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キースはテルマの話に頭が上手く働かなかった。
それよりキースはテルマに判断を迫られ、真っ先に何故俺だけ?と思ってしまったことに愕然としていた。
テルマは目を伏せ、
"召喚できる前例が出来てしまいましたからね。
正直、あの王様…というか神殿、大神官が諦めるとは思えません。それに言いにくいことですが、孤児なら使い捨てるのに躊躇いはないでしょう…"
キースは残してきた仲間達のことを思った。
"まっ、そうは言っても貴方にも休息は必要です。暫くこちらで静養して下さい。心身が回復してからでも間に合うでしょう。まずは、貴方もお風呂と食事に。このコが案内します"
「はい…」
テルマは指を鳴らすと30センチぐらいの雪だるまみたいな形をしたずんぐりむっくりな猫型の魔導人形を出した。
「お客様、こちらにどうぞ」
キースはテルマに一礼し、魔導人形の先導に従った。
テルマは手を振りキースを見送った。
全員居なくなり、テルマは机の上に館のミニチュアを出した。
"さてと…、どうしたもんかね"
独り言ち、館の間取りを変える作業を始めた。
まだ個室は不安だろうと、子供たちの寝室は3階に大広間を作り、ベッドを並べることにした。赤ちゃん用のベビーベッドもいくつか並べた。
そして、同じフロアにキース用の個室も作った。
トイレ、洗面室、簡単なシャワー室、談話室等の部屋も作った。
"これでよし"
キースはどうするだろうか…
テルマは髪をクルクルと指に絡めながらキースが取る可能性がある選択肢を色々シミュレーションした。
きっとキースだけでなく、テオもラジィは、見て見ぬ振りは出来ないだろうな…。
だが、私が動くのは彼らの答えを聞いてからにしようと心に決めた。
"ほいじゃぁまぁ、様子見に行ってみようかな"
テルマは東屋から離れ、館の食堂に向かった。
さてと、消化に良さそうなものを作らないとだね。
テルマは子ども達用に重湯やおかゆ、スープなど消化に良さそうなものをいくつか作った。赤ちゃん用にミルクも用意した。
テオ、ラジィ、キースの食べられる人には簡単な食事を用意した。
机に並べ終わったちょうどその時、お風呂を終えた子供達、キースが、ラジィに案内されて食堂にやってきた。
ボロボロだった子たちがピカピカになっていた。
あの時のテオとラジィの様に。
"うん、いいね"
「テルマさん、ありがとうございます。あの、風呂っていうやつ?すごいっすね。俺、風呂なんて初めて入ったっす!」
キースが興奮状態でお礼を言ってきた。
"ふふふっ、気に入ったかい?いつでも入っていいからね。ほらほら、ご飯用意したよ。お食べ"
全員を食卓につかせ、用意した食事置いてあるワゴンから個々によそって子ども達の前に並べた。
"子供達は胃が弱っているから、物足りないけど今日はこれで我慢だよ"
子ども達は年が上の子ほどガッカリした表情を見せ、下の子達わかっていなかった。
テオとラジィも、彼らは自分たちで食事をよそって、
同じ様に食卓に付いた。
"キースさん、こっち座って"
テルマがラジィの横の椅子を引き、キースを促した。
テオがキースの分の食事をよそい、並べた。
"テオありがとう。キースさん、明日から食事はあそこから自分で持ってきてね"
「は、はい」
"はい、それじゃぁ、いただきます"
「「いただきます」」
子ども達とキースが不思議そうにポカンとしていた。
"食事の前はいただきますって言うんだよ。さん、はい"
「い…いただきま…」
「いただきます」
テルマの掛け声で子供達が小さい声で、キースが不慣れな感じで言った。
"どーぞ、召し上がれ"
その言葉を合図に子ども達はふぅふぅしながらゆっくりと食べ出した。
キースも恐る恐る一口目を口にした。
そのうち子ども達もキースも無言でガツガツと食べ進んだ。
その様子に安堵し、テルマは自分で食べられそうもない子達に順番に食べさせてあげることにした。
ひー、ふー、みー…
テルマは食べさせながら子供たちの数を数えた。
全部で8人いた。
多いな…
ラジィがテルマに話し掛けた。
「ねぇ、テルマ、魔導人形いつ置いたの?」
"ん?さっきだよ。2人じゃ子供たちのお風呂の世話大変だと思って"
ラジィはうんうん頷いて、
「あちこちに居てびっくりしたよ。助かったけど」
"気に入ってもらえて何より"
「でも、なんであの形なの?」
ラジィは首を傾げた。
"前の世界で子守用ロボットと言えばあの猫型なの"
「そーなの?」
ラジィは不思議そうに魔導人形達を眺めた。
「へぇ~。そうなんですね。それよりテルマ」
テオが話に入ってきてチラッとテルマがご飯をあげていた乳幼児たちを見た。
彼らはベビーチェアでコックリコックリ寝始めていた。
「寝室は3階ですか?」
"いや、いい。私が運ぶよ。テオとラジィもご飯終わってないでしょ?"
テルマが見ると他の子供たちも数人うつらうつらしている子がいた。
テルマは指をクルクルと回し、子供たち浮かせ、先ほど作った寝室まで運んだ。
ベッドに一人一人降ろすと布団を掛け、電気を消した。
ベッドにはベッドガードが付いているので落ちることはないだろう。
それよりキースはテルマに判断を迫られ、真っ先に何故俺だけ?と思ってしまったことに愕然としていた。
テルマは目を伏せ、
"召喚できる前例が出来てしまいましたからね。
正直、あの王様…というか神殿、大神官が諦めるとは思えません。それに言いにくいことですが、孤児なら使い捨てるのに躊躇いはないでしょう…"
キースは残してきた仲間達のことを思った。
"まっ、そうは言っても貴方にも休息は必要です。暫くこちらで静養して下さい。心身が回復してからでも間に合うでしょう。まずは、貴方もお風呂と食事に。このコが案内します"
「はい…」
テルマは指を鳴らすと30センチぐらいの雪だるまみたいな形をしたずんぐりむっくりな猫型の魔導人形を出した。
「お客様、こちらにどうぞ」
キースはテルマに一礼し、魔導人形の先導に従った。
テルマは手を振りキースを見送った。
全員居なくなり、テルマは机の上に館のミニチュアを出した。
"さてと…、どうしたもんかね"
独り言ち、館の間取りを変える作業を始めた。
まだ個室は不安だろうと、子供たちの寝室は3階に大広間を作り、ベッドを並べることにした。赤ちゃん用のベビーベッドもいくつか並べた。
そして、同じフロアにキース用の個室も作った。
トイレ、洗面室、簡単なシャワー室、談話室等の部屋も作った。
"これでよし"
キースはどうするだろうか…
テルマは髪をクルクルと指に絡めながらキースが取る可能性がある選択肢を色々シミュレーションした。
きっとキースだけでなく、テオもラジィは、見て見ぬ振りは出来ないだろうな…。
だが、私が動くのは彼らの答えを聞いてからにしようと心に決めた。
"ほいじゃぁまぁ、様子見に行ってみようかな"
テルマは東屋から離れ、館の食堂に向かった。
さてと、消化に良さそうなものを作らないとだね。
テルマは子ども達用に重湯やおかゆ、スープなど消化に良さそうなものをいくつか作った。赤ちゃん用にミルクも用意した。
テオ、ラジィ、キースの食べられる人には簡単な食事を用意した。
机に並べ終わったちょうどその時、お風呂を終えた子供達、キースが、ラジィに案内されて食堂にやってきた。
ボロボロだった子たちがピカピカになっていた。
あの時のテオとラジィの様に。
"うん、いいね"
「テルマさん、ありがとうございます。あの、風呂っていうやつ?すごいっすね。俺、風呂なんて初めて入ったっす!」
キースが興奮状態でお礼を言ってきた。
"ふふふっ、気に入ったかい?いつでも入っていいからね。ほらほら、ご飯用意したよ。お食べ"
全員を食卓につかせ、用意した食事置いてあるワゴンから個々によそって子ども達の前に並べた。
"子供達は胃が弱っているから、物足りないけど今日はこれで我慢だよ"
子ども達は年が上の子ほどガッカリした表情を見せ、下の子達わかっていなかった。
テオとラジィも、彼らは自分たちで食事をよそって、
同じ様に食卓に付いた。
"キースさん、こっち座って"
テルマがラジィの横の椅子を引き、キースを促した。
テオがキースの分の食事をよそい、並べた。
"テオありがとう。キースさん、明日から食事はあそこから自分で持ってきてね"
「は、はい」
"はい、それじゃぁ、いただきます"
「「いただきます」」
子ども達とキースが不思議そうにポカンとしていた。
"食事の前はいただきますって言うんだよ。さん、はい"
「い…いただきま…」
「いただきます」
テルマの掛け声で子供達が小さい声で、キースが不慣れな感じで言った。
"どーぞ、召し上がれ"
その言葉を合図に子ども達はふぅふぅしながらゆっくりと食べ出した。
キースも恐る恐る一口目を口にした。
そのうち子ども達もキースも無言でガツガツと食べ進んだ。
その様子に安堵し、テルマは自分で食べられそうもない子達に順番に食べさせてあげることにした。
ひー、ふー、みー…
テルマは食べさせながら子供たちの数を数えた。
全部で8人いた。
多いな…
ラジィがテルマに話し掛けた。
「ねぇ、テルマ、魔導人形いつ置いたの?」
"ん?さっきだよ。2人じゃ子供たちのお風呂の世話大変だと思って"
ラジィはうんうん頷いて、
「あちこちに居てびっくりしたよ。助かったけど」
"気に入ってもらえて何より"
「でも、なんであの形なの?」
ラジィは首を傾げた。
"前の世界で子守用ロボットと言えばあの猫型なの"
「そーなの?」
ラジィは不思議そうに魔導人形達を眺めた。
「へぇ~。そうなんですね。それよりテルマ」
テオが話に入ってきてチラッとテルマがご飯をあげていた乳幼児たちを見た。
彼らはベビーチェアでコックリコックリ寝始めていた。
「寝室は3階ですか?」
"いや、いい。私が運ぶよ。テオとラジィもご飯終わってないでしょ?"
テルマが見ると他の子供たちも数人うつらうつらしている子がいた。
テルマは指をクルクルと回し、子供たち浮かせ、先ほど作った寝室まで運んだ。
ベッドに一人一人降ろすと布団を掛け、電気を消した。
ベッドにはベッドガードが付いているので落ちることはないだろう。
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