死んだ私の死ねない世界でのままならない生活

周乃 太葉

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あぁ…そろそろ終わるわ
ままならないことも多々あったけど、
山あり谷ありハードな人生だったけど、

病院のベッドの上で横で泣いている我が子たちももうおじいさん、おばあさん…
その後ろに孫たち、曾孫たち、そして最近産まれた玄孫。

あぁ、こんなにたくさんの家族に見守られながら逝けるとは…

総じていい人生だったと言えるでしょう。

この人生色々…本当に色々な事があったわ。
波瀾万丈だった。
激動の生涯よ。

振り返れば長い人生
私は幸せだったわ
有難うね。


100歳も越して長く生きたし、
もうそろそろ休んでもいい頃だと思うの。

ふふっ…

貴方達、悲しむことはないのよ。
そろそろゆっくり休みたいって思ったからね。

おじいさん、待ってるかしら?
………いや、あの人は…遊んでそうね。

きっとあの世でも相変わらず仕方のない人だわ。
逝ったらあの人が逝ってからのあの子達の話を延々と聞かせてあげなくっちゃ。

どんな反応するかしら?驚くかしら?悔しがるかしら?ふふっ



あぁ…力がもう入らない…

バイバイ、かわいい我が子たち…

体から力が抜けるのがわかる。

瞼が重くなってきた…





じゃあね…





目を閉じると、感じる光がどんどん細くなり意識が暗い世界に入っていく…


…すぅっと暗闇に落ちていくような感覚…

…どこまでも

…どこまでも







まだ意識が残るその中で、
暗闇の中を細い細い今にも途切れてしまいそうなヒョロヒョロとした糸のような光が漂っている気がした。

なんだか迷子みたいだね…
そう思うと無意識に光に向かって手を伸ばしていた。

そして

私の一部が光に届いた、その瞬間とき
糸が私の存在を絡め取った。

触れたところからぐるぐるぐるぐると、
まるで何かに縋り付くように。

そして、静かに、でも確実に、何処かに手繰り寄せられていく

そんな気がしたところでぷつりと意識が途絶えた。

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