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気球は穏やかにでも確実に大陸を背にし、滝方面に進んでいた。
しばらく風に乗って進んでいたが、日が傾き始めた。
私は頃合いを見て話し掛けた。
"そろそろ落ち着いた?"
少年たちはずっと外の世界に見惚れていたが、声に気付き、私に向き合った。
「はい。これは貴方が?」
"そうだよ。ところで、この先何があるか知ってる?"
私は滝の方を指差し、聞いてみた。
「いえ…」
「神殿の書架には森の先についての記述はありませんでした」
"やっぱりそうか。未知の世界か。さて、どうしたもんかな"
今後を思案していると少年たちがモジモジしながら話しかけてきた。
「あ、あの!」
"ん?"
「ぼ、僕たちと契約にしてもらえませんか?」
"契約??"
「えっと…」
「このままじゃ僕たち生きていけないと思うんです」
"えっ?そうなの?"
「そ、そうです…この先僕たちの…」
「貴方と契約することで生命を守れるようになるんです」
"なんで??"
「え…」
「えっとですね…」
少年たちが言い淀んだ。
契約…?
乗りかかった船だ、やるしかないのかもしれない。
だけど、契約をする際はしっかりと契約の内容を理解してからじゃないと駄目だと、生前、幼少期から死ぬ間際までありとあらゆる場所で詐欺関連の注意喚起を耳にタコができるほど聞いていて身に染み込んでいる。
"わかった。そうだなぁ、じゃぁまず、契約の内容について教えて?契約がどういうものかわからないと出来ないし"
左の少年が答えてくれた。
簡潔に言うと、契約とは従属することらしい。一族になるともいうらしい。
生殺与奪の権利を私に譲渡する代わりに膨大な恩恵を貰えるらしい。何が貰えるかは人それぞれ。契約は解除不可。私の意には絶対服従。
なるほどね。
私にデメリットはないか…。
でも恩恵とは…?
いや、そもそも私…死んだはずなのに何してんだろ…
ここまでする義理ないよね?そもそも…私は何者?この世界での立ち位置は?そこら辺がまだ謎のままなんだよね。
いってみりゃおばけなのにファミリーってw
ん~……
でもなぁ…
"うーん…………。そもそも契約しないと死んじゃうの?確実に?絶対?"
「…多分としか…」
"多分か…曖昧だね…"
「ごめんなさい…僕が引き継いだ知識にも大陸外のことはわからなくて…」
「で、でも、あなたと契約すればどこでも生きていけるようになれるはずなんです」
"うーん…死なないってことかい?"
「…不死ではないとおもうんですが…」
「強くなるとか丈夫になるとか…」
"あやふや過ぎてなんとも言えない…"
無意識に訝しげな目で2人を見つめていたらしく、彼らは真っ青になり目に涙を限界までためて震えた声でか細く話しだした。
「っ…ごめんなさい…でも…」
「多分僕たちこのまま行ったらすぐ死んじゃうと思う…」
たしかに青白くガリガリで肌もカサカサしてくすんでいる…
「お願い!」
「なんでもします。お願いします」
「お願いです…」「お願いします…」
何度も何度も頭を地面に擦り付け、ボロボロと涙を零し懇願してくる。
ぐっ………………
子供にここまでさせてしまった…。
今見捨てるのと未来を縛るのはどちらが非道なことか…
"はぁ~。わかった。契約するよ。本当にいいんだね?どうなるか私にもわからないよ?"
はっと顔を上げ、顔色を明るくした少年たちは涙を拭い、決意ある顔して頷いた。
「勿論です」「覚悟の上…です」
契約については左の子が神殿の本で読んだという。
契約する方法は簡単だった。
対象者の身体の一部に触れ、名前を呼ぶんだって。
それだけでいいのか。拍子抜けだね。
まずは名前だね。そーいや名前知らないや。
"ねぇ、君たちの名前教えて?"
「…」「…」
はっ?えっ?
名前がない……?
そんなことある?
しばらく風に乗って進んでいたが、日が傾き始めた。
私は頃合いを見て話し掛けた。
"そろそろ落ち着いた?"
少年たちはずっと外の世界に見惚れていたが、声に気付き、私に向き合った。
「はい。これは貴方が?」
"そうだよ。ところで、この先何があるか知ってる?"
私は滝の方を指差し、聞いてみた。
「いえ…」
「神殿の書架には森の先についての記述はありませんでした」
"やっぱりそうか。未知の世界か。さて、どうしたもんかな"
今後を思案していると少年たちがモジモジしながら話しかけてきた。
「あ、あの!」
"ん?"
「ぼ、僕たちと契約にしてもらえませんか?」
"契約??"
「えっと…」
「このままじゃ僕たち生きていけないと思うんです」
"えっ?そうなの?"
「そ、そうです…この先僕たちの…」
「貴方と契約することで生命を守れるようになるんです」
"なんで??"
「え…」
「えっとですね…」
少年たちが言い淀んだ。
契約…?
乗りかかった船だ、やるしかないのかもしれない。
だけど、契約をする際はしっかりと契約の内容を理解してからじゃないと駄目だと、生前、幼少期から死ぬ間際までありとあらゆる場所で詐欺関連の注意喚起を耳にタコができるほど聞いていて身に染み込んでいる。
"わかった。そうだなぁ、じゃぁまず、契約の内容について教えて?契約がどういうものかわからないと出来ないし"
左の少年が答えてくれた。
簡潔に言うと、契約とは従属することらしい。一族になるともいうらしい。
生殺与奪の権利を私に譲渡する代わりに膨大な恩恵を貰えるらしい。何が貰えるかは人それぞれ。契約は解除不可。私の意には絶対服従。
なるほどね。
私にデメリットはないか…。
でも恩恵とは…?
いや、そもそも私…死んだはずなのに何してんだろ…
ここまでする義理ないよね?そもそも…私は何者?この世界での立ち位置は?そこら辺がまだ謎のままなんだよね。
いってみりゃおばけなのにファミリーってw
ん~……
でもなぁ…
"うーん…………。そもそも契約しないと死んじゃうの?確実に?絶対?"
「…多分としか…」
"多分か…曖昧だね…"
「ごめんなさい…僕が引き継いだ知識にも大陸外のことはわからなくて…」
「で、でも、あなたと契約すればどこでも生きていけるようになれるはずなんです」
"うーん…死なないってことかい?"
「…不死ではないとおもうんですが…」
「強くなるとか丈夫になるとか…」
"あやふや過ぎてなんとも言えない…"
無意識に訝しげな目で2人を見つめていたらしく、彼らは真っ青になり目に涙を限界までためて震えた声でか細く話しだした。
「っ…ごめんなさい…でも…」
「多分僕たちこのまま行ったらすぐ死んじゃうと思う…」
たしかに青白くガリガリで肌もカサカサしてくすんでいる…
「お願い!」
「なんでもします。お願いします」
「お願いです…」「お願いします…」
何度も何度も頭を地面に擦り付け、ボロボロと涙を零し懇願してくる。
ぐっ………………
子供にここまでさせてしまった…。
今見捨てるのと未来を縛るのはどちらが非道なことか…
"はぁ~。わかった。契約するよ。本当にいいんだね?どうなるか私にもわからないよ?"
はっと顔を上げ、顔色を明るくした少年たちは涙を拭い、決意ある顔して頷いた。
「勿論です」「覚悟の上…です」
契約については左の子が神殿の本で読んだという。
契約する方法は簡単だった。
対象者の身体の一部に触れ、名前を呼ぶんだって。
それだけでいいのか。拍子抜けだね。
まずは名前だね。そーいや名前知らないや。
"ねぇ、君たちの名前教えて?"
「…」「…」
はっ?えっ?
名前がない……?
そんなことある?
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