ねて掛けてきた。
さらに有力な貴族達も離れた観覧する場所に続々と入ってきた。
くっ…どこから……
「数日前からネズミか入り込んでいると報告があったが…。飛んで火に入る夏の虫と古の言葉にあったな。探す手間と運ぶ手間が省けた」
突然低い声が響き渡った。
キースはハッと声がしたほうを見た。
一段高くなっている玉座の後ろにある扉から王とその背後に控えている高位神官と宰相が入ってきた。
「ふん、汚いな。で?これを使えば再度召喚の儀が執り行えるのは間違いないんだろうな?」
王は高位神官に問うた。
「はい、そこにいるものは受容、それが抱えられているのは供給ですので、問題ないかと」
王はニヤリと笑い、眼下の神官に向かい手を上げた。
「うむ、では始めよ」
それを合図にキース達を取り囲む神官が杖を掲げ、詠唱を始めた。
「くっ…こ、これは」
キースを縛り付けている魔法陣に重なるように新たな魔法陣が描かれた。
キースは捕縛魔法で身動きが取れない中、腕の中の少年を守り、精霊を呼んだ。
「せ、精霊よ…て、てをか…してく…れ」
「キース、キースどこ?!」
「ぼくたち…キースがみえない!」
「この、魔法陣が…じゃましてるの!」
精霊達の混乱した声がキースに届く
キースは力の限り片手を伸ばし、魔法陣から指先を数ミリはみ出させた。
「みえた!キース、そこにいる」
「たすける!」
「キース!」
精霊達は正常な判断を失い、キースの許容範囲を遥かに超えた、己の限界まて力をキースに与えようとした。
「ぐわっっっ…」
キースは体が圧し潰されそうなほどの力を受け、何とか指先を動かして力を操った。
バキッバキッと神官達の杖が次々に破壊されていった。
「くそっ!どうなっておるんじゃ!おい、大神官!本当に出来るんだろうな!?」
王様の背後に控えていた宰相が声を荒げた。観覧の貴族たちもざわざわとし始めた。
宰相や貴族には精霊はみえないから突然杖が折れていったようにしか見えなかった。
大神官と呼ばれた高位神官は慌てて錫杖を掲げ、詠唱を始めた。
すると、取り囲む神官たちがグッと苦しそうな声を出し、青筋や汗を出した。
キース達の下の魔法陣が強く光を放った。
大神官はニヤリと笑い、
「これで大丈夫なはずです。神官共の力を強化しましたから」
「それでは神官たちが使い物にならなくなるんじゃないのか?」
宰相が大神官に尋ねると大神官は首を振り
「問題ありません。所詮使い捨て。また補充すればいいのです」
「おい、そんなことより前みたいなバケモノなんか召喚するなよ」
王様が片眉を上げ、大神官に注文をつけた。
「お任せください。今回は私が独自に編み出した強化魔法によってより世界の裂け目を作れますから。先の大神官の脆弱な召喚とは違います」
「そうか。楽しみにしておるぞ」
そう言うと王様は下卑た笑いをした。
部屋に淡い光が一気に放たれた。
そしてすぐにキース達を取り囲む魔法陣を中心にして光が収束し、渦となり、最高潮に輝いたその瞬間
ふっ…と突然、光が宙に霧散し、神官も兵士もバタバタと一斉に倒れた。
「成功か!!!?」
「な、な、な、何が起きたんだ」
「どうしたんだ!おいっ!」
王は椅子の肘掛けを掴み前のめりになり、
宰相は玉座の影に身を隠し、
大神官が一歩前に足を踏み出した
その時、部屋にします凛とした声が響いた。
"させないよ"
声とともに、霧散した光が部屋の天井近くで再収束した。
光の中からテルマが現れた。
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