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2人を抱きしめて、しばらくの間、3人で思いっ切り泣いた。

ようやく感情が落ち着きを取り戻したところで、私は話の続きをすることにした。

"さて、仕切り直しだ。契約するなら君たちの名前を決めないとね。"

「えっ?」

"するんだろ?契約?ん、やめる?"

「します!します!」

"さてと、名前って自分たちで決めるのは有りなのかな?国を出たんだし、もう国のルールに縛られなくてもいいだろう?"

少年たちはその言葉にハッとし、

「そっか、そっか、そうだよな」
「そう考えるとそうだな」

お互いの意思を確認し合うと顔を見合わせ、軽くウンと頷き、私の方を向いた。

「僕たちの名は貴方に決めてほしいです」
「お願いします。僕たちは今日貴方にあって新たな生をもらいました」

"私が付けてもいいけど、加護をもらえないんじゃない?そこの仕組みは?"

「いえ、貴方、貴方様こそが加護を与える御方ですのて問題ありません」

"えっ?そうなの?…えっ?"

なんかさらっと知らない事実を言われたような…
聞かなかったことにしていいかな…

"う、うん、わかった。ちなみにどんな名前がいいか希望ある?"

「「うーん…」わからない…」

少年たちがカチコチなって顔も強張っていたからちょっと魔女みたいな仕草をして冗談を口にした。

"いいの?この世界の名前の標準がわからないからヘンテコなのつけちゃうかもよ?仁左衛門、権左衛門、プゲラッチョ、ホゲラッチョ、とか"

「なにそれっ、ははっ。ヘンテコすぎるのは困るけど、あの国の一般的な名前じゃなくて平気だよ」
「だって、もうあの国には戻らないんだから」

少年たちはふはっと思わず笑ってしまったことで緊張の糸が切れたみたいで砕けた口調になった。


あっ…そうだった。
さっき自分で言ったのに忘れるなんて…年かな?いや、死人だよ!なんつって…

心の中で一人ツッコミをし、咳払いを一つして少年たちをまじまじと見つめた。
双子っぽいけど、若干顔付きが違う。性格が違うからかな?
元おじいさんのほうは穏和な性格なんだろう少しタレ目で俯き気味だ。

一方、ちょいちょい噛みついてきた方は勝気で周囲を睨みつけることが多かったのか少し吊り目気味だ。

"君たちは兄弟?"

2人は頷いた。
うん、うん。よし!
元おじいさんの少年の肩に手を乗せ

"命 テオーリオ・グヴィド ことわりを護りし者"

次にもう一方の少年の肩に手を移し

"命 ラジィト・グヴィド 権利を護りし者"

手を2人の頭に掲げ

"ウヌーア コントラクティ愛し子に加護を与える "

名を付けると2人の身体を光が包み込み、やがて収束した。2人は掌を眺めながら呟いた。

「テオーリオ・グヴィド…」
「ラジィト・グヴィド…」

"名前どうかな?それっぽくなっていると思うけど…気に入らなかったらごめんネ。ん………あっ…あぁ、残念だけどやり直しは出来ないみたい。気に入らなかったら通り名で呼べばいいかな"

少年たち改め、テオーリオとラジィトは顔を上げ

「ありがとうございます!ありがとうございます!名と加護に恥じぬように」
「僕も貴方の為に生きていきます」

よかった。気に入ってもらえたようだ。
ちょっと…重い、重すぎる反応だけど、良しとしよう。


なんにせよ、やっと命名と契約が終わった。

もう日が沈む直前だ。気が付けば気球はクレバスの上を抜けようとしていた。

なんやかんやでこの子達があの絶望的なクレバスを見ることなく済んで良かったと心の中で呟いた。

気球の外には新たな幻想的な風景が広がっていた。
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