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一方、食堂に残されたテオとラジィは食事を続けた。
「ラジィ、街はどうだった?変わってた?」
ラジィはパンを頬張りながら
「ん~そんな変化なかったかなぁ?商店街とかは」
あぁ!とラジィは席を立ちマジックバックを取りに行った。
中から大量の本を取り出した。
「テオにお土産。お前、本を読みたいって言ってただろ?」
「うわぁ~大量だね。ありがとう」
ラジィは席に戻るとへへへっと得意気に笑った。
「どの種類の本を読むのかわからなかったから手当たり次第買ったぜ。本屋の爺がめっちゃ薦めてきたやつだから趣味が違ったり、役に立たない本もあるかも」
「ううん、全然、楽しみ!ラジィも読む?」
テオは目を輝かせラジィにお礼を言った。
「いや、僕はいいかなぁ~」
「僕が読んでラジィに合ってそうなの渡すね」
「う、うん…」
テオの笑顔の圧にラジィは逆らえなかった。
そんな2人の様子をじっと見つめている目があった。
キースだ。
いつの間にか食事を終えていたキースは2人を観察していた。
「なぁ、本当にお前達、あの時の子供か?」
テオが微笑みを浮かべ、
「そうですよ。キースさん、あの時はありがとうございました」
「い、いや、礼を言われることは何も…。お前たちの名前も知らなかったし…」
キースは気まずそうに頭を掻き目を逸らし、ボソボソと呟いた。
「いや、俺こそ今回助けてもらって…。あん時は上から言われたから世話しただけだし…」
「いえ、あの時の僕らに名前はありませんでしたから。改めまして、僕はテオーリオ・グヴィドです」
「僕はラジィト・グヴィド。あの時テオの元に行けたのはキースのお陰だから。僕は今回その借りを返しただけだよ。キース、どうしてレジスタンスにいるの?僕達のせい?」
キースが机をバンと叩き、腰を上げ前のめりにラジィの言葉を強く否定した。
「違う!違う!君達のせいじゃない!君達のおかげだ。
俺はあの時、目が覚めたんだ。いや、前から解っていたんだ…。
神殿が何のために、誰のためにあるかなんて…。でも決断できなかった…でも、あの召喚、君らが犠牲になって…漸く決心がついただけだ」
ふぅと息を吐き、キースは腰を下ろした。
「せめて、同じ様な犠牲者が出ないようにって…神殿のリストに乗っていた孤児を匿ったり、開放したりするしか出来なかったがな…」
キースが苦しそうに胸の内を吐き出すと、テオが真剣な顔をして質問してきた。
「キースさん、聞いてもいいですか?何故神殿はまた孤児を?」
キースは深呼吸してテオとラジィの目を見て頷いた。
「神殿はまた召喚をする気だ。正確には王命だが。
前回、喚んだモノ、テルマさんだっけ?彼女に王は満足しなかった。不満しかなかった。お前たちも知ってるよな?だから、彼女は放逐された。そして、お前たちが召還した実績だけが神殿に残った」
「うん」
「お前たちを追放した後な、王の希望を叶えるを召喚するには何が足りなかったって話になったんだ。
無限の器と甚大な魔力量があったのに。
真実は召喚者しか解らないんだから意味ないのによ。
高位の神官達や貴族たちがあーだこーだって話し合いって碌な結論を出せなかったな。
『2つで1つが良くなかった』とか、『甚大なとはいえ1人分の魔力だったのがいけなかった』とか。
いるわけないって、お前達はみたいなのは。
奇跡的に見付かった器と魔力だったんだよ。
そうしたら高位神官が出した結論がな。
『塵も積もれば山となる』
意味解るか?
人を寄せ集め、集約の魔法で多人数の魔力を1人に集約して補うんだとよ。
集約の魔法は根こそぎ魔力を持っていくから、掛けられた方は死ぬってわかってるのに。
そこで目を付けられたのが孤児。
スラム街に孤児なんて山ほど居るからな。
その中でならお前たちほどでなくても魔力を持つ孤児もまぁ見付かるだろうって。
奴らが言うには、後腐れもないし、治安も良くなって一石二鳥だそうだ。
これを聞いた時、吐き気がしたね。
もう神殿は俺が長くいた神殿じゃない。
無理だと思ったら早かったな~。即効リストを盗んで逃げて。
リストに載った子供たちを匿ったりしてな。
」
キースは苦々しい顔をしてこれまでの経緯を話した。
「なんてことを…」
「ウソだろ…」
テオもラジィも絶句した。
キースははぁぁと深く深く息を吐き、
「テルマさん、聞いてるんだろ?さっきは答えられなかったけど、俺は戻る。うん、やっぱり、ほっとけない。リストに載っている孤児はまだいるんだ」
キースはスッキリした顔を上げ、大きな声でテルマに答えを告げた。うんうんと自分の中で何か納得したようだった。
"大きな声出さなくても聞こえるよ。答えが出たんだね"
テルマは階段から降りてきた。その顔は僅かに口角が上がっていた。
キースの出した答えはテルマの満足するものだった。
「ラジィ、街はどうだった?変わってた?」
ラジィはパンを頬張りながら
「ん~そんな変化なかったかなぁ?商店街とかは」
あぁ!とラジィは席を立ちマジックバックを取りに行った。
中から大量の本を取り出した。
「テオにお土産。お前、本を読みたいって言ってただろ?」
「うわぁ~大量だね。ありがとう」
ラジィは席に戻るとへへへっと得意気に笑った。
「どの種類の本を読むのかわからなかったから手当たり次第買ったぜ。本屋の爺がめっちゃ薦めてきたやつだから趣味が違ったり、役に立たない本もあるかも」
「ううん、全然、楽しみ!ラジィも読む?」
テオは目を輝かせラジィにお礼を言った。
「いや、僕はいいかなぁ~」
「僕が読んでラジィに合ってそうなの渡すね」
「う、うん…」
テオの笑顔の圧にラジィは逆らえなかった。
そんな2人の様子をじっと見つめている目があった。
キースだ。
いつの間にか食事を終えていたキースは2人を観察していた。
「なぁ、本当にお前達、あの時の子供か?」
テオが微笑みを浮かべ、
「そうですよ。キースさん、あの時はありがとうございました」
「い、いや、礼を言われることは何も…。お前たちの名前も知らなかったし…」
キースは気まずそうに頭を掻き目を逸らし、ボソボソと呟いた。
「いや、俺こそ今回助けてもらって…。あん時は上から言われたから世話しただけだし…」
「いえ、あの時の僕らに名前はありませんでしたから。改めまして、僕はテオーリオ・グヴィドです」
「僕はラジィト・グヴィド。あの時テオの元に行けたのはキースのお陰だから。僕は今回その借りを返しただけだよ。キース、どうしてレジスタンスにいるの?僕達のせい?」
キースが机をバンと叩き、腰を上げ前のめりにラジィの言葉を強く否定した。
「違う!違う!君達のせいじゃない!君達のおかげだ。
俺はあの時、目が覚めたんだ。いや、前から解っていたんだ…。
神殿が何のために、誰のためにあるかなんて…。でも決断できなかった…でも、あの召喚、君らが犠牲になって…漸く決心がついただけだ」
ふぅと息を吐き、キースは腰を下ろした。
「せめて、同じ様な犠牲者が出ないようにって…神殿のリストに乗っていた孤児を匿ったり、開放したりするしか出来なかったがな…」
キースが苦しそうに胸の内を吐き出すと、テオが真剣な顔をして質問してきた。
「キースさん、聞いてもいいですか?何故神殿はまた孤児を?」
キースは深呼吸してテオとラジィの目を見て頷いた。
「神殿はまた召喚をする気だ。正確には王命だが。
前回、喚んだモノ、テルマさんだっけ?彼女に王は満足しなかった。不満しかなかった。お前たちも知ってるよな?だから、彼女は放逐された。そして、お前たちが召還した実績だけが神殿に残った」
「うん」
「お前たちを追放した後な、王の希望を叶えるを召喚するには何が足りなかったって話になったんだ。
無限の器と甚大な魔力量があったのに。
真実は召喚者しか解らないんだから意味ないのによ。
高位の神官達や貴族たちがあーだこーだって話し合いって碌な結論を出せなかったな。
『2つで1つが良くなかった』とか、『甚大なとはいえ1人分の魔力だったのがいけなかった』とか。
いるわけないって、お前達はみたいなのは。
奇跡的に見付かった器と魔力だったんだよ。
そうしたら高位神官が出した結論がな。
『塵も積もれば山となる』
意味解るか?
人を寄せ集め、集約の魔法で多人数の魔力を1人に集約して補うんだとよ。
集約の魔法は根こそぎ魔力を持っていくから、掛けられた方は死ぬってわかってるのに。
そこで目を付けられたのが孤児。
スラム街に孤児なんて山ほど居るからな。
その中でならお前たちほどでなくても魔力を持つ孤児もまぁ見付かるだろうって。
奴らが言うには、後腐れもないし、治安も良くなって一石二鳥だそうだ。
これを聞いた時、吐き気がしたね。
もう神殿は俺が長くいた神殿じゃない。
無理だと思ったら早かったな~。即効リストを盗んで逃げて。
リストに載った子供たちを匿ったりしてな。
」
キースは苦々しい顔をしてこれまでの経緯を話した。
「なんてことを…」
「ウソだろ…」
テオもラジィも絶句した。
キースははぁぁと深く深く息を吐き、
「テルマさん、聞いてるんだろ?さっきは答えられなかったけど、俺は戻る。うん、やっぱり、ほっとけない。リストに載っている孤児はまだいるんだ」
キースはスッキリした顔を上げ、大きな声でテルマに答えを告げた。うんうんと自分の中で何か納得したようだった。
"大きな声出さなくても聞こえるよ。答えが出たんだね"
テルマは階段から降りてきた。その顔は僅かに口角が上がっていた。
キースの出した答えはテルマの満足するものだった。
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