死んだ私の死ねない世界でのままならない生活

周乃 太葉

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元おじいさんの少年と元からいた少年が涙を流しながら喜び合っている。

「戻った…」

「なぁ、おまえ、身体は?平気?」

「あぁ、すごく調子がいいよ。」

「よかった。ちょっと動かしてみて」

元おじいさんの少年は手をぐーぱーぐーぱーしたり、腕をグルグル回して立ったり座ったり身体の動作を確認した。

「うん、大丈夫。問題なさそうだ。それより、お前は?」

「僕は…うっ…」

元からいた少年が胸の辺りを押さえ辛そうな顔をした。

「あっ!」
元おじいさんの少年が元からいた少年を抱えこんだ。


そんな盛り上がる二人を眺めている幽霊…そう、私。

あー…完全に忘れられてるなぁ…
邪魔するもの悪いけど、状況を知りたいんだよなー
意を決して話しかけてみることにした。

あのー…もしもーし?聞こえますかー?

………

もしもーし?

…………

反応がない。だめだ、聞こえないようだ。声は届かない。と…なると、触れてみるか。
さっきも変化があったし、また何か起きるかな?

少年たちに近づき、手を伸ばした。

すると、今度は元からいた少年が光に包まれてしまった。

あちゃー…
またなんかやっちゃった…?ごめんよ少年!

「ねぇ、しっかりして!」

元おじいさんの少年が光に包まれた元からいた少年の肩を揺さぶった。

光が収束し、元からいた少年がパチパチと瞬きをして自分の身体のあちこちを触りだした。

「あ、あれ…?身体が痛くない?えっ?あっ軽い…!?」

「ほ、ほんと?」

「うん、うん、あぁ!どこも辛くない」

元からいた少年が涙をボロボロ流しながら身体を抱きしめ、それを見た元からおじいさんの少年をワンワンと泣き始めた。

あー、いや、あぁ…。

あー…これは、タイミングを逃したね…
ふぅ~

結局少年たちに認知してもらえなかったから進展なし。状況がさっぱりわからん。

話しかけてもダメ、触ってもダメ…

うーん…何かいい方法は…
はぁ、どうしようかねぇ…

と、なすすべないまま、しばらく宙を漂っていた。



「あ、あの、そこにいますよね?」

落ち着きを取り戻した少年たちが恐る恐る話しかけてきた。

うん、いますよ。やっと思い出してくれたか~

「ぼ、僕たちに貴方の声は聞こえないんですけど、僕たちの声は届いていると思います」

うん、うん、届いてるよ。

「あの、それはですね、貴方に実体がないからでして、僕たちが依代をいまから作ります」
「なので、そちらに入っていただけますか?」

いいよ、いいよ、なんでも
うん、まぁ、それしか選択肢なさそうだし

「し、しばらくお待ち下さい」
「すぐ作成します」

少年たちは部屋にあった水晶を持ってきて向いかあって唱え始めた。

xxxx…xxxx………
xxxxxxxx…

尊き存在の器となれ

水晶が眩く光り、私の方に近付き、私の中に吸い込まれた。


ふわふわとした中で存在を取り戻した。
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