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神殿の広場でこの先を悩んでいるとソフィが合流した。
「キース!!」
「ソフィ?どうして?」
「やっぱりお前さん1人だけじゃ心配でね。しかし、どうなっているんだい?もぬけの殻じゃないか。大神官から鍵を奪えたんだね」
「あぁ、大神官はミイラになって死んでいたよ」
「なんだって!?何でまた…。ん?子供たちか、これで全員かい?うんうん、皆生きていたんだね」
ソフィは難しい顔をしたが、子供たちに視線を移し、全員を見回した。
「キース、この子達をどうするつもりだい?」
「悩んでる…安全な場所、なんてないだろう?」
「気付いたかい。魔獣がこちらまでやってくるのも時間の問題だ」
「そうか…と、なると………」
バーン!!ドゴーン!!
話を遮るようにキースたちがいる神殿の広場の横で爆発が起きた。それと同時に大型の魔獣が現れた。魔獣は広場に向かってきた。
「ちっ、ここまで来たか。迷っている暇はない。ソフィ、今から俺の古い知人の所にこの子達を送る。とりあえず確実に安全と言える場所だが、遠いところにある。戻ってこれないかもしれない」
「致し方ないね。緊急事態だ。私も行くよ」
「いや、だが、戻ってこられないかもしれない」
「覚悟の上だよ」
キースはマジックバッグから眼鏡を出し、掛けた。
地面にニーサと子供たちを囲みこむように丸を描き、バングルに手を当て
「精霊よ、力を貸してくれ、レヴェーナス」
と唱えた。
ソフィと子供たちは光に包まれ、姿が消えた。
「ヨシッ」
キースはマントを出し、羽織ると
「風の精霊よ、俺を王宮まで運んでくれ」
「いいよ、いいよ」
「たすけるー」
風の精霊たちはキースを王宮まで飛ばした。
「ああああああぁぁぁぁ………………………」
弓で弾いた矢の様な雑な飛ばし方にキースは気を失った。
一方、ソフィは光に包まれ、思わず目を瞑った。
光が落ち着き、目を開けると、そこは見たこともない建物の中だった。
「こ、ここは…?」
そこに一人の少年がやってきて挨拶をした。
「ようこそいらっしゃいました。僕はテオーリオ、キースさんの友人です。主が待っております。さぁ、こちらへどうぞ」
「友人…?あぁ、キースが言ってた古い知人と言うのはお前さん…いや、それにしては若い…」
一人の少年が出迎えてくれたが、キースの言っていた人物かどうか確信がもてなかったソフィは子ども達を抱きかかえ、その場から動かなかった。
「古い…そうですね。僕がキースさんと初めて知り合ったのは4年前になりますから古いと言えば古い知人に当たりますね」
「4年…」
ソフィがキースと知り合うより前の知人ということか…
「疑ってすまなかったね。案内お願いできるかな」
「はい、では皆さん、着いてきてください。小さなお子さんはこちらに乗ってください」
そう言うとテオーリオは見たことがない、椅子が複数付いた箱に車輪とバーが付いている乗り物?を指した。
乳幼児をそこに乗せるとテオーリオはバーを掴んで押し出した。ドアまでは緩やかな坂道になっており、子供達を乗せた手押し車でも楽に行けた。
ドアを抜け、建物から出るとソフィは今まで見たことがない街並みに仰天した。
道は綺麗に整えられ、脇には青々とした芝生が広がっており、花壇には色とりどりの花が咲き誇っていた。
テオーリオはソフィと子供たちを庭園の一画にある東屋に案内した。
そこには気品に溢れた女性が待っていた。
私と同じ年頃…?、いや、それよりも若いような、いや、本当はもっと……。それにしても威圧されそうな気品…貴族、いや王族…?
たくさんの人間を見てきたソフィにもその女性の年齢や出自が推測出来なかった。
ソフィが動けないでいると、その女性が口を開いた。
"初めまして、ソフィさん。ようこそ私の箱庭へ。私のことはテルマと呼んでくたさい。"
その人の声は穏やかで心地良い声で直接脳に響くようだった。話し方や雰囲気から長年生きてきた様な印象を受けた。
年齢不詳だわ、、不思議な人。
それがソフィのテルマに対する第一印象だった。
「は、初めまして。キースの紹介で来ました。ソフィと申します。この子達は…」
ソフィは緊張しつつ、しっかりとした口調で挨拶を返した。
"ふふふ、まぁそんなに緊張しないで。わかってます。テオーリオ、子供たちをお風呂へ、その後食事を。ソフィさんは少しお話しましょう?"
テルマはテオーリオにそう言うと、テオーリオは歩ける子供達に声を掛け、手押し車を押して屋敷に連れて行った。
テルマは残されたソフィに座るように促し、お茶を自ら入れた。
"さてと、キースからどこまで聞いてます?"
ソフィは緊張な面持ちのままお茶には手を付けず、固い声で
「確実に安全な場所と」
"なるほど。まぁ間違いないですね。ちょっと説明しますので、緊張を解いてくださいな。私も普段の喋り方に戻すよ"
テルマはふっと力を抜き、頬を緩ませた。
ソフィはテルマの意外な言葉に少し緊張を和らげた。
テルマはキースに説明したときのように地図を出し、机の上に広げた。
"ここは貴女方の国とは全然異なる場所にあるの
まぁなんでこんな所に住んでいるのかといえば…たまたまなんだけどね。端的に言うと辿り着いた先がここだったって話さ"
ソフィは初めて見る世界地図に頭がついていかず、曖昧な相槌を打つことしか出来なかった。。
「は、はぁ」
"キースはさっき会った少年、テオーリオともう一人のラジィトってのがいるんだけど、彼らの恩人なんだって。
そして、テオーリオとラジィトは私の恩人。
恩人の恩人は助けないとだろ?"
「は、はぁ。そんなもんですかねぇ」
テルマはふふっと笑って
"ソフィさんも満身創痍だ。まっ、少しここで静養したらいい。その後のことはまたゆっくり考えよう、ラジィト!"
「はーい」
"ソフィさんもお風呂に案内してあげて"
「まかせろ!」
ソフィは理解が追い付かないままラジィトと呼ばれた少年に案内された。
「キース!!」
「ソフィ?どうして?」
「やっぱりお前さん1人だけじゃ心配でね。しかし、どうなっているんだい?もぬけの殻じゃないか。大神官から鍵を奪えたんだね」
「あぁ、大神官はミイラになって死んでいたよ」
「なんだって!?何でまた…。ん?子供たちか、これで全員かい?うんうん、皆生きていたんだね」
ソフィは難しい顔をしたが、子供たちに視線を移し、全員を見回した。
「キース、この子達をどうするつもりだい?」
「悩んでる…安全な場所、なんてないだろう?」
「気付いたかい。魔獣がこちらまでやってくるのも時間の問題だ」
「そうか…と、なると………」
バーン!!ドゴーン!!
話を遮るようにキースたちがいる神殿の広場の横で爆発が起きた。それと同時に大型の魔獣が現れた。魔獣は広場に向かってきた。
「ちっ、ここまで来たか。迷っている暇はない。ソフィ、今から俺の古い知人の所にこの子達を送る。とりあえず確実に安全と言える場所だが、遠いところにある。戻ってこれないかもしれない」
「致し方ないね。緊急事態だ。私も行くよ」
「いや、だが、戻ってこられないかもしれない」
「覚悟の上だよ」
キースはマジックバッグから眼鏡を出し、掛けた。
地面にニーサと子供たちを囲みこむように丸を描き、バングルに手を当て
「精霊よ、力を貸してくれ、レヴェーナス」
と唱えた。
ソフィと子供たちは光に包まれ、姿が消えた。
「ヨシッ」
キースはマントを出し、羽織ると
「風の精霊よ、俺を王宮まで運んでくれ」
「いいよ、いいよ」
「たすけるー」
風の精霊たちはキースを王宮まで飛ばした。
「ああああああぁぁぁぁ………………………」
弓で弾いた矢の様な雑な飛ばし方にキースは気を失った。
一方、ソフィは光に包まれ、思わず目を瞑った。
光が落ち着き、目を開けると、そこは見たこともない建物の中だった。
「こ、ここは…?」
そこに一人の少年がやってきて挨拶をした。
「ようこそいらっしゃいました。僕はテオーリオ、キースさんの友人です。主が待っております。さぁ、こちらへどうぞ」
「友人…?あぁ、キースが言ってた古い知人と言うのはお前さん…いや、それにしては若い…」
一人の少年が出迎えてくれたが、キースの言っていた人物かどうか確信がもてなかったソフィは子ども達を抱きかかえ、その場から動かなかった。
「古い…そうですね。僕がキースさんと初めて知り合ったのは4年前になりますから古いと言えば古い知人に当たりますね」
「4年…」
ソフィがキースと知り合うより前の知人ということか…
「疑ってすまなかったね。案内お願いできるかな」
「はい、では皆さん、着いてきてください。小さなお子さんはこちらに乗ってください」
そう言うとテオーリオは見たことがない、椅子が複数付いた箱に車輪とバーが付いている乗り物?を指した。
乳幼児をそこに乗せるとテオーリオはバーを掴んで押し出した。ドアまでは緩やかな坂道になっており、子供達を乗せた手押し車でも楽に行けた。
ドアを抜け、建物から出るとソフィは今まで見たことがない街並みに仰天した。
道は綺麗に整えられ、脇には青々とした芝生が広がっており、花壇には色とりどりの花が咲き誇っていた。
テオーリオはソフィと子供たちを庭園の一画にある東屋に案内した。
そこには気品に溢れた女性が待っていた。
私と同じ年頃…?、いや、それよりも若いような、いや、本当はもっと……。それにしても威圧されそうな気品…貴族、いや王族…?
たくさんの人間を見てきたソフィにもその女性の年齢や出自が推測出来なかった。
ソフィが動けないでいると、その女性が口を開いた。
"初めまして、ソフィさん。ようこそ私の箱庭へ。私のことはテルマと呼んでくたさい。"
その人の声は穏やかで心地良い声で直接脳に響くようだった。話し方や雰囲気から長年生きてきた様な印象を受けた。
年齢不詳だわ、、不思議な人。
それがソフィのテルマに対する第一印象だった。
「は、初めまして。キースの紹介で来ました。ソフィと申します。この子達は…」
ソフィは緊張しつつ、しっかりとした口調で挨拶を返した。
"ふふふ、まぁそんなに緊張しないで。わかってます。テオーリオ、子供たちをお風呂へ、その後食事を。ソフィさんは少しお話しましょう?"
テルマはテオーリオにそう言うと、テオーリオは歩ける子供達に声を掛け、手押し車を押して屋敷に連れて行った。
テルマは残されたソフィに座るように促し、お茶を自ら入れた。
"さてと、キースからどこまで聞いてます?"
ソフィは緊張な面持ちのままお茶には手を付けず、固い声で
「確実に安全な場所と」
"なるほど。まぁ間違いないですね。ちょっと説明しますので、緊張を解いてくださいな。私も普段の喋り方に戻すよ"
テルマはふっと力を抜き、頬を緩ませた。
ソフィはテルマの意外な言葉に少し緊張を和らげた。
テルマはキースに説明したときのように地図を出し、机の上に広げた。
"ここは貴女方の国とは全然異なる場所にあるの
まぁなんでこんな所に住んでいるのかといえば…たまたまなんだけどね。端的に言うと辿り着いた先がここだったって話さ"
ソフィは初めて見る世界地図に頭がついていかず、曖昧な相槌を打つことしか出来なかった。。
「は、はぁ」
"キースはさっき会った少年、テオーリオともう一人のラジィトってのがいるんだけど、彼らの恩人なんだって。
そして、テオーリオとラジィトは私の恩人。
恩人の恩人は助けないとだろ?"
「は、はぁ。そんなもんですかねぇ」
テルマはふふっと笑って
"ソフィさんも満身創痍だ。まっ、少しここで静養したらいい。その後のことはまたゆっくり考えよう、ラジィト!"
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