死んだ私の死ねない世界でのままならない生活

周乃 太葉

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楽しい朝食の時間も終わり、キースは子ども達と軽く遊んだあと、部屋に戻った。

ベッドに腰掛け、しばし瞑想する。

自分のやるべきこと、やりたいこと……
思考の整理をし、

「ふぅーーー………っ、ヨシッ」
バチンと頬を叩き気合を入れた。


キースは荷物、と言ってもバッグ1つを抱え部屋を出た。

部屋から出るとテオとラジィが待っていた。

「さぁ行きましょうか」
「来たときとは場所違うから、案内するよ」

「ありがとな」

案内された建物にはトランスロク・ポルテーゴと刻まれていた。通称、ゲートというらしい。

キース達が来たあと、テルマは魔方陣を作り直した。
より強固にし、さらに通れるものを制限した。
殺風景だからと、夜な夜な魔法陣専用の台座を作り、柱で囲ったりしてやたら立派な建物に改造していた。

テルマ曰く、

"ほら、前回は一回だと思ったし、出来るかなー?程度の気合の入れ方だったから色々と心許ないというか…まっ、これからは度々使うことになるかなーって。キースも使うことになるし。だから、ちゃんとしたのにしてみただけよ。暇だったからとかじゃないって、やだ、テオ、何その目…ラジィも…いやねぇ疑り深いのは…"

キースはゲートの前にいるテルマに礼を言った。
今日のテルマは随分と年配の女性だった。
そのテルマと並んで子ども達がいた。
みんな不安気な表情だった。

キースはあえて声を弾ませ、

「じゃあ、テルマさん、世話になりました。テオ、ラジィ、ありがとよ。お前たちも子供たちも元気でな」

「キースさん、頑張ってね」

子供たちが次々にキースにギュッとし、テオとラジィも続けて挨拶をした。

「キースさんもお元気で」

「キース、ムリすんなよ」

"キース、ラジィの言う通りだよ。道具の使い方、2人にちゃんと教わった?"

「バッチリだよ」

ラジィが胸を叩いて返事した。

「大丈夫です」

キースもラジィに目配せをして頷いた。

"なら、良し。無理は禁物。大ピンチのときは私を呼びなさい。保護した子ども達の行き場がないならここに送ればいい。貴方の安全を願っているよ"

テルマはキースの肩を擦り、キースの安全を口酸っぱく言った。キースはその言葉に頷き、手を振ってゲートの上に立った。

「行ってきます」

そして、光の中に消えていった。
光はキースを包み込むと収束して消えた。

「いっちゃった…」

誰かがポツリと零した。
それを合図にポロポロと他の子ども達も泣き出した。

「さぁ、泣き止んで?キースさんがまた戻ってくるまでに僕たちはやることがあるよ」

「なぁに?」

「それは、もっともっと元気になることだよ。身体も心も元気を取り戻して成長したらキースを手伝えるだろう?それじゃ、まずは洗濯をしよう!」

テオとラジィが子供たちに向かって励まし、子ども達も泣き止んで笑顔になった。

「せんたく~あわあわ~」
と、楽しそうに子どもたちは屋敷に戻っていった。

テルマも屋敷に戻り、バルコニーから庭を眺めた。
楽しそうに洗濯している様子が見える。

テルマはキースと共に来た子ども達を見つめた。

子供たちは8人

10才の女の子と6才の男の子
神殿に拉致されて半年の魔力持ち

5才の女の子と3才の女の子と男の子
神殿に拉致されて3ヶ月の精霊の友人

2才の双子の男の子
神殿に拉致されて数週間の魔力持ちと精霊の友人

なんと、最年少は生後半年の女の子
神殿に拉致されて数日の魔力持ち

何でこんな赤ちゃんまで…

さらに何故か全員名がない………
テオーリオとラジィトの後釜探しだからなのかそんなところまで合わせなくてもとも思う。


テオーリオとラジィトが13、4ぐらいかしら?

さっき旅立ったキースが20ぐらいといったところかな

名前…やっぱ必要よね…
ここで一緒に生活していくんだもんね。

テルマはそう決めると、バルコニーからふわふわと飛んで庭に降り立った。

ちょうど最後の一つが干し終わったところだった。

"よーし、みんな、並んでー"


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