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「ねぇ、なんで誰もいないんだ?」

僕は肩の上からキースに尋ねた。
キースは走りながら答えた。

「あぁ、神官は一人残らず集められているからな」

「集め…?」

キースは眉間にシワを寄せ、

「国王がな、召喚するんだと」

「召喚…?」

「そっ、聖女召喚、前から神殿に圧力かけてたんだが、大神官がやりたくなくてのらりくらり躱してたんだけどな。ついに逃げ切れなくなって承諾したんだよな。数年前の話だ。
で、ずーっと準備に時間が掛かるとか何とか言ってさらに伸ばし伸ばしにしていたんだけど、最近になって準備が終わったからやると返事をしたんだ」

「それは…どういうこと?」

「つまりだ、準備とはお前たちの事だったんだ。あぁ、もう詳しくは後で説明してやるから今は急ぐ!黙ってないと舌噛むぞ」

キースは意外と力持ちで足も速かった。
ホントに神官…?

彼は神官に見えなさすぎた。
僕は怪しみながらもキースに運ばれていった。

「ここだ」

召喚の間と呼ばれる神殿の最奥にある大広間の前でキースは僕を降ろした。

「おい、大丈夫か?今からドアを開けたら俺が騒ぎを起こす。中に入ったらお前は真っ先に片割れの所に行くんだ。お前の片割れが無事かは分からないが…。わかったな?」

「わかった。キースありがとう」

キースは困ったようにはにかみ、

「礼を言われることはしてねぇ」

「それじゃぁ行くぞ!」

キースは手榴弾をドアに向かって放った。

ドゴーンと大きな音がし、ドアが破壊された。
続けて煙幕を投げ込んだ。

一瞬見えた部屋の中では円を描くように大量の神官が倒れており、その中心であいつが倒れていた。

「…!」

僕は叫ぶより先にあいつの元に駆け寄って身体を揺さぶった。
騒ぎを起こすはずのキースはドアの前で呆然としていた。

「おいっ!!しっかりしろ!」

あいつは枯れ枝みたいな老人の姿をしていて、血を吐いていた。

「なんで…なんで…」

僕にはあいつを抱き支えることしか出来なかった。
遠くで偉そうな奴が喚いてる。

あの野郎は何を言ってるんだ…?
召喚……?

何かを言い争ったあと残っていた生きてる大人達がぞろぞろと部屋からか引き上げた。
部屋には静寂が訪れた。いつの間にかキースもいなくなっていた。

連れ去られた…?
最悪の事態になったと足らない頭をフル回転させどうするか考えた。
その時、ゴホゴホと血を吐きながらもあいつが喋りだした。

「も、もし…ゴホッ、も、もし、そこにいらっしゃるお方…」

あいつは何もない方向に手を伸ばし、何かに呼び掛け始めた。

何を…?
僕には見えない何かがいるのか…?

僕は周りを目を凝らして探ってみたけど、何も見えなくて、呆気に取られていると、腕の中にいたあいつが突然眩い光に包まれた。

あまりの眩しさに目を瞑った。
光が落ち着き、目を開けると、そこには僕がよく知っているあいつの姿があった。

うそだろ…?
なんか、もう、ホッとして涙が溢れ出てきた。

「なぁ、お前、身体は?」

訳が分からない事態に頭がショートし、ワンワンと泣いた。
涙が落ち着いた頃、あいつがひそひそと話しかけてきた。

「ねぇ、あのね、あそこに…いるんだ。」
「何が…?」
「僕が召喚してしまった人が…。依代を作らないと」
「依代?作らないとダメなのか?」
「恩人だから…」
「あぁ。僕は何をすれば良い?」
「僕と手を繋いで。魔力を流して」
「出来るか?」
「大丈夫、僕らは」
「わかった」

あいつの話はよくわからなかったけど、あそこにいるだろうモノが恩人なのは分かったから手を貸すことにした。

そうして、テルマに出会った。
テルマは僕たちが知ってるどの大人とも違った。
何もかも、そう、何もかもが違った。



モグモグ…ゴクンと買ったものが空になった。

「ふぅ…腹いっぱい!さてと、買い物行くか」

軽食を食べ終えた僕は広場から商店街に向かった。
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