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そう言った瞬間、テルマは煙に包まれた。
まったく見た目だけで判断し過ぎだろう
王様に思い出してもらうために姿を変えることにした。
…いや、戻したが正解か…。
相当苛々しているのは自覚している。
言い訳させてもらえぼあの目線、限界だったんだ。
姿は様々変えられるけど、心はやっぱりまだ死んだ時、百歳超えを保っているからね。今さら色の含んだ欲を向けられても気色悪いだけだ。
"ほれ、王様、この姿なら侍ってやってもいいぞ。
存分に楽しませておくれよ。天国をみせてくれるんだろ?
なぁ、お前が私から奪った天国はどんなとこだい?"
テルマは召喚されたあの時の、生気を感じない生ける屍の姿で王様に迫った。
「ギャッ!来るな来るな!」
デレたゲスイ顔から一瞬で青褪めた王様は尻餅をつき、後ずさった。
"遠慮するなよ。恥ずかしがっているのか?"
グイグイと近寄っていくと王様はどんどん後退る。
器用にもスピードを上げて。
「お、お前、何しに来た!余は気味の悪いものに用はない去れ!去れ!」
王は床に伏して動けない大神官や宰相をテルマの方へ蹴りながら後ずさった。
"おや?夜伽はいいのかい?ハッ、話にならんな"
テルマは侮蔑の表情を浮かべた。
お遊びもここまでか…と手を上げ、魔法であっという間に王様の四肢を拘束した。
「な、な、何をする!無礼者め!!不敬な!!」
テルマは深くため息を吐き、魔法をもう一度使い、王様の口を塞いだ。
"五月蝿い。しーっ。わかる?
なぁ、王様、冥土の土産にちょっとババアの話に付き合わないかい?
私はね、こう見えて、実はものすごく、ものすごーく怒っているんだよ。
ちょっとぐらい吐き出させてくれよ。かわいい子ども達には聞かせられないだろう?"
「ん、んー、んんん!」
王様の抗議を無視してテルマは話を進めた。
"私はね、今生の終わりを愉しみにしていたんだよ。
長生きしたからね。あぁ、ここまて来た。やっとだと。
先に逝った旦那、親、姉、親戚、友人………。また会えたりするのかな?とか考えたりしてね。
んぁ?いやいや、死にたかったんじゃないよ?
でも、100歳も超えた。金杯ももらった。私は十分なほど充実した人生を歩んだと自負している。
まっ、長い人生、それなりの波乱万丈もあったし、人並みな後悔や未練がないわけではないけど、概ね満足していたんだよ。
死後の世界や転生なんてね。そんなものはファンタジーの世界だよ。あったら面白いなと思ってはいたけど。まさかね、巻き込まれるとは思ってもみなかったさ。
可愛い子もいるし、満更でもないさ。
ただね、終われなかったことがどうしても、どうしても…。
ちゃんと終わりたかっただけなのに。
大神 照天の、この人生の幕を下ろすこのために色々準備もしたんだよ。
それが叶うところまでいったんだよ。
なのに、なのにさ、
なんだい、お前の、その下らない、碌でもない欲は!
そんなもののせいで私のささやかな希望もこれからの安寧をも奪われたのか!!
はぁ~~~。
許せるわけ無いだろう?
なぁ、私の怒り、お前達、理解してくれるか?
だから、王様。私も奪おうと思うんだ。いいだろう?
やられたら倍返し、万倍返し、だろう?"
そう言うなりテルマは部屋中に色とりどりの光球を浮かび上がらせた。
光球は黒、鈍色、ヘドロ色、血豆色、見ているだけで不安を煽るような色が揃っていた。
「ん、んんん!んーん!」
"気になるかい?
ふふっ、これはこの地に色濃く残る、今までお前に向けられた様々な人の感情を具象化したものだよ。
ふふ、見事なまでに負の感情しかないね"
「んんんん!!」
"王様、説明してやろう。
これは憎悪、こっちが嫌悪、これは忌避、怨恨、侮蔑、怨嗟、ほーんとに慕われてないね。呪いなんてものもあるね"
テルマは近くにある鈍く光る球をお手玉のようにくるくる回した。
"これらをお前の肉体と魂に届けることにしたよ。
やり返すと言っても、私の安寧と何が等価になるかわからないから、私は私の方法でやり返すことにしたよ"
「んん!?」
"お前はどうにも人の感情に鈍いようだから直接浴びて学ぶがいい"
王様は首を振り必死に抵抗した。
テルマは微笑み返した。
"安心しな。一度には与えないよ。そんなことをしたら負荷に耐えられなくて気が狂うか、死んじゃうだろ?私はそんなに優しくないよ"
「んーっ!!」
"そうだな、一日一人分、これでいこう。これなら王様耐えられるだろう。それが終われば安寧の死を与えてあげよう。ん~数百万人か、さて、何年になるかな?………ははっ、万を超えるか…長いねぇ"
テルマはとても愉しそうに笑った。
王様は話の半分も理解していなかったがとにかく逃げようと身体の動かせるところを総動員してジタバタしていた。
"王様、貴方には一日の終わりに浄化と状態回復魔法を施してあげよう。私からのプレゼントだよ"
一方的にそう言うと、
テルマは王様を他者から見えるけど、干渉できない空間に閉じ込めた。
"これは戒めだよ。分不相応なこの国の。この姿を隠すことは許さない"
王様が閉じ込められた空間は球体となった。
そこにメキメキとものすごい勢いで城を壊しながら伸びてきた蔓が絡みつき、球体を持ち上げた。
蔓は球体を何人も触れないよう、でも、どこからでも見えるようにガチッと固定された。
まったく見た目だけで判断し過ぎだろう
王様に思い出してもらうために姿を変えることにした。
…いや、戻したが正解か…。
相当苛々しているのは自覚している。
言い訳させてもらえぼあの目線、限界だったんだ。
姿は様々変えられるけど、心はやっぱりまだ死んだ時、百歳超えを保っているからね。今さら色の含んだ欲を向けられても気色悪いだけだ。
"ほれ、王様、この姿なら侍ってやってもいいぞ。
存分に楽しませておくれよ。天国をみせてくれるんだろ?
なぁ、お前が私から奪った天国はどんなとこだい?"
テルマは召喚されたあの時の、生気を感じない生ける屍の姿で王様に迫った。
「ギャッ!来るな来るな!」
デレたゲスイ顔から一瞬で青褪めた王様は尻餅をつき、後ずさった。
"遠慮するなよ。恥ずかしがっているのか?"
グイグイと近寄っていくと王様はどんどん後退る。
器用にもスピードを上げて。
「お、お前、何しに来た!余は気味の悪いものに用はない去れ!去れ!」
王は床に伏して動けない大神官や宰相をテルマの方へ蹴りながら後ずさった。
"おや?夜伽はいいのかい?ハッ、話にならんな"
テルマは侮蔑の表情を浮かべた。
お遊びもここまでか…と手を上げ、魔法であっという間に王様の四肢を拘束した。
「な、な、何をする!無礼者め!!不敬な!!」
テルマは深くため息を吐き、魔法をもう一度使い、王様の口を塞いだ。
"五月蝿い。しーっ。わかる?
なぁ、王様、冥土の土産にちょっとババアの話に付き合わないかい?
私はね、こう見えて、実はものすごく、ものすごーく怒っているんだよ。
ちょっとぐらい吐き出させてくれよ。かわいい子ども達には聞かせられないだろう?"
「ん、んー、んんん!」
王様の抗議を無視してテルマは話を進めた。
"私はね、今生の終わりを愉しみにしていたんだよ。
長生きしたからね。あぁ、ここまて来た。やっとだと。
先に逝った旦那、親、姉、親戚、友人………。また会えたりするのかな?とか考えたりしてね。
んぁ?いやいや、死にたかったんじゃないよ?
でも、100歳も超えた。金杯ももらった。私は十分なほど充実した人生を歩んだと自負している。
まっ、長い人生、それなりの波乱万丈もあったし、人並みな後悔や未練がないわけではないけど、概ね満足していたんだよ。
死後の世界や転生なんてね。そんなものはファンタジーの世界だよ。あったら面白いなと思ってはいたけど。まさかね、巻き込まれるとは思ってもみなかったさ。
可愛い子もいるし、満更でもないさ。
ただね、終われなかったことがどうしても、どうしても…。
ちゃんと終わりたかっただけなのに。
大神 照天の、この人生の幕を下ろすこのために色々準備もしたんだよ。
それが叶うところまでいったんだよ。
なのに、なのにさ、
なんだい、お前の、その下らない、碌でもない欲は!
そんなもののせいで私のささやかな希望もこれからの安寧をも奪われたのか!!
はぁ~~~。
許せるわけ無いだろう?
なぁ、私の怒り、お前達、理解してくれるか?
だから、王様。私も奪おうと思うんだ。いいだろう?
やられたら倍返し、万倍返し、だろう?"
そう言うなりテルマは部屋中に色とりどりの光球を浮かび上がらせた。
光球は黒、鈍色、ヘドロ色、血豆色、見ているだけで不安を煽るような色が揃っていた。
「ん、んんん!んーん!」
"気になるかい?
ふふっ、これはこの地に色濃く残る、今までお前に向けられた様々な人の感情を具象化したものだよ。
ふふ、見事なまでに負の感情しかないね"
「んんんん!!」
"王様、説明してやろう。
これは憎悪、こっちが嫌悪、これは忌避、怨恨、侮蔑、怨嗟、ほーんとに慕われてないね。呪いなんてものもあるね"
テルマは近くにある鈍く光る球をお手玉のようにくるくる回した。
"これらをお前の肉体と魂に届けることにしたよ。
やり返すと言っても、私の安寧と何が等価になるかわからないから、私は私の方法でやり返すことにしたよ"
「んん!?」
"お前はどうにも人の感情に鈍いようだから直接浴びて学ぶがいい"
王様は首を振り必死に抵抗した。
テルマは微笑み返した。
"安心しな。一度には与えないよ。そんなことをしたら負荷に耐えられなくて気が狂うか、死んじゃうだろ?私はそんなに優しくないよ"
「んーっ!!」
"そうだな、一日一人分、これでいこう。これなら王様耐えられるだろう。それが終われば安寧の死を与えてあげよう。ん~数百万人か、さて、何年になるかな?………ははっ、万を超えるか…長いねぇ"
テルマはとても愉しそうに笑った。
王様は話の半分も理解していなかったがとにかく逃げようと身体の動かせるところを総動員してジタバタしていた。
"王様、貴方には一日の終わりに浄化と状態回復魔法を施してあげよう。私からのプレゼントだよ"
一方的にそう言うと、
テルマは王様を他者から見えるけど、干渉できない空間に閉じ込めた。
"これは戒めだよ。分不相応なこの国の。この姿を隠すことは許さない"
王様が閉じ込められた空間は球体となった。
そこにメキメキとものすごい勢いで城を壊しながら伸びてきた蔓が絡みつき、球体を持ち上げた。
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