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時は戻り…
「無事に行けたよな…?」
キースは光の残滓が残る魔法陣から空に視線を移し、送り出したソフィと子ども達が無事にテルマの元に辿り着くことを祈った。
「さてと…」
あいつをどうにかしないと…だが…
その時、神殿に潜り込んでいた間諜がどこからともなく現れ、
「キース!神殿にはもう俺とお前しかいない。神殿の結界を起動しておいた。あれはここから出られないから放っておいて大丈夫だ」
必要事項を告げるとまた消えていった。
「あ、あぁ…」
キースは一瞬躊躇ったが、すぐに精霊に呼びかけた。
「風の精霊よ、俺を王宮まで運んでくれ!」
精霊はすぐさま答えた。
「いいよー」
「まかせてー」
「せーのっっっ」
風の精霊たちはキースを王宮まで飛ばした。
弓で弾いた矢の様な雑な飛ばし方にキースは途中から気を失った。
「ああああああぁぁぁぁ………………………」
キースが王宮にぶつかる直前で風の精霊達は空気で包んでキースに衝撃がいかないようにした。
ドゴーーーーン
その代わり、王宮の壁を破壊してしまったが、精霊達の気にすることではなかった。
「キース、キース、ついたよー」
「ぼくたち役に立った?」
「えらいえらい?」
「ん…んぁ……こ、ここは…?」
「おうきゅうだよ」
「ぼくたち役に立った?」
「えらいえらい?」
褒めてもらいたい精霊達がキースの顔をペチペチと叩いたり、つまんだりしたことで、キースは意識を取り戻した。
王宮に着いたことを認識できたキースは精霊達に御礼をいい、もう1つお願い事をした。
「あ、あぁ、有難うな。もう1つ頼んでいいか?隠された子供を探してほしいんだ」
「わかったー」
「いたいたー」
「本当か!?早いな、有難うな。悪いが案内してほしい」
キースは精霊の案内の元、見付からないように隠れながらだったから時間はかかったが、王宮の地下室に捕らわれていた少女の下へ行くことが出来た。
そこは酷い有り様だった。
少女は正気を失い、酷い錯乱状態だった。
焦点の合わない目から涙がとめどなく流れていた。
体は器具に拘束され、衣類は剥ぎ取られ、顔や全身に痣や切り傷があり、さらに下肢が赤黒くいものと茶色く変色したもので汚され異臭を放っていた。
そして、彼女の足下には焼け焦げた死体が3つ転がっていた。
「うっ…」
キースは惨状と異臭で思わず顔を背けた。
息を深く吐くと、意を決して彼女の拘束を外そうと近寄ろうとしたその時、
少女からシューと空気が漏れるような音がした。
少女の体がどんどん萎んでカラカラの木の枝の様になってしまった。
魔力の過剰消費による枯死だった。
「あぁ………そんな…」
少女に対して間に合わなくて、助けられなくて申し訳ない気持ちと少女のこれからを思うといっそこのほうが…という気持ちが相まった。
「安らかに…」
キースは少女への追悼の言葉を口にし、部屋を後にした。
少女の身体は砂のようにサラサラと崩れ落ちて風に乗って跡形も無く消えていった。
捕らわれた少女の救出に失敗したキースは意気消沈し、王宮こらの脱出しようと出口に向かった。その途中で水の精霊が
「キース、あっちに子どもがいるよ。たすける?」
「本当か!?情報にはなかったが…」
キースは立ち止まり、考え込んだ。
事前に得た情報にない子どもの存在をにわかに信じられなかったが…
すると、他の精霊たちも口々にその子どもの話をした。
「あのこ、ずっといる」
「あのこ、あそこからでたことない」
「あのこ、あそこでうまれた」
「よし、助けよう。案内してくれ」
キースはその子どもを助ける決断をした。
精霊達の先導でその子どもがいる地下牢にやってきた。
その地下牢は少女がいた地下室よりもさらに奥深くに隠されていた。
キースが見つけたのは全く動かない人形だった。
「人形?………いや、子どもか…?」
そこにいたのは横たわっていたのは人形のような子どもだった。
「お、おい、生きてるか?」
キースは、鍵を壊し、ドアを壊し、中へ入った。
そこは何もなかった。
子どもの横にはボロ布を纏った人骨が転がっていた。
子どもを抱き上げるとキースはすぐに異変に気が付いた。
「こ、これは…」
子どもは神経機能が麻痺しているのか全身が虚脱状態で五感の機能を失っていた。
「どくのせい」
精霊がキースの心を読んだかの如く、疑問に答えた。
「この子、あの子からうまれた」
「あの子、どくたべさせられた」
「この子も、でも、魔、つよい、だから、いのち、ある」
「なるほど…」
キースは状況を整理した。
そこの人骨が母親で毒殺された。
この子も何らかの方法で毒を盛られたが、魔力が強大で命だけは助かった。
と言う事か…。
こんなところに秘匿された子ども…
…間違いなく王族の落胤だろう。
そしてなくなっている彼女は妃にも愛人にも妾にも出来ない、公に出来ない存在。
はぁ~…
キースは王族の無体に溜め息を付くと、形見として人骨の横に落ちていた特徴的なイヤーカフを拾い、子どもを背負い、地下牢から出て地上に向かった。
「無事に行けたよな…?」
キースは光の残滓が残る魔法陣から空に視線を移し、送り出したソフィと子ども達が無事にテルマの元に辿り着くことを祈った。
「さてと…」
あいつをどうにかしないと…だが…
その時、神殿に潜り込んでいた間諜がどこからともなく現れ、
「キース!神殿にはもう俺とお前しかいない。神殿の結界を起動しておいた。あれはここから出られないから放っておいて大丈夫だ」
必要事項を告げるとまた消えていった。
「あ、あぁ…」
キースは一瞬躊躇ったが、すぐに精霊に呼びかけた。
「風の精霊よ、俺を王宮まで運んでくれ!」
精霊はすぐさま答えた。
「いいよー」
「まかせてー」
「せーのっっっ」
風の精霊たちはキースを王宮まで飛ばした。
弓で弾いた矢の様な雑な飛ばし方にキースは途中から気を失った。
「ああああああぁぁぁぁ………………………」
キースが王宮にぶつかる直前で風の精霊達は空気で包んでキースに衝撃がいかないようにした。
ドゴーーーーン
その代わり、王宮の壁を破壊してしまったが、精霊達の気にすることではなかった。
「キース、キース、ついたよー」
「ぼくたち役に立った?」
「えらいえらい?」
「ん…んぁ……こ、ここは…?」
「おうきゅうだよ」
「ぼくたち役に立った?」
「えらいえらい?」
褒めてもらいたい精霊達がキースの顔をペチペチと叩いたり、つまんだりしたことで、キースは意識を取り戻した。
王宮に着いたことを認識できたキースは精霊達に御礼をいい、もう1つお願い事をした。
「あ、あぁ、有難うな。もう1つ頼んでいいか?隠された子供を探してほしいんだ」
「わかったー」
「いたいたー」
「本当か!?早いな、有難うな。悪いが案内してほしい」
キースは精霊の案内の元、見付からないように隠れながらだったから時間はかかったが、王宮の地下室に捕らわれていた少女の下へ行くことが出来た。
そこは酷い有り様だった。
少女は正気を失い、酷い錯乱状態だった。
焦点の合わない目から涙がとめどなく流れていた。
体は器具に拘束され、衣類は剥ぎ取られ、顔や全身に痣や切り傷があり、さらに下肢が赤黒くいものと茶色く変色したもので汚され異臭を放っていた。
そして、彼女の足下には焼け焦げた死体が3つ転がっていた。
「うっ…」
キースは惨状と異臭で思わず顔を背けた。
息を深く吐くと、意を決して彼女の拘束を外そうと近寄ろうとしたその時、
少女からシューと空気が漏れるような音がした。
少女の体がどんどん萎んでカラカラの木の枝の様になってしまった。
魔力の過剰消費による枯死だった。
「あぁ………そんな…」
少女に対して間に合わなくて、助けられなくて申し訳ない気持ちと少女のこれからを思うといっそこのほうが…という気持ちが相まった。
「安らかに…」
キースは少女への追悼の言葉を口にし、部屋を後にした。
少女の身体は砂のようにサラサラと崩れ落ちて風に乗って跡形も無く消えていった。
捕らわれた少女の救出に失敗したキースは意気消沈し、王宮こらの脱出しようと出口に向かった。その途中で水の精霊が
「キース、あっちに子どもがいるよ。たすける?」
「本当か!?情報にはなかったが…」
キースは立ち止まり、考え込んだ。
事前に得た情報にない子どもの存在をにわかに信じられなかったが…
すると、他の精霊たちも口々にその子どもの話をした。
「あのこ、ずっといる」
「あのこ、あそこからでたことない」
「あのこ、あそこでうまれた」
「よし、助けよう。案内してくれ」
キースはその子どもを助ける決断をした。
精霊達の先導でその子どもがいる地下牢にやってきた。
その地下牢は少女がいた地下室よりもさらに奥深くに隠されていた。
キースが見つけたのは全く動かない人形だった。
「人形?………いや、子どもか…?」
そこにいたのは横たわっていたのは人形のような子どもだった。
「お、おい、生きてるか?」
キースは、鍵を壊し、ドアを壊し、中へ入った。
そこは何もなかった。
子どもの横にはボロ布を纏った人骨が転がっていた。
子どもを抱き上げるとキースはすぐに異変に気が付いた。
「こ、これは…」
子どもは神経機能が麻痺しているのか全身が虚脱状態で五感の機能を失っていた。
「どくのせい」
精霊がキースの心を読んだかの如く、疑問に答えた。
「この子、あの子からうまれた」
「あの子、どくたべさせられた」
「この子も、でも、魔、つよい、だから、いのち、ある」
「なるほど…」
キースは状況を整理した。
そこの人骨が母親で毒殺された。
この子も何らかの方法で毒を盛られたが、魔力が強大で命だけは助かった。
と言う事か…。
こんなところに秘匿された子ども…
…間違いなく王族の落胤だろう。
そしてなくなっている彼女は妃にも愛人にも妾にも出来ない、公に出来ない存在。
はぁ~…
キースは王族の無体に溜め息を付くと、形見として人骨の横に落ちていた特徴的なイヤーカフを拾い、子どもを背負い、地下牢から出て地上に向かった。
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