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ラジィが目を開けると、そこは今朝、出発した魔法陣の中にいた。
「おかえり、ラジィ」
テオが困り顔でラジィを出迎えた。
"おーおー、いっぱい連れてきたねぇ"
後ろからテルマがからかうような声を出した。
ラジィは怒られることを覚悟した。
「ご、ごめん、勝手に…でも、でも!!」
"見捨てられなかったんだろ?ふふっ、大丈夫。全部観てたから"
ラジィは慌てて身体を探った。
「えっ?えっ?」
"違う違う。ラジィは精霊が視えないからね~、ほら"
テルマが指先をクルクルとするとラジィの肩に1羽の小鳥が止まっているのがラジィにも識別できるようになった。
"テオがね、ラジィをあまりにも心配してるからさ、この子、風の精霊が代わりにラジィに付いていったんだよ。この子から私に伝達されるからこうして映像に出して観てたのよ"
テルマはそう言うと宙に向かってクルクルと指を回し、映像を映し出した。
「な、なんだよそれ…!!僕を信用してなかったの?」
ラジィは顔を真っ赤にし憤った。
と、同時に変なことしてないか脳をフル回転させ自分の行動を振り返った。
テオがしょんぼりして
「ご、ごめん…」
"ははっ、ごめんごめん。伝える術がなかったからね。何にせよ、お疲れ様。お使い有難うね。
…さてと、ラジィ?貴方が招いた彼ら、どうするつもりだい?"
「えっ、あっ、その…」
"怒っているわけじゃないよ?あの状況でした君の選択は間違ったないと思うよ"
ラジィは、えっ?とテルマの顔を見た。
テルマは困ったように
"はぁ~。ままならないね。キースさんだっけ?貴方達はどうしたい?元の場所に戻そうか?"
状況が掴めず、呆然と立ち尽くしていたキースが呼び掛けられ、ハッと思考を取り戻した。
誰だ…?
目の前にはスラッとした中性的でミステリアスな雰囲気を纏った人物がいた。
キースは無意識に子ども達をギュッと
子供達はキースから離れず、周りをキョロキョロと見ていた。
「ここは…?それにお前達は?」
テルマがキースの問いに答えようとキースの他に視線をやった。その時、足元で震えている子供たちが目に入り、子供たちのボロボロ具合が気になった。
テオに子供たちの世話を頼み、疲れた顔しているラジィにも休息を命じた。
"ここは…っと、その前に、テオ、子供たちをお風呂に入れてご飯を食べさせてあげなさい。ラジィも汗流しておいで。その間に、子どもたち用の部屋を準備するから3階には行かないように。キースさんは大人だから少し話をしてからにしよう"
「はい」
「はーい」
テオとラジィが子供たちを連れ、屋敷の中に入っていくのを見届けてからテルマはキースのほうに振り返った。
"お待たせ、キースさん、立ち話も何だからこっちで話そう"
そう言ってテルマは東屋にキースを案内した。
キースは黙ってテルマに付いて来た。
「ここは…」
周りをキョロキョロと見回したが、自分の知っている何処とも違う景色が広がっていた。
緑豊かな、まるで貴族の庭園のような、でもそこまで手が入ってはいない…
そうこうしているうちに東屋に着いた。
背後にある大きな館が見えた。
さっき子供たちが連れて行かれたとこか…
見たことがない建築様式だった。
キースは死後の世界に来てしまったのかと困惑した。
"こちらにどうぞ"
不意に声をかけられ、椅子に座るように促された。
そもそも目の前にいる人物は何だ…?
人…なのか…?
不審に思いながらも椅子に腰掛け、話を聞くことにした。
"初めまして。私はテルマ、ここの主をしています"
テルマはお茶を出しながら、挨拶をした。
"あなたはキースさんで合ってます?"
「は、はい」
"いきなりこんなに辺鄙なとこ来ちゃって頭が追い付かないよね?まず、ここは死後の世界じゃありませんよ"
キースはドキッとした。心が読まれて…?
テルマはふふっと笑って、
"違います。貴方、思ってることが顔に出るって言われない?"
とキースに言った。
"クスクス…ここは貴方方の国の遥か西、なんとかの森を抜けた遥か遥か先の大陸"
テルマは卓上に地図を描いた。
キースは初めて見る地図を食い入るように見た。
世界…
テルマはそんなキースをじっと見据え、
"貴方元神官だっけ?召喚の儀式覚えてる?"
「あぁ…」
"その時召喚されたのが私。召喚したのがテオとラジィ。これで私達が何者かわかるかしら?"
テルマが言うなり、キースは地図からテルマにバッと目線を移した。
「えっ…?あの時の…………?」
"そう。これで場所と何者かが判明したね。貴方の問いの答えだ"
テルマがニコッとわらった。
「あいつら…生きて…いたのか…」
キースの目に涙が浮かんでいた。
テオとラジィの存在はキースの心にずっと引っ掛かっていたのだろう。
"感動の続きはテオとラジィに会ったときに本人にしてあげて。さて、キースさん、本題です"
"貴方はどうされますか?"
「俺…?」
テルマは先ほどの笑みとは打って変わって厳しい顔をして話を続けた。
"はい、貴方です。子供たちはこちらで引き受けましょう。回復に時間がかかるし、彼らは孤児、あちらに戻っても良いことはないでしょう。
彼らには申し訳ないが、選択肢はありません。
でも、貴方は大人です。貴方は選択がてきます。
ここに居ますか?それとも戻りますか?"
「…っ………」
テルマはふっと表情を崩した。
"あらあら、緊張させてしまいましたね。言い方が強かったかしら?
貴方はあちらでレジスタンスとして活動していましたから、どうされるのかな?って思いまして。正直今回の子達はたまたまラジィが居合わせただけ、ラッキーでしたけど、まだいるでしょう?"
「あ、あぁ…」
「おかえり、ラジィ」
テオが困り顔でラジィを出迎えた。
"おーおー、いっぱい連れてきたねぇ"
後ろからテルマがからかうような声を出した。
ラジィは怒られることを覚悟した。
「ご、ごめん、勝手に…でも、でも!!」
"見捨てられなかったんだろ?ふふっ、大丈夫。全部観てたから"
ラジィは慌てて身体を探った。
「えっ?えっ?」
"違う違う。ラジィは精霊が視えないからね~、ほら"
テルマが指先をクルクルとするとラジィの肩に1羽の小鳥が止まっているのがラジィにも識別できるようになった。
"テオがね、ラジィをあまりにも心配してるからさ、この子、風の精霊が代わりにラジィに付いていったんだよ。この子から私に伝達されるからこうして映像に出して観てたのよ"
テルマはそう言うと宙に向かってクルクルと指を回し、映像を映し出した。
「な、なんだよそれ…!!僕を信用してなかったの?」
ラジィは顔を真っ赤にし憤った。
と、同時に変なことしてないか脳をフル回転させ自分の行動を振り返った。
テオがしょんぼりして
「ご、ごめん…」
"ははっ、ごめんごめん。伝える術がなかったからね。何にせよ、お疲れ様。お使い有難うね。
…さてと、ラジィ?貴方が招いた彼ら、どうするつもりだい?"
「えっ、あっ、その…」
"怒っているわけじゃないよ?あの状況でした君の選択は間違ったないと思うよ"
ラジィは、えっ?とテルマの顔を見た。
テルマは困ったように
"はぁ~。ままならないね。キースさんだっけ?貴方達はどうしたい?元の場所に戻そうか?"
状況が掴めず、呆然と立ち尽くしていたキースが呼び掛けられ、ハッと思考を取り戻した。
誰だ…?
目の前にはスラッとした中性的でミステリアスな雰囲気を纏った人物がいた。
キースは無意識に子ども達をギュッと
子供達はキースから離れず、周りをキョロキョロと見ていた。
「ここは…?それにお前達は?」
テルマがキースの問いに答えようとキースの他に視線をやった。その時、足元で震えている子供たちが目に入り、子供たちのボロボロ具合が気になった。
テオに子供たちの世話を頼み、疲れた顔しているラジィにも休息を命じた。
"ここは…っと、その前に、テオ、子供たちをお風呂に入れてご飯を食べさせてあげなさい。ラジィも汗流しておいで。その間に、子どもたち用の部屋を準備するから3階には行かないように。キースさんは大人だから少し話をしてからにしよう"
「はい」
「はーい」
テオとラジィが子供たちを連れ、屋敷の中に入っていくのを見届けてからテルマはキースのほうに振り返った。
"お待たせ、キースさん、立ち話も何だからこっちで話そう"
そう言ってテルマは東屋にキースを案内した。
キースは黙ってテルマに付いて来た。
「ここは…」
周りをキョロキョロと見回したが、自分の知っている何処とも違う景色が広がっていた。
緑豊かな、まるで貴族の庭園のような、でもそこまで手が入ってはいない…
そうこうしているうちに東屋に着いた。
背後にある大きな館が見えた。
さっき子供たちが連れて行かれたとこか…
見たことがない建築様式だった。
キースは死後の世界に来てしまったのかと困惑した。
"こちらにどうぞ"
不意に声をかけられ、椅子に座るように促された。
そもそも目の前にいる人物は何だ…?
人…なのか…?
不審に思いながらも椅子に腰掛け、話を聞くことにした。
"初めまして。私はテルマ、ここの主をしています"
テルマはお茶を出しながら、挨拶をした。
"あなたはキースさんで合ってます?"
「は、はい」
"いきなりこんなに辺鄙なとこ来ちゃって頭が追い付かないよね?まず、ここは死後の世界じゃありませんよ"
キースはドキッとした。心が読まれて…?
テルマはふふっと笑って、
"違います。貴方、思ってることが顔に出るって言われない?"
とキースに言った。
"クスクス…ここは貴方方の国の遥か西、なんとかの森を抜けた遥か遥か先の大陸"
テルマは卓上に地図を描いた。
キースは初めて見る地図を食い入るように見た。
世界…
テルマはそんなキースをじっと見据え、
"貴方元神官だっけ?召喚の儀式覚えてる?"
「あぁ…」
"その時召喚されたのが私。召喚したのがテオとラジィ。これで私達が何者かわかるかしら?"
テルマが言うなり、キースは地図からテルマにバッと目線を移した。
「えっ…?あの時の…………?」
"そう。これで場所と何者かが判明したね。貴方の問いの答えだ"
テルマがニコッとわらった。
「あいつら…生きて…いたのか…」
キースの目に涙が浮かんでいた。
テオとラジィの存在はキースの心にずっと引っ掛かっていたのだろう。
"感動の続きはテオとラジィに会ったときに本人にしてあげて。さて、キースさん、本題です"
"貴方はどうされますか?"
「俺…?」
テルマは先ほどの笑みとは打って変わって厳しい顔をして話を続けた。
"はい、貴方です。子供たちはこちらで引き受けましょう。回復に時間がかかるし、彼らは孤児、あちらに戻っても良いことはないでしょう。
彼らには申し訳ないが、選択肢はありません。
でも、貴方は大人です。貴方は選択がてきます。
ここに居ますか?それとも戻りますか?"
「…っ………」
テルマはふっと表情を崩した。
"あらあら、緊張させてしまいましたね。言い方が強かったかしら?
貴方はあちらでレジスタンスとして活動していましたから、どうされるのかな?って思いまして。正直今回の子達はたまたまラジィが居合わせただけ、ラッキーでしたけど、まだいるでしょう?"
「あ、あぁ…」
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