13 / 30
第二章 君の手は握れない
第十三話 君の手は握れない4
しおりを挟む
「店長、タイスケさん、お疲れ様っす~!」
「桂っち、ソーイチロー、やっほー」
ダダが手を振り、桂っちと駿河っちの元へ歩いて行く。
「今日はよろしくお願いします」
「一緒に天王寺でお買い物して、そのあと店長ん家に来ても良いなんて、マジ嬉しいっす!」
「アタシの家に来て良いから、一緒にダダのメガネ買うの手伝ってくれ」と頼んだら、二つ返事でオッケーしてくれた。急な話だったのに、駿河っちも来てくれることになり、本当に助かった。
「それにしても、同じ時間の同じ車両乗ってたんだ」
というダダの一言に残り三人は固まる。
ダダとの間が持つか本当に心配だったアタシは計画を練った。
アタシたちと桂っち・駿河っちは同じ沿線を使う。だから、「十三時六分の電車に乗って途中で各停乗り換えて、アタシたちと同じ電車に乗って。乗ったら何両目に乗ったか連絡すること」と指示していた。
もちろん二人から「なんでそんな面倒なことを?」と首を傾げられた。恥ずかしくて本当のところは隠して、「一秒でも長くダダと会話したいでしょ?」と適当に言うと「それはそうですね」と駿河っちがすんなり納得してくれてなんとか通した。
そして、今さっき桂っちから『五両目に乗りました』とメッセージが来たから、こうして車両を移動して合流したというワケだ。
「いやぁ、そういう偶然たまにありますよね! ね⁉ 店長」
「そうそう。あるある!」
「ふーん。あ、ソーイチロー、オレの好きな感じの服着てる」
「そうですか!」
駿河っちはビッグサイズのシャツに足首の見えるパンツ。確かに、ダダもビッグサイズデザインの服が好きだもんなぁ。今日だって、自分の体形より何倍もデカいTシャツを着ている。
「メガネ買わなきゃだけど、服も見ようかな」
「ぜひ一緒に見ましょう」
さっそく盛り上がる二人を眺めていると、桂っちが足早にアタシの隣にやってきて、
「店長、ホントに良かったんすか?」
と耳打ちしてくる。
「なにが?」
「なにがって、タイスケさんと二人きりじゃなくて、ってことです」
「いや、ダダは別に彼氏じゃないし」
「彼氏じゃなかったらなおさら二人でも問題ないじゃないっすか」
痛いところを突かれる。
「……それはそうだけど」
「あと、だいぶ前に店長が話してくれた人ってタイスケさんのことですよね?」
「へ⁉ そんな話したっけ~?」
ホントは忘れてない。
桂っちと駿河っちが付き合う少し前に、「店長って告白すればよかったって思うことありました?」って訊いてきたことがある。「小説書くヒントに~」なんて言ってたけど、駿河っちのことで何か悩んでた時期だったんだと思う。だから、アタシがその話を終えたあと、「早く告白しときなよ~」って言うと、やたらと慌ててたし。
にしても、アタシだってまさか思い出の中の人間と再会するなんて思わないじゃん。あー、恥ずかしい。忘れてればいいなと思ってたけど、そうはいかなかったかー。
「タイスケさんも二人きりが良かったんじゃ……」
「そんな……こと……ないんじゃない?」
と焦るアタシを見て、桂っちは口に手を当て、ぐふふと不気味に笑いはじめる。
「店長もそんな表情するんすね」
「は? どんな表情よ?」
「ふふふふふ、言いません」
「今日はプライベートだからって調子乗ってんな?」
「アハハ、すいません!」
「桂っち、ソーイチロー、やっほー」
ダダが手を振り、桂っちと駿河っちの元へ歩いて行く。
「今日はよろしくお願いします」
「一緒に天王寺でお買い物して、そのあと店長ん家に来ても良いなんて、マジ嬉しいっす!」
「アタシの家に来て良いから、一緒にダダのメガネ買うの手伝ってくれ」と頼んだら、二つ返事でオッケーしてくれた。急な話だったのに、駿河っちも来てくれることになり、本当に助かった。
「それにしても、同じ時間の同じ車両乗ってたんだ」
というダダの一言に残り三人は固まる。
ダダとの間が持つか本当に心配だったアタシは計画を練った。
アタシたちと桂っち・駿河っちは同じ沿線を使う。だから、「十三時六分の電車に乗って途中で各停乗り換えて、アタシたちと同じ電車に乗って。乗ったら何両目に乗ったか連絡すること」と指示していた。
もちろん二人から「なんでそんな面倒なことを?」と首を傾げられた。恥ずかしくて本当のところは隠して、「一秒でも長くダダと会話したいでしょ?」と適当に言うと「それはそうですね」と駿河っちがすんなり納得してくれてなんとか通した。
そして、今さっき桂っちから『五両目に乗りました』とメッセージが来たから、こうして車両を移動して合流したというワケだ。
「いやぁ、そういう偶然たまにありますよね! ね⁉ 店長」
「そうそう。あるある!」
「ふーん。あ、ソーイチロー、オレの好きな感じの服着てる」
「そうですか!」
駿河っちはビッグサイズのシャツに足首の見えるパンツ。確かに、ダダもビッグサイズデザインの服が好きだもんなぁ。今日だって、自分の体形より何倍もデカいTシャツを着ている。
「メガネ買わなきゃだけど、服も見ようかな」
「ぜひ一緒に見ましょう」
さっそく盛り上がる二人を眺めていると、桂っちが足早にアタシの隣にやってきて、
「店長、ホントに良かったんすか?」
と耳打ちしてくる。
「なにが?」
「なにがって、タイスケさんと二人きりじゃなくて、ってことです」
「いや、ダダは別に彼氏じゃないし」
「彼氏じゃなかったらなおさら二人でも問題ないじゃないっすか」
痛いところを突かれる。
「……それはそうだけど」
「あと、だいぶ前に店長が話してくれた人ってタイスケさんのことですよね?」
「へ⁉ そんな話したっけ~?」
ホントは忘れてない。
桂っちと駿河っちが付き合う少し前に、「店長って告白すればよかったって思うことありました?」って訊いてきたことがある。「小説書くヒントに~」なんて言ってたけど、駿河っちのことで何か悩んでた時期だったんだと思う。だから、アタシがその話を終えたあと、「早く告白しときなよ~」って言うと、やたらと慌ててたし。
にしても、アタシだってまさか思い出の中の人間と再会するなんて思わないじゃん。あー、恥ずかしい。忘れてればいいなと思ってたけど、そうはいかなかったかー。
「タイスケさんも二人きりが良かったんじゃ……」
「そんな……こと……ないんじゃない?」
と焦るアタシを見て、桂っちは口に手を当て、ぐふふと不気味に笑いはじめる。
「店長もそんな表情するんすね」
「は? どんな表情よ?」
「ふふふふふ、言いません」
「今日はプライベートだからって調子乗ってんな?」
「アハハ、すいません!」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!

【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる