死んだ私の死ねない世界でのままならない生活

周乃 太葉

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その日は突然来た。

僕たちがいつものように元締めの家の地下にある僕たちの部屋で2人で丸くなって寝ていると外から怒号とガチャガチャと金属音、そして大人数の足音がしてきた。

「ねぇ、ねぇ、起きて」
「ん…うるさいなぁ」

気配であいつは起きていて、僕を起こしてきた。
僕はまだ寝ていたかったけど、あいつはヒソヒソと話を続けた。

「なんか沢山の人がココに来てる」
「元締めなにかしたのかな?」

「ねぇ、どうする?」

段々と近づく物音に僕たちは不安になっていった。

「どうするってったって…僕たちはここ以外居場所なんてないじゃん」

「そう、だよね」

仕方ないので部屋の中でもより暗くて、いつも隠れるのに使っている場所で布団を被り事が過ぎ去るまで2人で小さく丸まっていることにした。

外で揉めているような声が階上での怒鳴り声に変わり、足音もどんどん近づいてきた。

バン!ドアを蹴破る音がして人がなだれ込んできた。

「いない!?」
「いや、隠れているだけだろ、探せ」

雪崩込んできた人達は大きな声で喋ると、部屋をガサガサと漁り、僕らを探しだした。

僕たちは息を殺して潜んでいたが、案外すぐに見つかってしまった。

「いました!!………2人ですけど、どちらですか?」

兵士の1人が僕たちの布団を剥がし、発見の報告をした。

「2人だと?」

上級神官が兵士たちを掻き分けて僕たちの前に来た。

「はい、見分けつかないほど似てますね。双子ですかね?神官様がお探しのはどちらですか?」

上級神官は僕たちの頭に手を置き何やら詠唱した。

「チッ、わからんな。あちらに運べばわかるか。よし、二人共連れてけ」

「ハッ」

兵士たちはヒョイと僕とあいつを担ぐと外に止めてあった簡素な馬車に放り込んだ。

その時、チラッと見えた。
外で元締めと幹部達が傷だらけで血まみれになって縄で縛られていた。

「うわっ」「いたっ」

扉がバタンと閉じられた。
と、同時にさっきとは違う上級神官の演説が始まった。

上級神官が涙を流し、スラム街に響き渡る声で
「この男達は私欲のため神の遣い手を粗末に扱った。よって神に代わり処罰を与える。異論は認めない。
また神殿は神の遣い手を保護出来る喜びを。
また、この街で神の遣い手が見つかったことに感謝の意を示す。

神殿はこの奇跡に、この街に慈悲を施すことにした。広場に炊き出しを用意したので皆、一人残らず、必ず、貰い受けるように」



家の中や影から様子を窺っていた人々は我先にと広場へと急いだ。

上級神官は街の人達が広場へ急ぐ様子を見て、表情を一変させた。蔑み、見下した目で彼らを一瞥し、背を向け、豪華な馬車に乗り込むときに側にいた兵士に指示をした。

「今夜、浄化を」

「ハッ」

豪華な馬車と質素な馬車が並んで街から去っていった。

その様子を見送る人は誰もいなかった。

元締めと幹部達は抵抗していたが、去り際に兵士達にサクッとトドメを刺されて転がされていた。

その夜、南のスラム街は大規模な火災が発生した。
何もかもが焼失した。

建物も住民も。

逃げ出した住民はただの1人すらいなかった。

火元も不明。
風もないのに街を飲み込んだ火災についてたいした調査もなく、終結された。


僕たちがその事件ことを知ったのはそれから数年経った後のことだった。
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