死んだ私の死ねない世界でのままならない生活

周乃 太葉

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テルマが食堂に着く頃には全員食事を終えて片付けをしているところだった。

"よーし、それが終わったらみんなこっちに集まれ~"

テルマはそう言うと食堂の窓の外の庭に椅子を4方向に2個、8個、11個、そして1個と配置した。椅子は1個のところだけ大きく、両側は中くらいからベビー用へとサイズが小さくなるよう並べられた。

そして椅子1個ずつにある細工を施した。

テルマがコソコソし終える頃、食堂からゾロゾロと子ども達とソフィが出て来た。

「テルマ、来たよー」「きたよぉ」
「テルマさん、どうしたんだい?」

"やぁ、みんな揃ったね。じゃぁ、1人ずつ案内するからここに1列に並んで"

テルマはソフィに3方向に並べた椅子の1個だけ置いてあるところを指差した。

"まずはソフィさん、あそこの椅子に座って"

「あそこかい?」

"そう、大人席"

「なにが始まるんだろうかねぇ」

そう言いながらソフィは言われた通り椅子に座った。

すると、ソフィの足元に『ソフィ・トゥラチエ』と書かれた板が出て来た。

"これは名札だよ。みんなの名前が書いてある。まぁ、まだ文字読めない子どももいるけど、自分の名前の文字を知ることは必要だ"

テルマはそう言って今度は椅子を8個並べてある右側にやって来た。端から椅子を指し、

"カトレアはここへ。セルティス、ここ。リリィ、ここ。"

呼ばれた3人は移動した。すると、ソフィと同じく名札が足元に現れた。

"ニア、サイ、ここにおいで。テオ、ラジ、ウィローとシダー、それにルピを座らせて"

テオは2人を抱っこし、ラジはルピを抱っこしつた、ニアとサイの手を引いた。

ニア達も名札が現れたが、良くわかっていないようで遊び始めた。

残された、ソフィと一緒に来た子ども達はビクビクしていた。
自分たちに名前はない…そのことを言えずにいたからだ。


"さてと、じゃあ、君たちも"

テルマが最年長の10才の男の子の手を取り、椅子に案内した。
男の子が座ると名札が現れ、テルマが男の子に手渡した。

"まずは君、フェザンド・トリアーロ、君の名だよ"

フェザンドは自分の名前が書かれた名札を恐る恐る触って何とも言えない、こみ上げてきた感情に思わず涙が零れそうになった。

次に彼と同い年の女の子、彼女にはカナリー・トリアーロの名を与えた。
彼女もフェザンドと同じ様に名札に触れ、大事そうに抱きしめた。

9才の同い年の男の子2人には、アウル・トリアーロ、ホーク・トリアーロの名が与えられた。
彼らは二人で呼び合って自分たちの名前を噛み締めた。

テルマは、続けて

8才の女の子にダヴ・トリアーロ
6才の男の子にはファルコン・トリアーロ
5才の女の子、パキラート・トリアーロ
同い年の男の子、カイト・トリアーロ

彼らに名を与えた。4人ともキャッキャッと自分だけの名前に喜んだ。

1才の女の子2人、クレイン・トリアーロ、アイビス・トリアーロ。
そして、最年少のロビン・トリアーロは生後半年、ルピがここに来たときと同じ月齢の赤ちゃんだった。

"トリアーロは一緒に来た家族の名前だよ。カトレアたちのドゥアーロとおんなじ"

テルマは最後の説明をした。

"よし、みんな、順番に自分の名前を言ってみよう~!はい、ソフィさんから"

名付けの儀式に感動してドワァァァと涙を流していたソフィはテルマからの不意打ちにヒュッと涙が引っ込んだ。

「あ、あぁ、ゴホン。私はソフィ、ソフィ・トゥラチエ。ソフィと呼んでおくれ」

"ソフィ、よろしくね。次、テオ"

「はい、僕はテオーリオ・グヴィド。よろしくね。僕もテルマさんから名をもらったんだよ」

テオがそう挨拶すると、ドゥアーロ達もトリアーロ達が「えっ?」「そうなの?」「いっしょ?」とざわついた。
そこにラジィトが割って入った。

「そう、僕らは同じだよ。僕はラジィト・グヴィド。テオーリオと兄弟さ」

"そう、だからテオーリオとラジィトとも仲良くしてね。一番目の子ども達だ"

テルマがテオーリオとラジィトの肩に手を置いて告げ、テオーリオとラジィトを椅子に座らせた。

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