死んだ私の死ねない世界でのままならない生活

周乃 太葉

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もやぁっとした何かに包まれ、姿が変わった。

我が家で長年飼っていた猫
キジトラのミックス

まぁ、ちょっとデフォルメ化された姿になったけど…。しかたない、私の想像力が乏しいからなので、
良しとしよう。

"さてと、改めて、初めまして"

「は、初めまして?」

少年たちの顔は戸惑っていたが、怯えは消えていた。

"初めて会う人には初めましてでしょ?"

「そうなの…?」

おや?この世界は違うのかね?まぁいいや

"そう。だから、初めまして。早速だけど、なんでこうなっているのか、洗いざらい話してもらえるかな?"

色々気になっているけど、先ずは状況を把握したい。
少年たちは頷くと、話し始めた。

「御身は召喚の儀にてこの世界にばれました。」

"この世界?"

「はい、この世界は御身がおられた世界とは異なる世界です」

"やっぱり、そうなのか…。喚ばれた理由は?"

「………王命です」

"王とは先ほどいたでっぷりとした男?"

「はい」

"やっぱりね。王は何で喚んだかわかる?"

「………わかり…」
「試すっていってました」

片方が言いづらそうにしていると、横から素早く回答があった。

試す…ヤれねぇって言ってたしね…
王の下衆い考えに辿り着くのは簡単だった。
伊達に長生きしてるわけじゃない…ってこれぐらい若くてもすぐたどり着くか

"はぁ~…なるほどね。ところで君たちの力で召喚儀式できたの?"

「本来なら大神官様が数十人で行うものなのですが、この国には大神官様はお一人しかおられませんでした」

「その大神官様も先日過労が祟り、倒れられそのまま…」

「大神官様が亡くなる直前、僕たちに自身の魔と知を譲渡され…」
「違う!!頼んでない!無理やりだ!コイツは身体を乗っ取られたんだ!」

乗っ取り…?おやまぁ、物騒だね…。

"ほぉ~。何故君たちに?"

元おじいさんの少年が隣の少年を宥め、さらに説明を続けてくれた。

「僕たちは元々スラム街にいました。でもある日神殿に連れてこられました。僕達の適性が高いと神官様たちは言っていました」

"適性?"

「あ…この世界では魔法が使える魔力持ちと呼ばれる特殊な力を持っている人がいます。内容は人それぞれなので、様々な魔法が存在しています。僕はないんですけど、彼が魔力持ちで彼の力は強大です。更に彼と僕の2人でそれぞれ得たモノを共有できるのです」

へぇ~便利だね。
なるほど、元々行う予定の人物が急逝し、代打で彼らに白羽の矢が立ったんだね。

"でも、それだけなら他の人でもいけたんじゃないの?"

「えぇ。僕たちが先代大神官様の知識と力を受け継ぐのに1番適性が高かったらしいです。僕が知識と身体を引き継がせ、僕にない魔力を彼が送り込むということらしいです」

彼らも面倒なことに巻き込まれたのか。

さてと、概要は理解した。

一番肝心な事を聞こうかね。

"なんで私?"

「そもそも異世界召喚は、こちらの世界と異なる世界の殻に亀裂を入れ、異なる世界に根付いている存在モノを無理やり引っ張ってくるのです。

生きている人間の姿形、魂諸共となると大神官様100人程の魔力で出来るかどうかというものなのです。

生きている人間は世界との繋がりが強いですから。
さらに、若いほど姿形、魂に力があります。

僕たちの力では世界から離れた瞬間の力の弱い魂を引っ張ってくることが精一杯でした」

つまり、たまたま元の世界とこちらが繋がって、たまたまあの瞬間に死んだ一番の年寄が私だったと。

なんたる偶然で召喚されたと。奇跡とでも?

いや、いらんし。

宝くじに当たるほうがよっぽどいい

一応確認の為…

"元の世界に戻ることは…?"

「不可能…だと思います。そもそも御身は元の世界では亡くなられておりますゆえに戻られたとしても…」

言いにくいそうに、でもキッパリと言われた。

はぁ、案の定選択肢はないかー。


"私がこの世界でしないといけないことはある?"

「……ありません」

やっぱりねー

「王が……捨て置けと申しておりました」

じゃぁ、召喚よばれ損?

いや、脂ギッシュ王とヤると言われても無理だが。
世界を救うとか、悪と戦うとかそんなんはないのか
そこまで純粋じゃないから…まぁいいが。

"ところで私…死ねる?"

「………」
「御身はこの世界の…」



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