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「ここは…」
ラジィが目を開けるとそこは神殿の召喚の間だった。
テルマがこの国で唯一知っている場所。
僕たちがテルマを召喚させられた場所。
「確か姿が見えないようになってるってテルマ言ってたよな」
ラジィは腕のバングルを触り、部屋を一瞥すると魔力を細く張り巡らせた。
何の気配もないな。
さらに範囲を広げて人の気配を探った。
安全なルートに目星を付け、
さっさと神殿から出ることにした。
まっ、ここにはいい思い出なんてないからな。
万が一見つかったら面倒だ。
階段を登り、廊下を渡り、出口に向かうまで誰にも遭遇しなかった。
ライはそのまま門をくぐり、
ある程度街の中心街まで行ってところで路地にサッと入った。
「コントゥリーヂ」
ライの姿が現れた。
この半年で以前の面影は残っていないが、念の為テルマはバングルにに髪の色と瞳の色が変わるように魔法を仕込んでいた。
ラジィは路地からスッと出て雑踏に紛れた。
「まずはこいつらを軍資金に変えないとだな」
ラジィは記憶を頼りに質屋に向かった。
探していた店はまだ記憶と同じ場所にあった。
ラジィは店の前で咳払いをし、明るく入っていった。
「こんにちは~」
「やぁらっしゃい」
「コレ」
ラジィはカウンターにいくつかの装飾品を出した。
古びた装飾品はどこの家庭にもありそうな物を選んだ。
テルマは相場が分からないからか、とんでもなく高価なものからゴミまで多種多様の物をマジックバックに入れていた。
そもそもアグロが集めたってどこから拾ってくるんだろうか…
アグロはあれから何度も自由に世界中を周回しているらしい。テルマの話だと色々な情報を集めてくるモノまからなのか、様々な物まで集める、収集癖があるらしい。
山積みのコレクションはいつも気が付くと何処かに消えているがどうやらこの中だったようだ。
謎が一つ解けたな。
ラジィはスラム街の経験からそれをちょこっとずつ質屋や各ギルドに売りに歩いた。
1箇所で売らなかったのはそれぞれの取扱品目が違うからだ。
ラジィは用心深く回っていたため怪しまれることはなかったし、不埒な輩に目を付けられることもなく済んだ。
テオやテルマではこうはいかなかっただろう。
「しっかし、ここは全然変わってないな」
ラジィは屋台で手軽に食べられる軽食を買い、広場のベンチに座った。
思い返せば、僕たちは産まれたときからスラム街で育った。親の顔なんて分からない。
たまたま僕らを見つけた重度のアル中の男が元締めに小銭欲しさに売っぱらった。
元締めは僕たちが何かに使えると思ったらしく最低限の世話を子供を亡くしたばかりだったボロボロの女にさせた。綺麗な顔立ちをしていたからと周りにいた男に言われたな。
女は甲斐甲斐しく世話をしてくれたが、三年ほどで死んでしまった。理由は知らない。
元締めが次にあてがったのは僕らより10ぐらい上のお姉さんだった。彼女はものすごく美人だったが、口が聞けなかった。特徴的な彫り物がしてあるイヤーカフをしていた。
彼女は簡単な文字を僕らに教え、自分の事をアンジュと教えてくれた。
貧しい村で姉と弟と3人兄弟の中で親に売られたそうだ。先週、ここ到着して、働き先に行くまでの間僕らの世話をしろと言われたそうだ。そこから二年程でアンジュは居なくなった。理由は分からない。ある日突然居なくなった。頭領はその日ものすごく怒って僕らはかなり八つ当たりされたからよく覚えている。
そこからは僕らは2人で力を合わせて生き延びた。
悪い事も…子供ができる範囲だけど…やった。
元締めは僕を暗殺者にあいつを貴族に売ろうとしていたみたいだけど、毎回ギリギリで回避してきた。
ある日いつものように僕は街で残飯を漁りに出ていた。あいつもいつものように商店街で小さな手伝いで小銭を得ようとしていた。そのとき、あいつは躓いた拍子に下級神官にぶつかってしまったらしい。
その下級神官は激怒し、あいつをかなり痛めつけた。死にかけたそのときたまたま上級神官が通りかかり、あいつに声を掛けたそうだ。
「すまなかったね」
その上級神官はあいつを立ち上がらせようと手を差し伸べた時、驚いた顔をして「この子だ…」とボソッっと呟いたそうだ。
上級神官に向かってお礼を言ったときは上級神官の目は感情が読み取れないほど暗い目をしていたが、あいつは気付かなかった。
「あ、ありがとう…」
「あ、あぁ、君、住まいは?」
「南のスラム街」
「南………マルスのところか…」
「あ、あの…僕、帰るよ」
徐々に凍りつく声色にあいつは気不味くなり逃げるように立ち去った。
上級神官はあいつの姿には一瞥もくれずずっとブツブツ何か思案していた。
ラジィが目を開けるとそこは神殿の召喚の間だった。
テルマがこの国で唯一知っている場所。
僕たちがテルマを召喚させられた場所。
「確か姿が見えないようになってるってテルマ言ってたよな」
ラジィは腕のバングルを触り、部屋を一瞥すると魔力を細く張り巡らせた。
何の気配もないな。
さらに範囲を広げて人の気配を探った。
安全なルートに目星を付け、
さっさと神殿から出ることにした。
まっ、ここにはいい思い出なんてないからな。
万が一見つかったら面倒だ。
階段を登り、廊下を渡り、出口に向かうまで誰にも遭遇しなかった。
ライはそのまま門をくぐり、
ある程度街の中心街まで行ってところで路地にサッと入った。
「コントゥリーヂ」
ライの姿が現れた。
この半年で以前の面影は残っていないが、念の為テルマはバングルにに髪の色と瞳の色が変わるように魔法を仕込んでいた。
ラジィは路地からスッと出て雑踏に紛れた。
「まずはこいつらを軍資金に変えないとだな」
ラジィは記憶を頼りに質屋に向かった。
探していた店はまだ記憶と同じ場所にあった。
ラジィは店の前で咳払いをし、明るく入っていった。
「こんにちは~」
「やぁらっしゃい」
「コレ」
ラジィはカウンターにいくつかの装飾品を出した。
古びた装飾品はどこの家庭にもありそうな物を選んだ。
テルマは相場が分からないからか、とんでもなく高価なものからゴミまで多種多様の物をマジックバックに入れていた。
そもそもアグロが集めたってどこから拾ってくるんだろうか…
アグロはあれから何度も自由に世界中を周回しているらしい。テルマの話だと色々な情報を集めてくるモノまからなのか、様々な物まで集める、収集癖があるらしい。
山積みのコレクションはいつも気が付くと何処かに消えているがどうやらこの中だったようだ。
謎が一つ解けたな。
ラジィはスラム街の経験からそれをちょこっとずつ質屋や各ギルドに売りに歩いた。
1箇所で売らなかったのはそれぞれの取扱品目が違うからだ。
ラジィは用心深く回っていたため怪しまれることはなかったし、不埒な輩に目を付けられることもなく済んだ。
テオやテルマではこうはいかなかっただろう。
「しっかし、ここは全然変わってないな」
ラジィは屋台で手軽に食べられる軽食を買い、広場のベンチに座った。
思い返せば、僕たちは産まれたときからスラム街で育った。親の顔なんて分からない。
たまたま僕らを見つけた重度のアル中の男が元締めに小銭欲しさに売っぱらった。
元締めは僕たちが何かに使えると思ったらしく最低限の世話を子供を亡くしたばかりだったボロボロの女にさせた。綺麗な顔立ちをしていたからと周りにいた男に言われたな。
女は甲斐甲斐しく世話をしてくれたが、三年ほどで死んでしまった。理由は知らない。
元締めが次にあてがったのは僕らより10ぐらい上のお姉さんだった。彼女はものすごく美人だったが、口が聞けなかった。特徴的な彫り物がしてあるイヤーカフをしていた。
彼女は簡単な文字を僕らに教え、自分の事をアンジュと教えてくれた。
貧しい村で姉と弟と3人兄弟の中で親に売られたそうだ。先週、ここ到着して、働き先に行くまでの間僕らの世話をしろと言われたそうだ。そこから二年程でアンジュは居なくなった。理由は分からない。ある日突然居なくなった。頭領はその日ものすごく怒って僕らはかなり八つ当たりされたからよく覚えている。
そこからは僕らは2人で力を合わせて生き延びた。
悪い事も…子供ができる範囲だけど…やった。
元締めは僕を暗殺者にあいつを貴族に売ろうとしていたみたいだけど、毎回ギリギリで回避してきた。
ある日いつものように僕は街で残飯を漁りに出ていた。あいつもいつものように商店街で小さな手伝いで小銭を得ようとしていた。そのとき、あいつは躓いた拍子に下級神官にぶつかってしまったらしい。
その下級神官は激怒し、あいつをかなり痛めつけた。死にかけたそのときたまたま上級神官が通りかかり、あいつに声を掛けたそうだ。
「すまなかったね」
その上級神官はあいつを立ち上がらせようと手を差し伸べた時、驚いた顔をして「この子だ…」とボソッっと呟いたそうだ。
上級神官に向かってお礼を言ったときは上級神官の目は感情が読み取れないほど暗い目をしていたが、あいつは気付かなかった。
「あ、ありがとう…」
「あ、あぁ、君、住まいは?」
「南のスラム街」
「南………マルスのところか…」
「あ、あの…僕、帰るよ」
徐々に凍りつく声色にあいつは気不味くなり逃げるように立ち去った。
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